「Death Game」ーその他

Death Game

終わり

　ケンジとヒロシ、二人の間にはデスゲームを生き抜いたという特別な絆があった。彼らは、ゲームの恐怖を共有することで、一見すると破壊不可能に思えるほどの強い関係を築いていた。

　デスゲームを終えた後、二人はしばしばカフェで会ったり、映画を観に行ったりと、普通の恋人たちがするようなデートを楽しんでいた。しかし、その平和な日々の裏で、ケンジの心にはある計画が渦巻いていた。

　ある日、ヒロシはケンジの様子がいつもと違うことに気づいた。ケンジは、ヒロシが話しかけても上の空で、心ここにあらずといった様子だった。ヒロシは心配になり、ケンジに何があったのか尋ねたが、ケンジははぐらかすばかりで何も話そうとしなかった。

　そして、その夜、ケンジはついにヒロシに真実を告げる決心をした。

「ヒロシ、実はね、僕、次のデスゲームを企画しているんだ」

　ヒロシはその言葉を聞いて目を丸くした。

「どうして…？ そんなことを…」

　ケンジは静かに言葉を続けた。

「あのゲームが終わった後、僕たちは普通の生活に戻ったけど、正直言って、何か大切なものが欠けているように感じていたんだ。あの緊張感、リスク、それに対するスリルがなければ、僕たちの関係も平凡になってしまうと思って…」

　ヒロシはショックを隠せなかった。

「ケンジ、でも…」

　ケンジは冷静に答えた。

「心配しないで。今度のゲームはもっとコントロールされた環境で、安全を最優先にするから。でも、僕たちが初めて出会ったあの興奮をもう一度味わいたいんだ」

　ヒロシはその場で立ち尽くし、ケンジが次のデスゲームを企画していること、そして彼が自分たちの関係に飽き、新たなスリルを求めていることに深く失望した。ケンジの目には、次なるゲームへの期待が輝いていたが、ヒロシにはその光が冷たく、遠いものに感じられた。

　ケンジはヒロシをじっと見つめた。その目は以前とは違う、計算された冷たさを帯びていた。ヒロシはその視線の中で、自分の運命を悟った。

「ごめん、ヒロシ。でも、これが最善の道だ」

　ケンジの声は静かで、しかし決定的なものがあった。

　暗がりから、ケンジが雇ったと思しき怪しい男たちが現れる。彼らは無言で、しかし確実にヒロシに近づいていった。ヒロシは逃げようとしたが、体は重く、動きは鈍かった。彼の心は恐怖で満たされていたが、同時にケンジへの深い裏切り感にも蝕まれていた。

「これが終わりだね、ヒロシ」

　ケンジは冷えた声で言った。その言葉が、この長い夜の終わりを告げる合図のようだった。

　怪しい男たちはヒロシに襲いかかり、彼の声は夜の闇に消えていった。ケンジは遠くからその様子を見ていたが、顔には感情の波が一切見られなかった。彼にとって、これはただのゲームの終わりであり、新たな興奮への扉を開く鍵に過ぎなかった。

　そして、夜は更けていく。静寂が再びその場を支配した。ケンジは一人、次なるゲームへの準備を始める。ヒロシの記憶は、彼の心の奥深くに封じ込められ、やがて忘れ去られていくのだった。