「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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「忘れられた屋敷の秘密」

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ある曇りがちな秋の日、マサ、レナ、そしてオオトリは、都会の喧騒から離れた古びた屋敷を訪れた。その屋敷は、地元では忘れられた場所として知られ、数々の怪奇現象が噂されていた。

「ここがその屋敷かしら?」マサは不安げに辺りを見渡した。彼の声は、慎重さを滲ませていた。

レナは勝気に首を振り、「大丈夫よ、ただの古い家よ。何も起こらないわ」と断言した。

しかし、オオトリは尊大に笑い、「怖気づくな。これはただの探検だ。何かを発見できるかもしれない」と言い放った。

彼らは屋敷の重い扉を開け、中に踏み入った。埃っぽい空気と、長い間人の手が入っていないことを物語る薄暗さが彼らを迎えた。

不気味な静けさの中、マサは「何か変だわ」と小声でつぶやいた。レナは「ただの気のせいよ」と返したが、オオトリは何かを探し求めるかのように、屋敷の奥へと進んでいった。

彼らが屋敷の奥にある書斎にたどり着くと、一冊の古い日記を発見した。オオトリが日記を手に取り、ページをめくると、屋敷の主が過去に行ったとされる禁断の儀式について記されていた。

「これを見ろ。この屋敷には、忘れ去られた力が眠っているらしい」とオオトリが言った。

しかし、その瞬間、突如として屋敷は異様な雰囲気に包まれた。冷たい風が吹き抜け、奇妙な声が聞こえ始めた。

「ここから出なきゃ!」マサが叫び、三人は屋敷からの脱出を試みた。

脱出の途中、レナは突然姿を消し、マサとオオトリだけが外に出ることができた。彼らは振り返りもせず、屋敷から遠ざかった。

後になって、レナが屋敷の中で何に遭遇したのか、そしてどうなったのかは誰にもわからなかった。レナの失踪は、屋敷にまつわる新たな怪談となった。

マサとオオトリは、その後も何度か屋敷を訪れたが、レナの影も形も見つけることはできなかった。彼らは、忘れられた屋敷が秘める真実を決して知ることはなかった。

そして、屋敷は再び静寂に包まれ、その秘密は永遠に謎のままとなった。
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