「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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「影の訪問者」

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ある夜、マサとレナは深夜までカフェで話をしていた。帰路、二人は不思議な影に気付いた。「あの影、誰だと思う?」とレナが尋ねる。「わからない。誰かが尾行しているのかも」とマサは答えた。影は次第に近づいて来る。「怖い。早く帰ろう」とレナは足早に歩き始めた。

家に着いた二人だったが、不安は引きずり続けた。レナはマサに「みんなで警察に連絡しよう」と提案する。翌朝、二人とオオトリは警察署に影の件で相談に行った。しかし、警察官は「具体的な証拠がない」として一蹴した。「自分たちの感覚過ぎるのでは」と言われ、二人はがっかりして帰路についた。

その晩も影は付いて来た。怖くなったレナはマサの家に泊まる事にした。しかし、影はマサの家にも現れ始めた。「誰かが我々を狙っているのだろうか」。二人は震えきってしまう。そんな中、オオトリから「影の正体を探る」とメッセージが届いた。三人は影の正体を探るべく、夜の街へと向かった。すると・・・



三人は夜の街へ向かった。影はその後を追い続けた。
「あそこの路地裏に入れ」とオオトリが提案する。三人は影に気付かれぬよう路地裏の奥まで進んだ。
「ここで待ち伏せしてみよう」
影は次第に近づいて来た。その姿ははっきりと見えて来た・・・
「あれは・・・人間じゃない!」レナが悲鳴を上げた。
影は人間離れした長い手足を持つ怪物だったのだ。

怪物は三人に迫って来た。逃げ場を失った三人。その時、オオトリがナイフを持ち出した。
「俺が引き付ける! 死なぬがいい」
オオトリはナイフで怪物を挑発しながら後退し始めた。怪物はオオトリに付いて行った。
その隙にマサとレナは路地から抜け出した。二人は警察に急いで電話をかけた。



 警察は直ちに現場に駆けつけた。 

「オオトリさん!」マサとレナが叫んだ。
路地の奥からオオトリの悲鳴が聞こえた。警察官たちが急いで路地裏を探した。
すると、オオトリが倒れていた。怪物は姿を消していた。
「俺にはもう限界だ...あのものは人間じゃ...ない」
オオトリは最期の力を振り絞って言葉を残し、息絶えた。

検視の結果、オオトリの体から異常な物質が検出された。専門家によれば、未知の生物が原因だという。
一方、マサとレナは依然として影に悩まされ続けた。
ある日、二人は影が人工湖へ向かうのを見つけた。そこで驚きの事実が・・・



 人工湖では、驚くべき光景がマサとレナの目の前に広がっていた。

影は人工湖の中央に浮かぶ小島に向かって泳いでいたのだ。その姿は半透明な生き物だった。
小島に上がると、影は光を放ち始めた。身体からは謎のガスが発生し、空中を漂ってゆく。

「これは...異星人なのか!」レナは息を呑んだ。
影は地球に不時着した宇宙生物だと気付いたのである。オオトリを攻撃したのも、生存のために不本意ながら起こした出来事なのだ。

その時、政府の軍隊がヘリコプターで到着した。異星人を捕獲しようと、小島に向けて弾薬を撃ち始めた。
「止めて! 彼らは危険を知らない!」マサが必死に訴えた。しかし、軍隊は聞き入れなかった・・・



「止めろ!」マサの叫びは空しく、軍隊の弾薬は小島を直撃した。異星人は悲鳴とともに姿を消した。

人工湖の水面は静かに波紋だけを立てていた。マサとレナは複雑な思いでその場を後にした。

時は流れ、物語から1年が過ぎた。マサは自然保護団体で活動し、レナは宇宙生物研究所で働き始めた。
ある日、レナから一報が入った。人工湖の水底から異星人の遺骸が発見されたのだ。

政府は異星人の存在を秘密にしようとしたが、マサとレナの努力で真相は世に広められた。人類は宇宙生命体との初接触を果たしたが、その過程で失敗も学んだのだ。
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