「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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『忘れられた館の秘密』

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かつて栄華を誇ったという忘れられた館が、今、ふたたび三人の運命を交錯させる。マサ、レナ、そしてオオトリ。彼らに共通するのは、ただ一つ、この館に隠された秘密を解き明かすことへの強い興味だ。

「ここがその館かしら?」レナが不安げに周囲を見渡す。夜の帳が下り、館はさらに不気味さを増していた。

マサは慎重に答えた。「そうね。でも、内部には気をつけて。何が起こるかわからないわ。」

オオトリは鼻で笑った。「怖がることはない。この館の秘密、僕が明かしてやる。」

館の内部は予想以上に荒廃しており、壁はカビが生え、床は所々が抜けていた。しかし、三人は秘密を求めて奥へと進んでいく。

「ここに何かあるはずだ。」レナが力強く言った。彼女の目は好奇心に輝いていた。

「気をつけて。何か変だわ。」マサが周囲を警戒しながら進んだ。彼の慎重な性格が、今、彼らを守るかもしれない。

オオトリは尊大に笑いながら、先頭を歩いた。「心配するな。ここはもう何もない。ただの廃墟だ。」

しかし、彼らが館の中心部に差し掛かったとき、突然、床が音を立てて崩れ、オオトリは暗闇へと消えていった。「オオトリ!」レナが叫んだが、返事はない。

「大丈夫かしら!?」マサが慌てて辺りを見回した。しかし、オオトリの姿は見えない。

「ここから早く出ないと!」マサがレナの手を引いて、館を出る道を探した。二人は何とか無事に外に出ることができた。

外に出た彼らを待っていたのは、不思議な光景だった。館は彼らが入った時とはまるで違い、美しい光に包まれていた。そして、オオトリの姿も。彼は微笑んでいた。

「どうしたの?」レナが驚いて尋ねる。

オオトリは静かに答えた。「この館は、過去を忘れた者たちを試す場所。僕たちの勇気と絆を試したんだ。」

マサは感慨深げに言った。「だから、私たちは互いに信じ合うことが大切なのね。」

秘密は明かされなかった。しかし、彼らは何かもっと大切なものを得た。それは、互いを信じる心と、どんな困難も乗り越えられる強さだった。

『忘れられた館の秘密』は、そうして幕を閉じた。
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