「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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「夜の図書館」

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図書館は夜も開いているものの、夜は閑静な雰囲気に包まれていた。マサは新しい本を探して夜更けの図書館を訪れた。

「新刊がそろったのかしら?」
マサは司書のレナに声をかけた。「はい、新刊セクションに置いてあるよ」とレナは答えた。

新刊セクションに向かうマサ。すると中年男性のオオトリが新刊を並べ替えている姿が見えた。「邪魔しませんか」とマサが声をかけると、オオトリは「大丈夫だ」と微笑んで答えた。

新刊を見つけたマサだったが、オオトリの姿形が気になって仕方がない。オオトリの奇妙な動きを見つめるうち、マサの目に異変が見え始めた。

「オオトリさん、大丈夫ですか」とマサが声を掛けると、オオトリの姿はぼやけ始めていた。レナに相談するマサ。「オオトリさんなんて知らない」とレナは答え、マサの異変に気付いた。

その夜、マサはオオトリの姿を見る悪夢に苦しめられるのだった。次第にオオトリの姿は明確になり、マサを追い回すようになる。

数日後、マサは再び図書館を訪れる。レナから事件の真相を聞かされた。オオトリと呼ばれる男性は過去に図書館で女性に暴行を加えた男性だという。

夜の図書館は、過去の事件の影が未だに残っているのだ。マサは事件のトラウマから解放される日が来るのか―。
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