「怪奇小説」ー短編集

『むらさき』

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「夜の森でささやく声」

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夜が深まると、世界は別の顔を見せる。特に、この古びた森は、日が沈むとさまざまな物語を紡ぎ出す。今宵もまた、マサ、レナ、そしてオオトリの3人が、その物語の登場人物となる。

マサは、慎重に足を踏み入れた。「ここは気をつけないといけないわね。」

レナは、勝気な声で応えた。「大丈夫よ、マサ。ここで何か見つけ出してやる。」

オオトリは尊大に笑った。「ふん、この森の秘密など、私が一番よく知っている。」

森は静かで、ただ風が木々を通り抜ける音だけが聞こえる。しかし、彼らが深く入っていくにつれ、奇妙なささやき声が聞こえ始めた。

「聞こえる?」マサが小声で言った。

レナは首を横に振った。「何も聞こえないわ。あなたの気のせいよ。」

しかし、オオトリは顔をしかめた。「いや、何かがおかしい。」

声はますますはっきりと聞こえてきた。まるで、彼らに何かを伝えようとしているかのように。

「ここから出たほうがいいかもしれない。」マサが提案したが、レナは頑固に首を振った。

「いや、これは何かの手がかりに違いない。もっと深く探ってみよう。」

しかし、彼らがさらに進むと、突然、彼らの前に霧が立ち込め、視界が遮られた。霧の中から、不気味な笑い声が聞こえてきた。

オオトリは恐怖で声を震わせた。「これは…森が私たちを試している…!」

マサは深呼吸をし、勇気を振り絞った。「心配しないで。私たちなら、何とかなるわ。」

レナは、彼らを前に導いた。「さあ、一緒に行きましょう。この怖がらせてる何者かを見つけ出してやる。」

霧が晴れると、彼らの前に古びた石碑が現れた。石碑には、森を守るための呪文が刻まれていた。

「これだ!」レナが叫んだ。「この呪文を唱えれば、森はまた平和になるわ!」

3人は手を取り合い、呪文を唱え始めた。不思議な光が森を満たし、ささやき声と不気味な笑い声は消えていった。

マサは安堵の息をついた。「やったわね。森を救ったのよ。」

レナは満足げに笑った。「ええ、私たちの勇気が証明されたわ。」

オオトリも笑顔を見せた。「ふふ、私もまだまだ学ぶことがあるようだ。」

夜の森でささやく声は、再び静寂に包まれた。3人は、この冒険を忘れることはないだろう。そして、森はまた新たな物語を待っている。

物語はここで終わり。だが、夜の森の物語は、永遠に続くのである。
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