もう1人のきみへ

コンラン

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もう1人のきみへ

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天井を見上げていた、ずっとだ、この病室にきてから、ずっと見てきた景色。

白になにかまだらな、ぽつぽつした穴が開いている。
よくある天井、もしかして
ぼくがずっと見てたから、穴が開きだしたのかと思うほど見ていた。

 看護師さんと医師の先生がやってきて、僕のほうをじっと見た。
 
 「おかげんいかがですか?痛むところはありますか?検温しますね。」

僕は何も言わずされるがままだった。うっ、頭が痛い、なんだろ?

 「頭が痛いんですか?一応CTはとりましたが異常なしでしたよ。」
 
 「とりあえず頭痛止めを処方しますね。」

 ぼくはなにもいわず無視を決め込んだ、だって話したくないんだ、だれとも。
ぼくが話したい人はもうどこにもいない。

 「坂本さん、また来ますね。お大事に。」

僕は相変わらず無反応で天井ばかり見てた。

 もし君にもう一度会えたらこう言うよ。きっと、

もっとちゃんと話聞いてあげれなくてごめん、こんどこそもっと色々話そうって。

 1年前の今頃、とても暑い夏の日、僕と君は、まあみんなが言うところの、
恋人関係だったんだろう、はっきり断言できないのは、
どっちからも付き合おうとか言ってなかったんだ。

でもずっとそばにいた、会えない日も連絡はお互い取り合っていた、
そしてそういう関係もあった。

 君は20歳、僕も20歳で同学年だった。

出会いは同じ大学の映像研究サークルで出会った、
君は女優志望で、僕は監督志望だった。
 
 君は容姿端麗で優しい子だった、まあ頑固なとこもあったけど。

僕はというと外見はパッとしないし、何が得意ってことがあるわけでもない、
どこにでもいる男だった。
 
 でも君に惹かれてずっと一緒にいるようになった。
最初は君の容姿に惹かれたけど、

 話してみると共通点が多くすぐ仲良くなり、多分恋人関係にもなった。

今になって思うと幸せだったな。

空気みたいにいることが普通だった。

いまはまるで酸欠状態だ、それか水中にいるみたい。

 でも君が、突然心中しようって言いだして、
僕はとめた、いままで二人でいて幸せだったじゃないか、
なのになんでそんなこと言うんだ、
でも君は何か思うことがあったんだろう、理由はおしえてくれなかった。

最後まで.......。

 いやなら私一人で死ぬって言いだしたので、二人で死のうってことになった。

そして崖から身を投げたけど一人生き残った。

「案外飛び降りても生きてるもんだな.....」

僕はぼそっとつぶやいた。

 その時誰かが、病室に近づいてくる足音、扉をトントンとノックする音。
ぼくはもうどうでもよくなっていたので、無視していた。
 
 すると引き戸の扉が少しづつ開いた。
まるでおそるおそる天岩戸を開くかのように。

ふいに信じられないことが起こった、君がいたのだ、僕の病室に。

君は僕を見つけると神妙な面持ちで、こういった。

 「はじめまして、智子の双子の姉で桃子といいます。」

双子の姉がいるなんて聞いたことがなかった。

 「本当に......本当に君じゃないの?」

桃子と名乗った、君の姉は、ほんとに君そっくりだった。

桃子は首を横に振ってこう言った。
 
 「ごめんなさい、わたしは智子から生前に預かっていた手紙を渡しにきたんです。」

 「手紙........か」
それにしても話し方、しぐさ、声のトーンすべて君そっくりだった。

 「これはその手紙です、では私はこれで、ちゃんと療養してくださいね。
智子もあなたが生きていてくれてうれしいと思いますよ。」

「...............」

 桃子が帰ったあと手紙だけが残った。

手紙を開けてみるとたしかに君の字だった。
手紙にはこう書いてあった。



拝啓 和樹様

あなたとは1年ぐらいの付き合いだったけど、とても楽しい日々でした。
毎日が新鮮で、何もかもが輝いて見えてたくらい。

私、実は末期がんでもう助からないって、余命3か月らしい。

心中なんてことして、あなたを巻き込んだことお許しください。

でも死んだ後も、あなたと一緒にいたかったけど。

やっぱりあなたには生きてほしかったから、
ロープは抜け出しやすいよう緩めにしてたの、あなたには助かってほしくて。

ほんとはちゃんと話すべきだったと思ってる、そうすれば.........

自分勝手な私を許して。

そして、こんなわがままな私を愛してくれてありがとう。

先に逝くことをお許しください。

愛してるよ。

                                    智子



 自然と涙がこぼれた。

何時間ぐらい泣いていただろうか。

もっと俺のほうこそ話をちゃんと聞いてやるべきだった、そしたら
最後の瞬間まで一緒にいれたのではないか.........
 そうだ、君に手紙を書こう、あしたレターセットを買って今の気持ちを
ちゃんとしたためて、ラブレターを書こう。

開けた窓から気持ちいい風が吹いて来た。
夜風が僕を包んでくれるようだった。


そして、目を閉じた。



 ある病室で妙齢の女性が、ベットに横になった若い女性と話をしている。

 「なんで和樹君にほんとうは私は生きてますって言ってあげなかったんだい?
わざわざ存在しない双子の姉って嘘ついてまで、会いに行ったのに。」

ベットに横たわった若い女性はこう答えた。

 「だってお母さん....どっちみち、末期がんで死ぬのはほんとのことだし.....
こんな姿は見せたくなかった.........
生きてたとしても、結局また死ぬんだよ......二度もショック与えたくなかったの和樹に」

 「じゃあなんで、手紙渡した後も、こそこそ様子見に行ってるんだい......?」

 「それはだって................。」

俯いたまま何も言えなかった。







拝啓 桃子様


手紙うれしかったよ、愛してるって言葉を聞けて。

末期がんだったんだね、なんで僕に言ってくれなかったんだろう。

君は頑固なとこあるから、弱いとこ見せたくなかったのかな。

もっと話したかったよ、もっと話をちゃんと聞くべきだったと反省している。

今になっては、気持ちを伝えること、この手紙しか方法はないけど、

きっと君に届くって信じてる。

君と一緒に過ごした1年は、ぼくにとっても輝いていました。

心中のこと気にしてるだろうけど、僕はまったく気にしてないよ。

そしてこんな僕を愛してくれて、感謝しかないよ。

ありがとう、ほんとうに。

愛してるよ。

                                                和樹
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