君に伝えたい言葉

マキノトシヒメ

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翔太編

二月

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 他の神社についてはよく知らないが、うちの神社は、地域密着型というだけあって、行事にその時々の時節柄や地域色のようなものが強く反映されて、宗教への絶対的なこだわりとかはない。特に個人的に行なう事については、道義的な問題がなければ、神社と全く関係ないようなことにも寛容である。
 そのうちの一つがバレンタインデーである。
 正式に交際するようになって初めてのバレンタインデーであるわけで、去年までもほぼ義理ではあるが、美鈴からはチョコレートはもらっていたし、義理返しもしていた。
 まあ、付き合い自体は長いから、お互い機微はよく知る関係なので、変化球で攻めてきたとしても、意図は予想できるのだが。

「翔太、はいどうぞ」
 美鈴が渡してきたのは、綺麗にラッピングされた箱であった。
「う…うん。ありがとう」
「なにかしこまっちゃってるの。ずっとあげてたでしょ」
「まあ、そうなんだけど。でも、ラッピングもずっと綺麗なものだし…、他のとはやっぱり違ってるよね」
 今美鈴が持っている手さげ袋にも何個か透明な袋に入っている物があるが、俺に渡してくれた物とは、その包装の仕方もサイズも完全に一線を画している。
「当然でしょ。これでも頑張ったんだからね。ありがたく食べてよね」
「もちろん」
 それでも、神棚に捧げてから…などとは流石にしないが、三時の休憩の時に早速いただく事にした。
 社務所の同僚の事務員は自分より年配の男女それぞれ一人づつだが、彼らもさっき手さげ袋に入っていた包装のものを貰っていた。
 ちょっと優越感に浸りながら、丁寧に箱の包装を解いて箱を開けた。と、いつの間にか後ろにその二人がいて、ニヤニヤ笑っていた。二人とも既婚者で、後輩の立場にある俺の美鈴との関係を応援をしてくれてはいるが、面白がっているのも間違いない。
 まあ、そっちは無視して、目の前のお楽しみをば。
 チョコレートは均等にブロック状に切ってあって、きれいに並べられている。こういう手間のかけ方をしてくれているのも嬉しい限りだ。
 一つつまみ上げて、口に入れると口の中にチョコレートの香りと甘みが広がる。チョコレートは甘みが少なめのもので、俺の好みにぴったりだ。
 だが噛んでいると、チョコレート以外の風味が出てきた。
 …この味は知っている。よく知っている。うん、知っていますとも。この神社にいる人で、知らない人はないだろう。
「あ、食べてくれたのね」
 ちょうど美鈴が来たので、その件を聞いてみることにした。
「うん。おいしかったよ」
「ありがとう」
「ときに美鈴さんや。ちょっとお尋ねしたいことが、あるんですがのう」
「なんですかいのう、翔太さんや」
 こういうノリにすぐ付き合ってくれるところも、好きなところだ。まあ、それは置いといて。
「頂いた、猪口齢糖ちよこれいとうになんぞ入れておりますのう」
「ほほほ。さすがに気付きよりましたかのう」
「皆におなじみのアレでござるか」
「うむ。アレに相違ない」
 後ろにいる二人の笑い声が聞こえた。
 アレの正体に関しては次回三月に詳細を語りましょう。まあ、そんな勿体振るような物でもないのだけれど。
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