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ぷりてぃ?・すふぃんくす7
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この国から隣国に向かうためには、大きく分けて二つのルートがある。
山道ルートと平地ルート。
山道ルートは半日ほどだが、平地ルートは二日ほどかかってしまう。
だが、殆どの人は平地ルートを利用する。何故なら、この山を通るためには、山に住まう魔獣スフィンクスから問われる問題に答えなければならない。答えられなければ、食われてしまうという…。
人間、運が悪い時期というものが実際に存在するようだ。昨今、山道ルートに出没するというスフィンクスの話に妙に心惹かれるものを感じてしまった。
そして、特に隣国に用事があるわけでもないのに、休日に暇を持て余していた俺は、興味本位でその場所に向かってしまった。
その山を通ろうとしたとき
「おいーっす!」
その山を通ろうと…
「おいーっす!」
「お、おいーっす」
「声が小さい! もう一回。お い ー っ す !」
声がした方に目を向けると、出てきたのは、毛皮のレオタード、手足がネコ系で翼を背負った…超マッチョボディで髭剃り跡が青々とした、男…だよな。アゴもすんごい割れてるし。ゴリマッチョどころの騒ぎじゃない。そんな言葉も霞むくらいの筋肉の塊だった。
豊かなバスト…ではなく、サイズ的にはそれを上回る見事な胸筋。腹筋も見事なシックスパック。毛皮を物ともせず凹凸がきれいに浮き出ている。で…股間もキッチリ、もっこり。
そして、何やら背後から現れたのが、蛇だった。そういえば、スフィンクスには尻尾があって、蛇だという話を聞いたような気はするが、その蛇の太さといったら、まあなんとも。
「あーら、結構かわいい坊やじゃないの。お姉さん、ちょっと張り切っちゃおうかな」
声ももう、野太いという表現しかしようのない声だった。ヤバい。これは違う意味で非常に危険だ。もしかしたら、貞操の危機まで…?
「じゃあ行くわよ」
ずん! と一歩近づいただけで、大地が揺れたような気がした。
ずん! ともう一歩近づいてきたと思ったら、もう目の前にいた。なんという歩幅か。
これは逃げるが勝ちだ。スフィンクスとの決まり事などにかまっている場合じゃない。だが、どうしたことか、体が動かない。
「逃がさないわよ。秘技、金縛り」
そんな技も使えるのか。しかし、いかにスフィンクスが魔獣だとはいえ、そんな話は聞いたことがないんだが。
自分の足よりも遥かに太い両腕がぬっと伸ばされて、動けないでいる私の両肩ががっしりと掴まれた。
(お父さん、お母さん。先立つ不幸を許して下さい)
思わず、祈ってしまう。
恐怖が追いつかず、目も伏せることができない。ぐいっと顔が近づいて来るのが見えた。鼻息が「ふんす、ふんす」いってるのまではっきり聞こえる。そして次の瞬間。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何?」
「え…」
「それは何?」
「えーと…。人間」
私がそう答えると、肩をつかんでいた手の力が抜けた。
スフィンクスがずいっと、背を伸ばして仁王立ちになると、その背丈は私の倍はありそうにも思えた。
「よくわかったわね。いいわよ。通りなさい」
気がつけば、体も自由になっている。二、三歩後ずさってから、走って山道を駆け抜けた。
「走ったら危ないわよー」
一応、スフィンクスとしては、まともなのかなあ。なんか、気遣ってくれてはいるようだし。
でも、やっぱり、怖かった、怖かった、怖かった。いろんな意味で怖かった。俺は絶対ここは二度と通らねえ。
山道ルートと平地ルート。
山道ルートは半日ほどだが、平地ルートは二日ほどかかってしまう。
だが、殆どの人は平地ルートを利用する。何故なら、この山を通るためには、山に住まう魔獣スフィンクスから問われる問題に答えなければならない。答えられなければ、食われてしまうという…。
人間、運が悪い時期というものが実際に存在するようだ。昨今、山道ルートに出没するというスフィンクスの話に妙に心惹かれるものを感じてしまった。
そして、特に隣国に用事があるわけでもないのに、休日に暇を持て余していた俺は、興味本位でその場所に向かってしまった。
その山を通ろうとしたとき
「おいーっす!」
その山を通ろうと…
「おいーっす!」
「お、おいーっす」
「声が小さい! もう一回。お い ー っ す !」
声がした方に目を向けると、出てきたのは、毛皮のレオタード、手足がネコ系で翼を背負った…超マッチョボディで髭剃り跡が青々とした、男…だよな。アゴもすんごい割れてるし。ゴリマッチョどころの騒ぎじゃない。そんな言葉も霞むくらいの筋肉の塊だった。
豊かなバスト…ではなく、サイズ的にはそれを上回る見事な胸筋。腹筋も見事なシックスパック。毛皮を物ともせず凹凸がきれいに浮き出ている。で…股間もキッチリ、もっこり。
そして、何やら背後から現れたのが、蛇だった。そういえば、スフィンクスには尻尾があって、蛇だという話を聞いたような気はするが、その蛇の太さといったら、まあなんとも。
「あーら、結構かわいい坊やじゃないの。お姉さん、ちょっと張り切っちゃおうかな」
声ももう、野太いという表現しかしようのない声だった。ヤバい。これは違う意味で非常に危険だ。もしかしたら、貞操の危機まで…?
「じゃあ行くわよ」
ずん! と一歩近づいただけで、大地が揺れたような気がした。
ずん! ともう一歩近づいてきたと思ったら、もう目の前にいた。なんという歩幅か。
これは逃げるが勝ちだ。スフィンクスとの決まり事などにかまっている場合じゃない。だが、どうしたことか、体が動かない。
「逃がさないわよ。秘技、金縛り」
そんな技も使えるのか。しかし、いかにスフィンクスが魔獣だとはいえ、そんな話は聞いたことがないんだが。
自分の足よりも遥かに太い両腕がぬっと伸ばされて、動けないでいる私の両肩ががっしりと掴まれた。
(お父さん、お母さん。先立つ不幸を許して下さい)
思わず、祈ってしまう。
恐怖が追いつかず、目も伏せることができない。ぐいっと顔が近づいて来るのが見えた。鼻息が「ふんす、ふんす」いってるのまではっきり聞こえる。そして次の瞬間。
「朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足。これは何?」
「え…」
「それは何?」
「えーと…。人間」
私がそう答えると、肩をつかんでいた手の力が抜けた。
スフィンクスがずいっと、背を伸ばして仁王立ちになると、その背丈は私の倍はありそうにも思えた。
「よくわかったわね。いいわよ。通りなさい」
気がつけば、体も自由になっている。二、三歩後ずさってから、走って山道を駆け抜けた。
「走ったら危ないわよー」
一応、スフィンクスとしては、まともなのかなあ。なんか、気遣ってくれてはいるようだし。
でも、やっぱり、怖かった、怖かった、怖かった。いろんな意味で怖かった。俺は絶対ここは二度と通らねえ。
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