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4、パーティーの後も

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 時々眠ったり、ルームサービスで食事をとったりしつつ、結局あのあとほぼ丸一日抱き合っていた。

 比呂くんの体液と香りはまるで催淫剤みたいで、良い大人なのに何回もねだってしまった。比呂くんは喜んでくれたけど、思い返すと自分を埋めたくなる。

 正直まだ離れがたかったけど、明日は会社もあるし、そろそろ家に帰らないとマズイ。

 ベッドの下に脱ぎ散らかしていたシャツを拾って、のそのそとボタンをはめる。

「また会えますか?」

 ニットを羽織りながら、比呂くんが僕の方を振り返った。

「時々会って、今日みたいなことしたい、ってこと?」

 セフレとか、そういう感じなのかな。

 『ケーキ』にしても、『フォーク』にしても、普通の人には中々理解されがたい体質だ。それを埋め合える相手が見つかったら、とは思ってた。

 だけど正直、僕みたいな冴えないダメリーマンを選ばなくても、比呂くんならもっと他に良い『フォーク』が見つかるような気もしなくもない。

 比呂くんは、僕のことを少しは気に入ってくれたのかな。

「それもしたい。けど、そういうの込みでも、抜きでも、普通に会いたい」

 服を着終わった比呂くんが歩いてきて、僕の隣に腰かける。

「普通に?」
「うん。ごはん行ったり、遊びに行ったり」
「そういうのがしたいなら、わざわざ僕みたいなオジサンじゃなくても。比呂くんなら、たくさん相手がいるんじゃない?」

 『フォーク』と『ケーキ』としてならまだ分かるけど、普通に会うなら、ますます僕じゃなくてもって思ってしまう。

 いや、僕は嬉しいけど。
 でも、比呂くんみたいな若くてかっこいい子に僕なんかのために時間を使ってもらうのも申し訳ないし。

「今年に入ってから、何回かマッチングパーティーに行ったんですよ」

 「うん」と相づちを打つ。そうしたら、比呂くんが僕との距離を詰めた。

「『フォーク』を食べたい『ケーキ』なんて変だって、みんなに言われました。嬉しいって言ってくれたの、結人さんだけだよ」

 しっかりと目を合わせて笑いかけられ、ぎゅっと手を握られる。

「学校の友達には、こんな話できないし。結人さんだけがありのままの俺を認めてくれたんだ」

 比呂くんの笑顔は、やっぱり可愛い。
 それに、比呂くんでも悩んでたんだって思ったら、放っておけなくなって、愛しさが湧いてくる。

 けど、どうしても気になることが。

「ちょっと待って。学校って……。比呂くん、今何歳?」
「ん? 十八」

 何のためらいもなく、比呂くんはさらりと言ってのける。

「じゅ、じゅうはっ……も、も、もしかして、こ、こうこっ」

 十八……!?
 若いんだろうなとは思ってたけど、二十歳ぐらいだと思ってた。もしかして僕、捕まっちゃう?

「大学生だから、安心して」

 あわてる僕を見て、比呂くんがおかしそうに笑う。

 大学生……。それを聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。

 比呂くんがあと一歳若かったら、連行されるところだったよ。

「結人さんは何歳なの? オジサンって言ってたけど、三十こえてるとか?」
「……二十六」
「なんだ。まだ若いじゃん」

 そう言うけど、八歳も差があるからね。

 八歳も年下の子とセックスしたあげく、何回も抱かれちゃったし。

 ああー……、今さらながらに色々と問題があるような気がしてきた。

 一人で葛藤していたら、比呂くんに後ろから抱き込まれる。

「これからも会ってくれるよね?」

 耳元に口を寄せられ、甘い声を吹き込まれる。

「……うん」

 僕が唯一甘さを感じる誘惑に勝てるわけもなく、頷いてしまう。

 僕たちの関係がこれからどうなるのかは分からないけど。

 僕は、もう、この『ケーキ』には逆らえない。

         完
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