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【後日談】
後日談①出発前夜(前編)
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慧に気持ちを伝えて、やり直すことになった後。離れていた時間を埋めるように何回も抱かれて、身体の奥まで慧を刻みつけられた。
「離れてる間もちゃんと食べて」
「うん、分かった」
裸で布団にくるまったまま、コンビニまで行って色々買ってきてくれた慧に返事をする。袋をテーブルの上に置き、ベッドに戻ってきた慧をちらりと見上げて、軽く布団を持ち上げ中に入れてあげた。
それから、離れていた1ヶ月の間のことを話していたら、もう午後3時。まだ時間があるとはいえ、慧が空港に行くまであと少し。
ベッドの上で手を繋いだまま、ただ時間が過ぎるのを待つ。
「もう少しだね」
「うん」
「離れてる間も元気でいてね」
「花音先輩も」
「忙しかったら、無理して連絡しなくてもいいからね」
「連絡はします。花音先輩の声聞けなかったら、俺が無理」
「可愛い子いっぱいいるのかなぁ」
「さあ。そのために行くわけじゃないから」
「……行かないで、慧」
——あ。色々話しているうちに、勝手に本音が溢れてしまう。後悔しても、一度口から出た言葉を引っ込めることは出来ない。
「ごめ……っ」
こんなこと言う資格なんてないのに。
慧のこと1ヶ月もほったらかしといて、離れるのが寂しいなんて勝手に過ぎる。
自分のあまりの身勝手さに嫌気がさし、じんわりと涙が滲む。そんな私をキスが出来そうなくらいの距離でじっと見つめたあと、慧がゆっくりと口を開く。
「その言葉が聞きたかった」
「え?」
「止めてくれなかったらどうしようかと思いました」
軽く息をついた慧の様子を伺っていると、ポンと頭に大きな手を置かれる。
「俺だって離れたくないです」
「慧……」
「花音先輩と距離置いてた時は投げやりになってて、正直あのまま向こうに行ってたら俺もどうなるのか分からなかったけど」
「うん……、だよね」
「花音先輩と戻れた今は、前向きな気持ちで向こうに行けるから。だから、待っててください。なるべく早く戻ってくるから」
優しく頭を撫でられて、糸が切れたように涙が溢れ出す。
がんばっても時間の流れが変えられるわけじゃない。早く戻ろうと思って戻れるものじゃないと思うけど、それでも慧が何を言いたいのが伝わってきて、胸がいっぱいになる。
ただ嬉しくて、目の前の慧にぎゅーっと抱きつく。
「慧、慧。他の女の子を好きにならないでね」
「ならないよ」
「向こうには可愛い女の子いっぱいいると思うけど、でも」
「他の子に興味ないから。俺には花音先輩だけです」
「ほんと?」
「うん。そっちこそ他に好きな人作ったりしないで」
「しないよ。慧だけだもん」
涙混じりだった私の声は相当聞き辛かったと思うけど、ひとつひとつ拾って答えてくれた慧に愛しさが増す。
私って、本当にバカだよね。
どうしてこんなにも私を愛して大切にしてくれる人の側から離れていこうとしてたんだろ。
少し身体を離して一度見つめ合ったあと、お互いに顔を近づけ、唇を触れ合わせる。
私の涙でほんのりしょっぱかったけど、慧とかわした触れるだけのキスは、すごく幸せな気持ちになった。
「離れてる間もちゃんと食べて」
「うん、分かった」
裸で布団にくるまったまま、コンビニまで行って色々買ってきてくれた慧に返事をする。袋をテーブルの上に置き、ベッドに戻ってきた慧をちらりと見上げて、軽く布団を持ち上げ中に入れてあげた。
それから、離れていた1ヶ月の間のことを話していたら、もう午後3時。まだ時間があるとはいえ、慧が空港に行くまであと少し。
ベッドの上で手を繋いだまま、ただ時間が過ぎるのを待つ。
「もう少しだね」
「うん」
「離れてる間も元気でいてね」
「花音先輩も」
「忙しかったら、無理して連絡しなくてもいいからね」
「連絡はします。花音先輩の声聞けなかったら、俺が無理」
「可愛い子いっぱいいるのかなぁ」
「さあ。そのために行くわけじゃないから」
「……行かないで、慧」
——あ。色々話しているうちに、勝手に本音が溢れてしまう。後悔しても、一度口から出た言葉を引っ込めることは出来ない。
「ごめ……っ」
こんなこと言う資格なんてないのに。
慧のこと1ヶ月もほったらかしといて、離れるのが寂しいなんて勝手に過ぎる。
自分のあまりの身勝手さに嫌気がさし、じんわりと涙が滲む。そんな私をキスが出来そうなくらいの距離でじっと見つめたあと、慧がゆっくりと口を開く。
「その言葉が聞きたかった」
「え?」
「止めてくれなかったらどうしようかと思いました」
軽く息をついた慧の様子を伺っていると、ポンと頭に大きな手を置かれる。
「俺だって離れたくないです」
「慧……」
「花音先輩と距離置いてた時は投げやりになってて、正直あのまま向こうに行ってたら俺もどうなるのか分からなかったけど」
「うん……、だよね」
「花音先輩と戻れた今は、前向きな気持ちで向こうに行けるから。だから、待っててください。なるべく早く戻ってくるから」
優しく頭を撫でられて、糸が切れたように涙が溢れ出す。
がんばっても時間の流れが変えられるわけじゃない。早く戻ろうと思って戻れるものじゃないと思うけど、それでも慧が何を言いたいのが伝わってきて、胸がいっぱいになる。
ただ嬉しくて、目の前の慧にぎゅーっと抱きつく。
「慧、慧。他の女の子を好きにならないでね」
「ならないよ」
「向こうには可愛い女の子いっぱいいると思うけど、でも」
「他の子に興味ないから。俺には花音先輩だけです」
「ほんと?」
「うん。そっちこそ他に好きな人作ったりしないで」
「しないよ。慧だけだもん」
涙混じりだった私の声は相当聞き辛かったと思うけど、ひとつひとつ拾って答えてくれた慧に愛しさが増す。
私って、本当にバカだよね。
どうしてこんなにも私を愛して大切にしてくれる人の側から離れていこうとしてたんだろ。
少し身体を離して一度見つめ合ったあと、お互いに顔を近づけ、唇を触れ合わせる。
私の涙でほんのりしょっぱかったけど、慧とかわした触れるだけのキスは、すごく幸せな気持ちになった。
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