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幼少期
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しおりを挟む最近覚えた日本語を使いたくなるのはわかるが金魚のフンだけはやめてくれ。言われ続けると、トラウマになりそうだ。まぁなんだかありつつ、櫂が金魚のフンに飽きてくれたのか忘れたのかわからないがしばらくして言わなくなったので助かった。
とある日の5時間目。授業は図工。課題は『大切なもの』の絵を描くこと。
「櫂は何を描くんだ?」
「ひみつ~!かいたら見せるね!」
「そっか。じゃあ、完成を楽しみにするか」
櫂は鼻歌を歌いながら楽しそうに何かを描いていた。櫂が何を描くのか気になるけど、自分も描かないといけないので気にしている場合ではない。
う~ん…。大切なものか。
しばらく真っ白な画用紙と睨めっこすることになった。
とりあえず、友達というタイトルで櫂を描くとするか。だって大切な推しだし。そうと決まれば、ササっと鉛筆で下書きをした後、黒色のペンでなぞりクレヨンではなく、絵の具で色付けをし、あっという間に完成した。
…やばい。ちょっと本気を出し過ぎたか?めちゃくちゃ上手くできた。正直、美術館におけるレベルだと思った。俺って絵の才能あったのか。自分の才能が怖いと思った。
隣で『できた!』と櫂の声が聞こえた。
「櫂もできたのか?」
「うん!ゆうせいも?じゃあ、いっしょに見せあいっこしよう!」
「いいよ。じゃあ、せーのでお互いの見せるぞ」
そして一緒に『せーの』と声を揃えて絵を見せ合った。
「ねぇ、ゆうせい…これってもしかしてぼく…?」
「うん。櫂を描いた。似ているだろ?自分でもうまく描けてビビった」
「うれしい…っ!!!」
「櫂…?ちょ、なんで泣いて…大丈夫か?」
ぽろぽろと涙を流す櫂に戸惑った。すると、急に俺に抱き着いてきた。
「ゆうせい大好き!!」
「櫂、お前ほんとどうしたんだ?俺の絵、変だった…?」
「ううん!とってもじょうずだよ!絵がうまくてびっくりしたけど、それ以上にゆうせいがぼくのことをかいているなんて想像できなくて…、うれしさでなみだがでちゃった」
「そうだったのか。櫂は感受性が強いんだな…、ほらもう泣くなって」
手でごしごしと櫂の涙を拭いた。泣いてまで喜んでくれるなんて描いて良かった。
「そうだ、櫂は何を描いたんだ?」
櫂の机の上に置かれた絵を見る。何やらボールを持っている人の絵だった。
「へただけど、じつはぼくもゆうせいをかいたんだ!はずかしっ!」
自分の描いた絵を隠そうとする櫂。
「俺を描いてくれたのか?」
「うん。ドッチボールしている時のゆうせいがかっこよくて…っ。でももっとうまくかくからこの絵のことはわすれて!!!」
もう一度描き直そうと新しい画用紙を持って来ようとする櫂を止めた。
「なんで?俺、この櫂が描いた絵好きだよ」
「ゆうせい…っ」
「しかも櫂が俺を描いてくれるなんてこんな嬉しいことはないよ。ありがとう」
まさか、櫂が俺を描いてくれるなんて思わなかった。お互いがお互いの絵を描くなんてすごいな。
そのあと、担任の先生が俺たちの絵を見に回ってきて『仲良しだね』と言うと、櫂は嬉しそうに『ふふん!ぼくたちはりょうおもいなんだ~!』と自慢してしばらく、俺の描いた絵を眺めていた。
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