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第壱幕
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「まあ、御前はもう家に帰んな。後はおいちゃんが何とかすっから」
男は少年に背を向けると、颯爽と林の奥へと消えて征く。筈で在ったが、何かが着物の裾に引っ掛かり、行動を阻まれた。裾を掴んだのは、小刻みに震える少年の手で在った。
「無理だよ。一人じゃ食べられて了うよ」
格好を付け損ねた男は眉間に皺を寄せると、少年を振り解こうと試みた。併し、背水の覚悟の為か、しっかりと力が入って居る。中々振り解けない。
「分かった、分かった。ほら、此奴を遣ろう。是で大丈夫だろう?」
観念した男は腰から短い方の刀を抜いた。抜いたとは言えど少年相手。無論、鞘毎で在る。
少年の手に脇差が渡る。ずしりと重い其れは刀身二尺近くは在ろう業物で、打刀と見紛う、脇差と言うよりは小太刀と言った方が相応しい得物で在った。漆が重ね塗りされ磨き込まれた艶やかな漆黒の鞘に、手の込んだ鬼の彫物が施された鉄地の鍔。刀身を拝まずとも、相当に銘の在る刀と見受けられる。
「でも、良いの?刀は武士の魂なんでしょう?」
悪意の無い眼差しを向ける少年に、男は少し嫌な顔をすると、深く溜息を吐いた。
「武士は食わねど高楊枝ってな。背に腹は変えられねえ。而も、ほら、物干し竿みてえな長い方が、未だ残ってらあな」
男は少し落ち込だ様子で在ったが、無理に背を反り胸を張ると、天に向かって、からからと高笑いをした。
男は少年に背を向けると、颯爽と林の奥へと消えて征く。筈で在ったが、何かが着物の裾に引っ掛かり、行動を阻まれた。裾を掴んだのは、小刻みに震える少年の手で在った。
「無理だよ。一人じゃ食べられて了うよ」
格好を付け損ねた男は眉間に皺を寄せると、少年を振り解こうと試みた。併し、背水の覚悟の為か、しっかりと力が入って居る。中々振り解けない。
「分かった、分かった。ほら、此奴を遣ろう。是で大丈夫だろう?」
観念した男は腰から短い方の刀を抜いた。抜いたとは言えど少年相手。無論、鞘毎で在る。
少年の手に脇差が渡る。ずしりと重い其れは刀身二尺近くは在ろう業物で、打刀と見紛う、脇差と言うよりは小太刀と言った方が相応しい得物で在った。漆が重ね塗りされ磨き込まれた艶やかな漆黒の鞘に、手の込んだ鬼の彫物が施された鉄地の鍔。刀身を拝まずとも、相当に銘の在る刀と見受けられる。
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「武士は食わねど高楊枝ってな。背に腹は変えられねえ。而も、ほら、物干し竿みてえな長い方が、未だ残ってらあな」
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