【完結】犬系イケメン保育士が、限界子連れお兄さんを養う話

日向汐

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本物の家族

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「蓮、飲まねぇか?」

あの夜から数日。
ビール片手にベランダへ促すお風呂上がりの伊織さん。
金曜の夜恒例になりつつある、俺と伊織さんの酒盛りタイムだ。

それぞれで缶ビールを開け、プシュッと景気いい音をさせた後は、月を見上げる。
いつもなら、たわいもない会話が始まるんだけど、今日はずっと沈黙の時間が流れている。

いつもどんな話してたっけ?
意識すると余計分からなくなって、妙な緊張感を酒で流し込む。

ちらり伊織さんに視線をやると、ゴクリとビールを飲み下す白い喉に目を奪われそうになり、慌ててそらす。

あ、そうだ。

「伊織さん、ちょっと待ってて」
「あ?、ああ」

前に買った伊織さんへのプレゼント。
なかなかタイミングが掴めなくて、ずっと渡せないままでいたそれを取り出して、ベランダに戻る。

「これ、貰ってください。」

小さな箱を、伊織さんの手に持たせる。

「伊織さんに似合いそうだと思って、買っちゃいました。いつも美味しいご飯作ってくれるお礼です。」
「ピアスか?…そういえば長いこと着けてなかったな」

アルコールで少し頬を染めながら、嬉しそうに笑う伊織さんに愛おしさが募る。
ピアスホールは昔から空いてたけど、千冬くんがまだ赤ちゃんだった頃にピアスで怪我をさせてしまって、それからずっと着けてなかったらしい。

久々だな、なんて言いながらその場で着けてくれようとするが、ホールの場所が分からないのか、手こずっている。

「俺が着けてあげます。貸してください」

触れることを許可されて好きな人の体に触れるって、ドキドキする。

少し緊張しながら、そっと柔らかい耳朶に触れると、ビクッと伊織さんの体が揺れた。


あ…伊織さん、耳、弱いんだ。


酔いも手伝い、好きな子に意地悪したい気持ちが俺の中でむくむくと湧いてくる。
耳の縁を、上から下へなぞり、わざと耳元に近付き囁く。

「伊織さん、動くと上手く着けれないよ」
「っ…わ、悪ぃ…」

可愛い。
体が熱くなるのを感じる。

夜の光に照らされた伊織さんの白い肌も、ほんのり赤く染まっている。


…やばいかも。

そう思った時には、ぼうっとする頭をアルコールのせいにして、伊織さんの耳を甘噛みしていた。

「あっ…!」

俺のシャツの胸元を弱く掴んだ手を捕まえて、伊織さんの細い腰を引き寄せた。

「伊織さん、かわいい」
「おい…からかうな…」
「からかってません」

潤んだ目で睨みつける伊織さんをじっと見つめ返す。

「伊織さん、この前の返事は?」
「蓮…」
「イヤならちゃんと断ってくれないと…俺、もうキスしそう」

唇が、触れるか触れないかギリギリの所まで近づくと、恥ずかしそうに目を伏せた伊織さんが、ゆっくりと口を開いた。

「…っ、チビともよく話した。俺も、チビも、お前に救われた。感謝してる。だから、これからも…一緒にいたい。」
「うん」
「でも、それだけじゃなくて……俺も…その…、お前が…その………、好き、っ!」

聞くや否や、唇を奪う。
伊織さんの甘く熱い唇に、頭の中が溶けていく。
薄く開いた伊織さんの唇の間から舌をねじ込み、口内を犯す。

「んっ、はあ、ぁンっ…!」

酸素を求め、口から漏れる声に欲情する。

「伊織さん、そんな可愛い声、他所の人に聞かせないで」

やっと俺のものになった。
大好き。

チュッと音を立てて唇を離してから、抱きかかえ家の中に連れ込む。
ドサリとソファーに降ろし、深く、深く口付けをする。

「伊織さん、伊織さん…」
「んぁッ、ちょっ…ま、」

服の中に手を入れようとしたとこで、バチンと手を叩かれる。

「あだっ!」
「ち、調子に乗るな!」
「ええ~…」

今すっごくいい雰囲気だと思ったのに…。

しょんぼりとする俺から、結局着けられなかったピアスを奪い取ると、伊織さんはそのまま立ち去ろうとする。


…え、もしかしてもう嫌われた?

急いで引き止めようと手を伸ばした瞬間、伊織さんが、小さな声で言い残した。

「そういうのは、……チビが、居ない時にな」
「う、うん!!」


あー…

やばい

俺、耐えられるかな…















俺と伊織さんが無事結ばれてからひと月が過ぎた頃。
伊織さんの再就職先が決まり、俺もまた夜勤のある生活に戻った。
今度の伊織さんの職場は、女性が多く、千冬くんの育児についても理解の得られる職場だそうだ。

「こんばんは。伊織さんのお迎えに来ました」
「いお!かえろ!」
「すぐ上がる、5分だけ待ってくれ」

俺たちの生活で変わったところは、時間が合う時は俺と千冬くんで伊織さんを迎えに行き、3人で一緒に帰るようになったこと。
伊織さんの働き過ぎ防止と、密かに伊織さんの職場の人に「俺のものだ」アピールをするためだ。

だって伊織さんって可愛いし、可愛いし、可愛いから、モテないわけがない。
現に今日だって、俺たちが職場に顔を出すと、他の女性社員さんたちがソワソワしてる。
初めて迎えに来た日から、ずっとこんな反応。初日なんて悲鳴みたいのも聞こえたもん。

やっぱり俺にライバル意識を持ってるんだ。伊織さんを、誰にも触れられないようにしっかり守っておかないとね。


伊織さんが上着を羽織りながら俺たちのところに駆け寄ってくる。
そんな走らなくてもいいのに。かわいい。

「なぁ、お前こんな頻繁に来るつもりなの?」
「もちろん!」
「……目立つから…、あんま来ねぇでほしいんだけど…」

え…。
まさかのお迎え拒否に、俺の頭の中は急激な吹雪。
俺たちを隠すように真正面に立って、チラチラと背後の社員さんたちを見る伊織さん。
そんなダメ?

「でも伊織さんかわいいから…」
「は?なんの話だよ。お前が目立つんだよ」
「伊織さん、とられたくないし」
「……こっちのセリフだけど」
「ん?今なんて?」
「うるせー、とにかく早く帰るぞ」

伊織さんに腕を引っ張られて職場を出る。
やっぱり社員さんたちはソワソワ、コソコソこっちを見ている。

これは伊織さんがなんと言おうと、俺は毎日迎えに来る必要があるな、うん。

千冬くんを真ん中に、3人で手を繋ぎながら帰る。3人で同じ家に帰るって家族みたいですごく幸せ。


帰り道の途中で、俺は思っていることをそのまま口にした。

「俺たち、本物の家族みたいですよね」

伊織さんが不思議そうに俺を見る。
あ、これは「アホなこと言ってんじゃねーよ」って言われるやつだ。
まぁ、どんなに否定されても、ツンツンな伊織さんも可愛いから、痛くも痒くもないけど。


「みたい、じゃなくて家族だろ?」
「ちぃのかぞく!」

まさかのデレの方。
突然の伊織さん可愛さ爆発に動揺した俺は、真顔のまま伊織さんに迫った。

「…伊織さんは白無垢とウェディングドレス、どっちが良いですか?」
「何でそうなるんだよ」

パシッと軽く頭を叩かれる。
叩かれたところは全く痛く無いけど、胸きゅんで死ぬかもしれない。

「伊織さん、」
「何だよ」
「愛してる」
「…うるせぇ」
「いお、お顔真っ赤だー」

にこにこ笑う千冬くんを片手で抱き上げて、伊織さんと手を繋ぐ。

「おい、恥ずかしいからやめろ」
「だーめ、絶対離さない」
「…はぁ」

面倒くさそうにため息をつく伊織さんの横顔を見れば、耳元でシルバーのピアスが光り、くすぐったい気持ちになる。

繋いだ手に、指を絡ませる。



今度は指輪を、買わなきゃね。



end







































千「いお、いお…」
伊「あ?なんだ」
千「ちぃ、欲しいものがある…」
伊「珍しいな、チビがおねだりなんて」
千「…怒らない?」
伊「怒らねぇよ、言ってみろ」
千「お耳かして」
伊「ん」
千「あのね…おとうとがね、欲しいの」
伊「」



……

伊「っていうことがあって」
蓮「つくりましょう」
伊「は?」
蓮「つくりましょう」
伊「お前何言ってんの」
蓮「かわいい千冬くんの初めてのわがままなのに、聞いてあげないんですか!」
伊「いや、それは聞いてやりたいけど」
蓮「せめて努力はしないと!」
伊「お前に相談した俺がバカだった」
蓮「伊織さん…」ぎゅっ
蓮「千冬くんのお迎えまで1時間あるよ…?ね?」
伊「……………おぅ…」






𝐻𝒶𝓅𝓅𝓎 𝑒𝓃𝒹
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感想 1

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みんなの感想(1件)

にむ
2025.11.13 にむ

めっちゃ素敵な作品でした!!伊織さんの過去はめっちゃ驚きましたがそれもふまえての蓮さんの包容力?グイグイ?な感じがもうめっちゃくちゃ良かったです!

2025.11.14 日向汐

素敵な感想ありがとうございます〜!
キャラを敬称で呼んでくださる、にむ様の品の良さよ…!✨
蓮のグイグイな包容力を、良かったって言っていただけて本当に嬉しいです♡
ありがとうございました♡ ˎˊ˗

解除

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