【完結】かわいい美形の後輩が、俺にだけメロい

日向汐

文字の大きさ
1 / 33

泊まっていきませんか

しおりを挟む


「あっつ…!」
「えっ、どうました!?」


手に走った痛みに、反射的に声を漏らす。
ふわりと髪を跳ねさせ飛んできたのは、俺の大学の後輩であり、バイトでは先輩の、雨宮千冬。
緩くパーマがかかった淡いピンク髪に、一度見たら忘れないほど整った顔立ち。
綺麗な平行二重と、光を取り込む栗色の瞳は、優しげで柔らかな印象を与えている。小さな顔には、白くきめ細やかな肌の上に、全ての顔のパーツが、完璧な位置に配置されている。
文句なしの、美形。

千冬は、熱いコーヒーの入った紙のカップを俺から取り上げると、慌てて俺の手を掴み、流水に当てた。


「熱湯ですよ!熱いに決まってるじゃないですか」
「悪ぃ…」


千冬は、俺と同じ大学の1年生。俺の1学年下だ。
学部は違ぇけど、千冬とはちょっとした知り合いだった。
というのも、俺は夏まで、向かいにあったコンビニでバイトをしていて、千冬はそこの常連客だった。
そこで、千冬に話しかけられて、少しずつ言葉を交わすようになっていた。

そして9月の半ば。コンビニが閉店し、次のバイト先をどうすっかなーと、このコーヒーショップで求人情報を見てたところ、千冬が声をかけてくれた。

──良かったら、ここで一緒に働きませんか?……僕が、仕事教えるので…。

それが、つい先週の話。





「痕、残っちゃうかな…」


心配そうに小さな声で呟く千冬。

いや、別にいいけどな、そんくらい。

というか、正直、火傷くらい自分で対処できる。
でも、千冬は結構、…いや、かなり世話焼きなのか、バイト初日の昨日からずっとこんな感じだ。


「千冬、もう大丈夫だから放せ」
「!」

俺の声にパッと手を放すと、一瞬視線を彷徨わせ、それからジトっとした目で俺を見た。


「カップの上の方、持つようにしてください」
「…はい、すみません」
「僕がいない時は、自分で応急処置してくださいよ」
「はい」
「ていうか、怪我しないでください」
「……ぷっ、ありがとな、千冬」
「…何笑ってるんですか」
「あー、すみません、悪かったって」


俺を心配してくれてるのは分かるが、子供が駄々をこねるようにぶつぶつ文句を言うのが、なんだか面白くて笑っちまう。
千冬はまた目を逸らした。


「千冬くん、こっちお願い」
「はーい。先輩は、しっかり冷やしといてくださいよ!」
「はいはい、ありがとうございます、千冬センパイ」


やや不満そうな顔のまま、別のスタッフに呼ばれ仕事に戻っていく千冬。
その後ろ姿に、また小さく吹き出す。

あんな綺麗な顔してるのに、オカン気質だよな、アイツ。









「お疲れさまです、伊織先輩」
「おう。今日もありがとな……うわ、すげぇ雨」
「あー、風もかなり強いですね」


バイト終わり。裏口から外に出るとバケツをひっくり返したような雨が降っていた。
傘をさしていても、数歩歩いただけで、すでに靴やパンツの膝下はびしょびしょだ。


「バス、間に合いそうですか?」
「あー、ていうかこの雨だからな…。もしかしたら…」


9月もそろそろ終わりの今は、台風シーズン真っ只中。
今日も夜は暴風雨になるとニュースで言っていた。
店長の指示で予定より早く退勤となったが、すでに手遅れ感がある。

嫌な予感は当たるもので、スマホを確認した俺は、肩を落とした。


「バス運休になってるわ」
「え!冠水ですか?伊織先輩のアパート、二葉キャンパスの方って言ってましたもんね」
「あっちは坂が多いからな。千冬は一ノ宮キャンパスの近くって言ってたな?地下鉄だろ?そっちはまだ動いてるみてぇだぞ」
「……」


傘の中でもスマホの画面に雨粒が落ちる。
一刻も早く帰った方が良さそうだ。
スマホをポケットにしまい、千冬に手を振った。


「じゃ、俺は歩いて帰るわ。千冬も気をつけて帰れよ」
「え!?ちょ、ちょっと待ってください!」


カバンを掴まれ、ややよろけながら立ち止まる。
あぶねぇ。
振り返ると、千冬が、頬を赤くして俺を見つめていた。


「あの……、」
「?」
「その……」
「なんだよ?」


何を躊躇っているのか知らねぇけど、雨はどんどん強くなってきている。
帰り道の過酷さを想像し、げんなりしていると、とうとう千冬が口を開いた。


「良かったら……、うちに、泊まっていきません、か…?」


え、マジ?
助かる。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】俺の顔が良いのが悪い

香澄京耶
BL
顔が良すぎて祖国を追い出されたルシエル。 人目を避けて学院で研究に没頭する日々だったが、なぜか“王子様”と呼ばれる後輩ラウェルに懐かれて――。 「僕は、あなたそのものに惚れたんです。」 重くて甘い溺愛攻め × こじらせ美形受 ※イラストはAI生成です。

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

拾った異世界の子どもがどタイプ男子に育つなんて聞いてない。

おまめ
BL
召喚に巻き込まれ異世界から来た少年、ハルを成り行きで引き取ることになった男、ソラ。立派に親代わりを務めようとしていたのに、一緒に暮らしていくうちに少年がどタイプ男子になっちゃって困ってます。 ✻✻✻ 2026/01/10 『1.出会い』を分割し、後半部分を『2.引き取ります。』として公開しました。

地味な俺は、メイクしてくるあいつから逃げたい!!

むいあ
BL
___「メイクするなー!帰らせろー!!」___ 俺、七瀬唯斗はお父さんとお母さん、先生の推薦によって風上高校に入ることになった高校一年生だ。 風上高校には普通科もあるが、珍しいことに、芸能科とマネージメント科、そしてスタイリスト科もあった。 俺は絶対目立ちたくないため、もちろん普通科だ。 そして入学式、俺の隣は早川茜というスタイ履修科の生徒だった。 まあ、あまり関わらないだろうと思っていた。 しかし、この学校は科が交わる「交流会」があって、早川茜のモデルに選ばれてしまって!? メイクのことになると少し強引な執着攻め(美形)×トラウマ持ちの逃げたい受け(地味な格好してる美形)

兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?

perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。 その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。 彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。 ……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。 口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。 ――「光希、俺はお前が好きだ。」 次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。

本気になった幼なじみがメロすぎます!

文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。 俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。 いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。 「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」 その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。 「忘れないでよ、今日のこと」 「唯くんは俺の隣しかだめだから」 「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」 俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。 俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。 「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」 そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……! 【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)

弟と妹より劣る僕が自信家を演じてたら、部下にバレた件

ゆきりんご
BL
【重い感情を隠している年下敬語攻め×自己肯定感低い年上受け】 イリアスは職場で「優秀で顔もそこそこ良くて頼りになる上司」を演じているが、本当は自信がない。付き合っていた相手に振られることが続いてさらに自信をなくした。自棄になろうとしていたところを、気になっていた部下に止められて、成り行きで体の関係を持つことになり……?

たとえば、俺が幸せになってもいいのなら

夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語――― 父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。 弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。 助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。

処理中です...