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3 オスカーの環境
しおりを挟むオスカー・ゲイルは、王宮で、王太子の寵姫マリア様の護衛を仰せつかっている。
マリア様は、可愛らしいだけでなく、とても気さくな方で、親しみやすい。私達護衛騎士にも笑顔で挨拶をしてくださる。出身地が遠いため、王宮に留まっておられるようだ。
この国の王太子、リチャード様の寵妃なので、マリア様が王太子妃になることは決定だろう。
父上は、王が変わるとか、王妃になる人は離宮に居るとか、マリア様は一時的に居るだけだと言っていたが、それは王太子が王になるということだし、王になったリチャード様の気持ちひとつでマリア様が王妃になることになるんじゃないだろうか。
だって、マリア様は本当に可愛らしい。
リチャード様が部屋に来ると、オスカー達は外に出されて、扉の前を護衛したり、王宮内の巡回をさせられる。ほぼ毎日外に出されるということは、それだけマリア様が王太子に愛されているということだ。
この方の可愛らしさは、私達には大変微笑ましいことなのだが、高位貴族の面々には、庶民臭いと不評のようで、我々伯爵令息のような、王宮内では底辺の爵位の者が護衛についている。
今日もマリア様は可愛い。
——それに比べてボクの婚約者のリリアは…
ため息が出てしまう。
いつも質素なドレスに髪はひっつめている。元は悪くないのだから、マリア様のように、ふんわりな装いをしてみたらとアドバイスをしたら、仕事中は無理だからプライベートでは善処します。と固い返事が返ってきた。親しみやすさのしの字もない。
伯爵家の三男にすぎないぼくは、父上の決めた通りに生きるしか道はない。
運良くマリア様の護衛に引き立てられたので、辛うじて騎士の称号を得られものの、騎士にも階級があるため、最下級の騎士の給料など、たかがしれている。これでは、自分の世話をしてくれる人を雇うことはできない。
「もう少し可愛げがあればな。」
ひとりごちてマリア様の部屋の前に立つ。
リリアはボクを気に入っているようで、定例の茶会には必ず私よりも先に来ているし、王宮にも、用もなく登城してくる。
王宮で勤めていると聞いたが、この王宮には、現在、王妃は居ない。何処かの領地で療養中らしい。従って、陛下とリチャード殿下と、マリア様のお三方しか住んでいない。それから政務の部署。あそこには男性しか居ないので、もしも居るとするなら、このお三方の誰かに仕えているはずなのに、見たことがない。
おおかた見栄を張って、財務管理部の義父様の所に参上して、それを勤めと言っているに違いない。
そんな言い訳をして、一目でもボクに会いに来ることには、可愛いと思わなくもないが、あの装いでは同僚に紹介もできない。なので、見かけると早々に帰る事を促すだけだ。
本当に。裕福な侯爵令嬢なのだから、もう少し身なりを構えば、嘘をやめて素直にボクにもっと会いたいと言えば、ボクだって喜んで会ってやるのに。
——まあ、仕方ないか。
世話をしてくれる人が居なくては生活ができない。父上も、母上に着替えなどを世話させている。リリアとの婚約は父上が決めたことだから絶対だ。
——しっかりと教育してあげなくてはな。
リリアはオスカーの世話をする妻として、夫になるボクが教育しなくてはならない。
——過ちを正してやるのも、婚約者の仕事だからな。
どうせなら、マリア様のように、少しでも可愛らしい女性になるように教えてあげよう。
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