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しおりを挟む「それでどうなの?」
ウキウキという効果音が聞こえて来そうな程に、楽しそうなおふたり。
まあ座りなさいよと、ソファの対面に座らされている。
「どうって言われても……じゃあ、質問してくれたら、それに答える感じでいかがです?」
「いいわ。じゃあ…彼の名前は?」
「オスカー・ゲイル、伯爵家の三男です。婿候補として交流中です。」
「お婿さんなのね。年齢は?仲はいいの?優しくしてくれる?リリアは彼に恋しているの?」
「一度の質問が多いですよ……」
「ひとつずつしか質問してはいけないなんて約束はしていないわ」
「そうですね…まず、私のひとつ上ですから、今年21歳です。彼に特別な感情は持っておりません。というか、むしろ嫌いです。なるべく会いたくありません。お役目で王宮へ向かった時にうっかり出会してしまうともう絶望感に襲われます。彼は顔を合わせれば、お小言を言うだけですので。わたしはいつも怒られているだけなのです。」
「怒られる?注意やアドバイスではなくて?」
「ええ。怒られる。です。その……わたしが王宮に勤めていることを信じていないのです。」
「どういうこと?」
「オスカーはマリア様の護衛騎士として取り立てられてから王宮に勤めております。わたしは時間の殆どをこの離宮で過ごしておりますので、姿を見ないことを不審に思っているようです。ネチネチネチネチ、嘘を吐くなと言われて心折れそうです。」
「まあ……おバカさんなのね。」
「ゲイルド伯爵も、彼に話すと余計な混乱を招くと、難しいことを話さない方向のようです。それで、下手に離宮の事情を話すこともできず、いつも、ただ怒られるのです。」
「では、プレ婚約期は、」
「確実に破綻します。まあ期間は政変予定に合わせて、あと3ヶ月ほどで終わりますし、それまでの我慢だと思っておりますが。そもそもが、マリア様の護衛騎士の条件が、既婚者、または婚姻の予定のあるもの、でしたので。婿を探している我が家に申し込みがあり、それを引き受けたのです。もしかしたらウマが合うかもしれないと。」
「合わなかったのね。」
「合いませんね。」
「では、兄弟の方に婚約者のスライドを?」
「それは……どうなのでしょうか。マリナル侯爵の父は、この国の現状を理解しておりますし、ゲイル伯爵もまた同様です。家の後継に関することなどは、政変が成った後に成り行きを見て、というのが、元々のお考えでしたので、後のことをどう考えているのかはわかりません。とにかく、オスカーと続けることだけは有り得ません。父上が強行するなら家出する所存です。」
「そんなに嫌なのねえ。国のことがなければすぐにでも離れられたのかしら。皆に迷惑をかけるわね。」
「ああ、いいえ。エリザベス様が来てくださったおかげで、この国は救われるのです。この国の貴族が協力するのは当然です。」
「そう言って貰えるとありがたいのだけれど。できるだけ影響の少ないようにと考えていたのに、決まっていたことを変更させたり、安寧を壊してしまうことには申し訳なく思うわ。ロザリアも王太子妃を降りることになってしまったし。」
そこまで黙って聞いていたロザリア様が口を挟む。
「むしろ降りられて清々しております。おバカさん達の脳内の花畑が満開なことが浮き彫りになり、それぞれ、自ら考えることを放棄している者から、花吹雪を撒き散らす結果になっただけですわ。」
「ロザリアは相変わらず辛辣ね。」
「この国に怒っておりますもの。」
「そこはリチャード様に、ではないのね。」
「はじめは憎くもありました。でも彼は……彼も、被害者であると、思うようになったので。とはいえ、掬い上げたりは致しませんが。」
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