侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

文字の大きさ
39 / 68

37 エリザベスとガールズトーク

しおりを挟む

 通話が繋がるといきなり、
 「リリア?どうしたの?何かあったの?」
 というエリザベスの声が聞こえた。

 「すみません。ちょっと忘れてしまっていて。以後気をつけます。」
 リリアが反省したことを伝える。

 「何もないなら良いのよ。連絡が来ないから心配でこっちからしちゃったわ。——それで、体は回復した?オスカーとは切れたんでしょう?サイラーとのお付き合いはどうなの?」

 「……一度に質問が多いですよ。」
 いつかもこんな会話をしたな、と、苦笑しながらも、エリザベスの明るさに救われる。

 「そうですね。お父様とゲイル伯爵には婚約の話を白紙にすることに同意していただけました。サイラー様とは交流をしています。体はもうすっかり回復していて、今日はサイラー様と、その……。」

 「デート?デートしたの?」
 「ええ、はい。まあ……そうです。」

 「うふふ。それでそれで?サイラーとはどうなってるの?」
 「……実は知っていたりしませんか?」
 「サイラーから聞いた分はね。リリアからも聞きたいのよ。」
 ふふっとエリザベスの声が、通信機の向こうから聞こえる。

 それはそうよね。サイラー様は今、エリザベス様の側で仕えているのだもの。根掘り葉掘り、可能な限り奥深くまで掘り尽くしされているわ。これじゃあ、隠しても無駄ね。

 「今日、告白のようなものをされました。」
 「きゃあー!やったわねサイラー。時期を見るとか言って行動しないから焦ったかったのよ。それでそれで?何て答えたの?」
 
 「まだ何も。」
 「どうして?」
 「うーん……。驚いて、言葉が出なかったというか、予想外だったというか。」
 「予想外って?良いじゃない。もう全部、話してしまいなさいよ。友達は恋バナをするものよ。ほらほら。」
 「ああもう!わかりました。話しますから、ちょっと待ってください。」
 
 そして、最初から、婿入りという下心があると言われたこと、彼と過ごす時間は楽しいこと、彼を好ましいと思っていること、でも、先に下心があると言われたのもあり、彼の言葉に疑惑を持ってしまうことを話した。


 「なるほどねえ。」
 エリザベスのしたり顔が見えるようだ。

 「でも、それは、そういうことが気になる程度には、サイラーを気にしていると言うことではないの?」
 
 「そう……かも、しれません。」
 「なら問題は、リリアがどうしたいか、ということだけね。」

 「とうしたいか。ですか?」
 「そうよ。サイラーに下心があろうとなかろうと、彼の気持ちよりもリリアが彼と、どうなりたいかが大事よ。」

 「彼の気持ちはどうでも良い、ということですか?」
 「ちょっと違うわ。彼は好きだと言ってくれたけど、下心があるなら嫌って気持ちはわかるのよ。でも、あるかどうかは外からはわからないじゃない?人の心の中は見えないのだもの。それを疑い出したら、一生疑い続けて辛いのはリリアだわ。でも、それが嫌だからって彼を手放して、そして彼が誰かと結ばれるのを見る自信はある?」

 言われて考えてみた。
 彼がリリア以外の女の人とデートをしていたら。
 ズキッと胸に錘がぶら下がったような感覚を覚える。
 ——嫌だわ。
 
 「嫌かも、しれません。」
 「なら、捕まえておけば良いのよ。申し出は受けているんだもの。リリアの気持ちに正直になって良いと思うわ。好きか嫌いかという気持ちは自分ではどうしようもないことだけど、それ以外は選択できるわ。例えば、彼と一緒に居たいか居たくないか。どう?」
 
 「居たい、と思います。」
 「次は信じたいか信じたくないか。」

 「信じたいです。」
 「次は、そうね。信じるか信じないか。」
 
 ああ、そういうことか。と、リリアは思った。
 「信じます。と、私が決めればそれで良いんですね。」

 そういうことよ。と、通信機の向こうでエリザベスは笑ったようだった。
 
 「そうやって、ひとつずつ選択していくの。」
 「わかった気がします。エリザベス様、ありがとうございます。」

 「また、次の通信を楽しみにしているわ。」
 と、エリザベスが言うのを合図に、通信を終了した。

 (エリザベス様のおかげで、悩む必要はないのだと気付いて、ずいぶん心が軽くなった気がする。次にサイラー様と会った時には、会えて嬉しいことを伝えてみよう。)

 「あ、いつから出勤するかの相談をするのを忘れていたわ。」

 最初の約束の1ヶ月がそろそろ経とうとしている。

 まあいいか。予定では、増員する侍女の選定も始めているはずだ。人手は足りているのだろう。と、思うと、少し寂しく思った。


 そして次の日。
 ——愛しいリリア。しばらく会いに行けなくなりました。来週の休日には必ず会いに行きます。私とのことを前向きに考えておいてくださいね。——

 という手紙が届いた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。 彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う! 「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」 「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」 貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。 それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム! そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。 ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。 婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。 そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!? 「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」 復讐も愛憎劇も不要! ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!? 優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!

大嫌いな従兄と結婚するぐらいなら…

みみぢあん
恋愛
子供の頃、両親を亡くしたベレニスは伯父のロンヴィル侯爵に引き取られた。 隣国の宣戦布告で戦争が始まり、伯父の頼みでベレニスは病弱な従妹のかわりに、側妃候補とは名ばかりの人質として、後宮へ入ることになった。 戦争が終わりベレニスが人質生活から解放されたら、伯父は後継者の従兄ジャコブと結婚させると約束する。 だがベレニスはジャコブが大嫌いなうえ、密かに思いを寄せる騎士フェルナンがいた。   

処理中です...