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37 エリザベスとガールズトーク
しおりを挟む通話が繋がるといきなり、
「リリア?どうしたの?何かあったの?」
というエリザベスの声が聞こえた。
「すみません。ちょっと忘れてしまっていて。以後気をつけます。」
リリアが反省したことを伝える。
「何もないなら良いのよ。連絡が来ないから心配でこっちからしちゃったわ。——それで、体は回復した?オスカーとは切れたんでしょう?サイラーとのお付き合いはどうなの?」
「……一度に質問が多いですよ。」
いつかもこんな会話をしたな、と、苦笑しながらも、エリザベスの明るさに救われる。
「そうですね。お父様とゲイル伯爵には婚約の話を白紙にすることに同意していただけました。サイラー様とは交流をしています。体はもうすっかり回復していて、今日はサイラー様と、その……。」
「デート?デートしたの?」
「ええ、はい。まあ……そうです。」
「うふふ。それでそれで?サイラーとはどうなってるの?」
「……実は知っていたりしませんか?」
「サイラーから聞いた分はね。リリアからも聞きたいのよ。」
ふふっとエリザベスの声が、通信機の向こうから聞こえる。
それはそうよね。サイラー様は今、エリザベス様の側で仕えているのだもの。根掘り葉掘り、可能な限り奥深くまで掘り尽くしされているわ。これじゃあ、隠しても無駄ね。
「今日、告白のようなものをされました。」
「きゃあー!やったわねサイラー。時期を見るとか言って行動しないから焦ったかったのよ。それでそれで?何て答えたの?」
「まだ何も。」
「どうして?」
「うーん……。驚いて、言葉が出なかったというか、予想外だったというか。」
「予想外って?良いじゃない。もう全部、話してしまいなさいよ。友達は恋バナをするものよ。ほらほら。」
「ああもう!わかりました。話しますから、ちょっと待ってください。」
そして、最初から、婿入りという下心があると言われたこと、彼と過ごす時間は楽しいこと、彼を好ましいと思っていること、でも、先に下心があると言われたのもあり、彼の言葉に疑惑を持ってしまうことを話した。
「なるほどねえ。」
エリザベスのしたり顔が見えるようだ。
「でも、それは、そういうことが気になる程度には、サイラーを気にしていると言うことではないの?」
「そう……かも、しれません。」
「なら問題は、リリアがどうしたいか、ということだけね。」
「とうしたいか。ですか?」
「そうよ。サイラーに下心があろうとなかろうと、彼の気持ちよりもリリアが彼と、どうなりたいかが大事よ。」
「彼の気持ちはどうでも良い、ということですか?」
「ちょっと違うわ。彼は好きだと言ってくれたけど、下心があるなら嫌って気持ちはわかるのよ。でも、あるかどうかは外からはわからないじゃない?人の心の中は見えないのだもの。それを疑い出したら、一生疑い続けて辛いのはリリアだわ。でも、それが嫌だからって彼を手放して、そして彼が誰かと結ばれるのを見る自信はある?」
言われて考えてみた。
彼がリリア以外の女の人とデートをしていたら。
ズキッと胸に錘がぶら下がったような感覚を覚える。
——嫌だわ。
「嫌かも、しれません。」
「なら、捕まえておけば良いのよ。申し出は受けているんだもの。リリアの気持ちに正直になって良いと思うわ。好きか嫌いかという気持ちは自分ではどうしようもないことだけど、それ以外は選択できるわ。例えば、彼と一緒に居たいか居たくないか。どう?」
「居たい、と思います。」
「次は信じたいか信じたくないか。」
「信じたいです。」
「次は、そうね。信じるか信じないか。」
ああ、そういうことか。と、リリアは思った。
「信じます。と、私が決めればそれで良いんですね。」
そういうことよ。と、通信機の向こうでエリザベスは笑ったようだった。
「そうやって、ひとつずつ選択していくの。」
「わかった気がします。エリザベス様、ありがとうございます。」
「また、次の通信を楽しみにしているわ。」
と、エリザベスが言うのを合図に、通信を終了した。
(エリザベス様のおかげで、悩む必要はないのだと気付いて、ずいぶん心が軽くなった気がする。次にサイラー様と会った時には、会えて嬉しいことを伝えてみよう。)
「あ、いつから出勤するかの相談をするのを忘れていたわ。」
最初の約束の1ヶ月がそろそろ経とうとしている。
まあいいか。予定では、増員する侍女の選定も始めているはずだ。人手は足りているのだろう。と、思うと、少し寂しく思った。
そして次の日。
——愛しいリリア。しばらく会いに行けなくなりました。来週の休日には必ず会いに行きます。私とのことを前向きに考えておいてくださいね。——
という手紙が届いた。
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