侍女は婚約が内定している俺様属性の男と縁を切りたい。

彩柚月

文字の大きさ
46 / 68

43 公爵令嬢ロザリア様の訪問

しおりを挟む

 毎日来ていたサイラーが来なくなって、それまでどうやって時間を過ごしていたのかしらと思うほどに手持ち無沙汰な数日を過ごしていると、ロザリア様から訪問すると連絡があった。

 「元気そうで良かったわ。お見舞いに来られなくて気になっていたの。」
 そう言って、優雅な所作でティーカップを操るのはロザリア様。

 「とんでもないことでございます。こうして気にしていただけただけで、嬉しいです。」
 「あらまあ、リリアは相変わらず可愛いわね。」
 「ロザリア様こそ、相変わらず美しいですよ。」

 「ちょっとね。エリザベス様とは通信機で話しているでしょう?リリアとの付き合いは私の方が長いのに、何か悔しくなってしまったの。私はリリアを友達だと思っていたのに、手紙のひとつもくれないなんて、リリアは違ったのかしら。」
 「それこそとんでもないことです。そこまで気が回らなくて、申し訳ありませんでした。」

 「謝って欲しいわけではないわよ。それより、2人きりなのだから、そんな話し方されたら、寂しいわ。」
 
  拗ねたような表情かおで、非難してくるロザリア様に、慌てて言い訳をする。この人はいつもこうやって、取り巻く私達に気を遣わせないように配慮しながら可愛がってくれる。

 「そうね。じゃあ崩させてもらうわ。」
 「そうしてちょうだい。」
 
 気を取り直して会話を続ける。
 「王宮での仕事はどうなっているの?」
 「順調よ。リリアが休んでいるから大変になるかと思ったけど、その分サイラー様が頑張ってくれているし、リズエリザベスの新しい侍女も人数が集まりそうだわ。」
 「そう……なのね。」
 もう、自分は要らなくなったと言われた気がして寂しくなったリリアだったが、
 「リリアの場所は残してあるから、いつ戻ってきてくれても良いのだけれど、リズエリザベスと私は、リリアには、違う仕事をお願いしてはどうかと思うのよ。」
 と、ロザリア様が言ったので、首を傾げてしまう。

 「違う仕事?」
 「そう。だって、リリアは役職こそ侍女だけれど、実質補佐のようなものよね。実際、新体制になったらエリザベス様の補佐官になる予定だったし。そしてサイラー様は新王の補佐官になるでしょう?2人は良い雰囲気だと聞いているわ。だとしたら、夫婦で、夫婦の補佐官っていうのは、微妙だと思うのよねぇ。」
 「微妙とは?」

 「だって。王と王妃が夫婦喧嘩をした時、それぞれの補佐官の間も険悪になるのはありすぎる話でしょう?」
 「ああ確かに」

 「お互い、仕えているあるじの味方をしちゃうからなのよね。でも、同じように、夫婦で仕えていても、侍従と侍女は、険悪になったという話は聞かないわ。大きな違いのひとつは政治的な意見の相違が絡むから。政策の思想が戦っちゃうのよねぇ。でも感情の味方をしがちな侍従侍女は、すれ違いを気遣う方向に動くから、かえって仲良くなったりもするのよ。」
 「なるほど。そうかもしれないわ。」

 「でしょう。だからリリアには、レディ・コンパニオンになってはどうかと思うのよ。」
 
 「それって、独身の女性が雇うものではなかったかしら?」
 「その場合が多いってだけで、規定には反してしないわ。貴婦人が個人的に雇う、言うなればだもの。仕事内容も契約で結べば良いだけで、一般的な仕事内容と違っても構わないわ。個人で雇うのだから、リズエリザベスも私も、同時に貴女を雇うことができちゃうの。国政に関わりさえしなければ、国の制約を受けないわ。時々で良いから私に会いに来てくれないかしら。そうすれば隣国に行ってしまう私も寂しくないもの。」
 「あ、最後のが本当の目的ね?」
 「その通り。良い考えだと思わない?お友達を雇うっていうのは気が引けるけど、私もリズも王族になってしまうから、もうなかなか会えなくなるし、理由をつける必要があるから……。私とリズの間を繋いでくれたら3人ずっとお友達でいられると思うの。お給料は、その都度だから、不安定になっちゃうけど……。」

 そう言われて初めて気づいた。

 ——ひとりで他国に嫁ぐことが、不安でないわけがなかったんだわ。

 ロザリア様は、いつも通りに見えたので、わからなかったが、1人で隣国へ行くことを不安に思っていたのかもしれない。ということは、エリザベス様も、本当は不安なのに気丈に振る舞っているのかもしれない。
 
 ——その2人の慰めに少しでも役に立てるのならば、断る理由はないわね。

 「良いわ。家族に相談しなくてはならないけれどら私としては前向きに考えおくね。」

 「嬉しいわ。許可が貰えたら教えてちょうだい。諸々の手続きなんかは任せておいてくれれば良いわ。」

 ロザリアは、ティーカップに口をつけてから、
 「それから、もうひとつ聞きたいことがあるのよ。」
 と、言う。
 
 「サイラー様とはどうなの?」
 
 「うげ……」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたので田舎で猫と暮らします

たくわん
恋愛
社交界の華と謳われた伯爵令嬢セレスティアは、王太子から「完璧すぎて息が詰まる」と婚約破棄を告げられる。傷心のまま逃げるように向かったのは、亡き祖母が遺した田舎の小さな屋敷だった。 荒れ果てた屋敷、慣れない一人暮らし、そして庭に住みついた五匹の野良猫たち。途方に暮れるセレスティアの隣には、無愛想で人嫌いな青年医師・ノアが暮らしていた。 「この猫に構うな。人間嫌いだから」 冷たく突き放すノアだが、捨て猫を保護し、傷ついた動物を治療する彼の本当の姿を知るうちに、セレスティアの心は少しずつ惹かれていく。 猫の世話を通じて近づく二人。やがて明かされるノアの過去と、王都から届く縁談の催促。「完璧な令嬢」を脱ぎ捨てた先に待つ、本当の自分と本当の恋——。

冷酷侯爵と政略結婚したら、実家がざまぁされました

鍛高譚
恋愛
「この結婚は、家のため。ただの政略結婚よ」 そう言い聞かせ、愛のない結婚を受け入れた公爵令嬢リゼット。 しかし、挙式後すぐに父が「婚約破棄しろ」と命じてきた!? だが、夫であるアレクシス・フォン・シュヴァルツ侯爵は冷たく言い放つ。 「彼女を渡すつもりはない」 冷酷無慈悲と噂される侯爵が、なぜかリゼットを溺愛し始める!? 毎日甘やかされ、守られ、気づけば逃げ場なし! さらに、父の不正が明るみに出て、公爵家は失墜―― リゼットを道具として利用しようとした者たちに、ざまぁの鉄槌が下される! 政略結婚から始まる、甘々溺愛ラブストーリー! 「愛なんてないはずなのに……どうしてこんなに大切にされるの?」

差し出された毒杯

しろねこ。
恋愛
深い森の中。 一人のお姫様が王妃より毒杯を授けられる。 「あなたのその表情が見たかった」 毒を飲んだことにより、少女の顔は苦悶に満ちた表情となる。 王妃は少女の美しさが妬ましかった。 そこで命を落としたとされる少女を助けるは一人の王子。 スラリとした体型の美しい王子、ではなく、体格の良い少し脳筋気味な王子。 お供をするは、吊り目で小柄な見た目も中身も猫のように気まぐれな従者。 か○みよ、○がみ…ではないけれど、毒と美しさに翻弄される女性と立ち向かうお姫様なお話。 ハピエン大好き、自己満、ご都合主義な作者による作品です。 同名キャラで複数の作品を書いています。 立場やシチュエーションがちょっと違ったり、サブキャラがメインとなるストーリーをなどを書いています。 ところどころリンクもしています。 ※小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿しています!

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

本物聖女の力は無力でした ――見世物レベルの聖女のおかげで婚約破棄されました――**

鷹 綾
恋愛
魔法が存在しないと信じられていた世界に、 突如として現れた「本物の聖女」。 空中浮遊、瞬間移動、念動力―― 奇跡を披露した平民の少女は、たちまち市民の熱狂を集め、 王太子はその力に目を奪われる。 その結果、 王太子の婚約者だった公爵令嬢アストリアは、 一方的に婚約を破棄されてしまった。 だが、聖女の力は―― ・空中浮遊は、地上三十センチ ・瞬間移動は、秒速一メートル ・念動力は、手で持てる重さまで 派手ではあるが、実用性は乏しい。 聖女の力は、見世物レベル。 少なくとも、誰もがそう判断していた。 それでも人々は喝采し、 権威は少女を縛り、 「聖女」という立場だけが一人歩きしていく。 そんな中、婚約破棄された公爵令嬢アストリアは、 ある違和感に気づき始める。 ――奇跡よりも、奪われているものがあることに。 派手な復讐はない。 怒鳴り返しもしない。 けれど静かに、確実に、 “正しさ”は明らかになっていく。 見世物にされた奇跡と、 尊厳を取り戻す少女たちの物語。 ---

契約結婚の相手が優しすぎて困ります

みみぢあん
恋愛
ペルサル伯爵の婚外子リアンナは、学園に通い淑女の教育を受けているが、帰宅すれば使用人のような生活をおくっていた。 学園の卒業が近くなったある日、リアンナは父親と変わらない年齢の男爵との婚約が決まる。 そんなリアンナにフラッドリー公爵家の後継者アルベールと契約結婚をしないかと持ちかけられた。

婚約破棄?結構ですわ。公爵令嬢は今日も優雅に生きております

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された直後、階段から転げ落ちて前世の記憶が蘇った公爵令嬢レイラ・フォン・アーデルハイド。 彼女の前世は、ブラック企業で心身をすり減らして働いていたOLだった。――けれど、今は違う! 「復讐? 見返す? そんな面倒くさいこと、やってられませんわ」 「婚約破棄? そんなの大したことじゃありません。むしろ、自由になって最高ですわ!」 貴族の婚姻は家同士の結びつき――つまりビジネス。恋愛感情など二の次なのだから、破談になったところで何のダメージもなし。 それよりも、レイラにはやりたいことがたくさんある。ぶどう園の品種改良、ワインの販路拡大、新商品の開発、そして優雅なティータイム! そう、彼女はただ「貴族令嬢としての特権をフル活用して、人生を楽しむ」ことを決めたのだ。 ところが、彼女の自由気ままな行動が、なぜか周囲をざわつかせていく。 婚約破棄した王太子はなぜか複雑な顔をし、貴族たちは彼女の事業に注目し始める。 そして、彼女が手がけた最高級ワインはプレミア化し、ついには王室から直々に取引の申し出が……!? 「はぁ……復讐しないのに、勝手に“ざまぁ”になってしまいましたわ」 復讐も愛憎劇も不要! ただひたすらに自分の幸せを追求するだけの公爵令嬢が、気づけば最強の貴族になっていた!? 優雅で自由気ままな貴族ライフ、ここに開幕!

お金がありすぎて困っておりますの(悪役令嬢ver.) ~悪役令嬢は噂も相場も支配しますわ~

ふわふわ
恋愛
「お金がありすぎて、困っておりますの」 ヴァレンティス侯爵家当主・シグネアは、若くして膨大な資産と権限を手にした“悪役令嬢”。 しかし彼女は、金にも噂にも振り回されない。 ──ならば、支配すればよろしいのですわ。 社交界を飛び交う根拠のない噂。 無能な貴族の見栄と保身。 相場を理解しない者が引き起こす経済混乱。 そして「善意」や「情」に見せかけた、都合のいい救済要求。 シグネアは怒鳴らない。 泣き落としにも応じない。 復讐も、慈善も、選ばない。 彼女がするのはただ一つ。 事実と数字と構造で、価値を測ること。 噂を操り、相場を読まず、裁かず、助けず、 それでもすべてを終わらせる“悪役令嬢”の統治劇。 「助けなかったのではありませんわ」 「助ける必要がなかっただけです」 一撃で終わる教育的指導。 噂も相場も、そして人の価値さえも―― 悪役令嬢は、今日も静かに支配する。

処理中です...