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46 サイラーの告白
しおりを挟む自然公園の花壇の前の、芝生のに設置されたベンチに座り、サイラーが買ってきてくれた、飲み物を受け取る。
「落ち着きましたか?」
「はい。醜態をお見せして……。」
馬車の中でのことが恥ずかしすぎて、汗がダラダラ出てくるのを抑えられない。
「言ったでしょう。いろんなリリアが見たいと。照れるリリアは可愛いのだと知れて嬉しいです。」
「——忘れてくださいっっ!」
ははっと笑うサイラーは、やはり大人の余裕が垣間見える。少し間を置いてから、
「会いたかったです。本当に。」
と、言ってくれた。
「私も、です。」
やっと言えた一言に、心臓が早鐘のように鳴り、また赤面してしまう。
「本当ですか?すごく嬉しい。」
本当に嬉しそうに言うサイラーに、1人で悶々としていたことがバカみたいに思えてきた。この勢いで婚約を前向きに考えていることを言おうとしたら、
「リリアに、話しておきたいことがあります。」
と、言われてタイミングを失ってしまった。
「はい。何でしょうか?」
「オスカーのことです。」
さっきまでの高揚が嘘のように萎んでしまった。
「はい……。」
「ああ、そんな構えないでください。と言っても無理ですよね。でも、話しておかないと、と思って。」
と、続けて、
「私は先週、リリアに恋をしていると言いました。できれば、このまま共に人生を歩きたい、と思っていますが、このままではいけないと思いました。」
「どうしてですか?」
(私もそう思っているのに)と、疑問をぶつける。
「私が、オスカーの兄だからです。」
「あ……。」
「いくら婚約の話がなくなったと言っても、私がオスカーの兄である限り、リリアにはオスカーの身内という恐怖感や嫌悪感を与えるのではないかと思いました。」
確かに、サイラー様と交流を続けるということは、オスカーとの接点はゼロではいられないだろう。そう思うと、底知れぬ嫌な感覚が足元から昇ってくる。
「あんなのでも私の弟です。叶うなら、2人の和解を願いました。もしも、弟が改心して、心からの謝罪をするなら或いは、と。ああ、もちろん強制しようというのではありません。リリアは会いたくないでしょうし、何かのタイミングで会ってしまうことが避けられない以上、弟が反省して改心していることを、私からでも伝えられれば、弟に対する恐怖感を少しでも和らげることができればと思ったんです。」
「そう、ですか。」
「そして、できれば、弟に、私とリリアのことを話して、理解してくれれば、とも思っていました。すみません。名前を聞くのも嫌でしょうが、もう少しだけ聞いてください。」
「……はい。」
「だから、この数日間、弟と話しました。でも、すみません。私も、あの弟が情けなくて。」
と、少し涙交じりの声を出すサイラーに驚いてしまった。
「えっと、話にくいなら、」
「いいえ。聞いてください。全く話が通じないのです。私には弟が何を言っているのかわからない。私はもう、あの弟は居ないものだと思うことにしました。」
「え?」
「リリアと弟を天秤にかけることになってしまって申し訳ありません。でも、私が先週、リリアに言った気持ちは本当なのです。そのリリアに不快な思いはさせたくありません。だから、弟がいる場にはリリアを連れて行きません。リリアのいる場には弟の同席を拒否します。どうしても仕方のない場合も、接触はさせません。私が、弟と、縁を切ります。」
「そんなこと、そこまでしなくても、」
「私からオスカーの名前を聞くだけで、そんな顔をさせてしまうのです。身内である以上、私と居て、ずっとそんな顔をさせるのなら、リリアと離れた方がマシです。何処かで笑っていてくれた方が良い。でも、あなたと離れたくないんです。もちろん、弟の処分は父上の領分ですから、口を出せません。戸籍上の縁を切るのも難しいかもしれません。でも、可能な限り、私は弟と接触しません。」
「だから、どうか。私にオスカーの影を見ないでください。」
すごい迫力で私に向かって話すサイラーに、リリアは、男の人も、泣くことがあるんだなあ、と、どこか上の空で聞いていた。
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