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考えることが増えました
第111話 大切な①
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「俺は、大丈夫だから……やってくれ、シェリー。」
「ですが…」
「大丈夫だ…俺はシェリーを信じる。だからシェリーも俺を信じてくれ。」
「……わかりました。」
そう言われたらやるしかない。
私は患部に麻酔薬をかけ、医療用のナイフで患部の表面を切る。
そして、赤黒く光っている箇所をピンセット状の魔道具で掴み、ゆっくりと引っ張る。すると透明な小さな針が姿を現し始めた。
「……っ!!」
エリオット様が呻き声をあげる。
この針、どうも簡単には抜けないように小さな返しがついているようで、それが体の傷を抉っていく。想像を絶する痛さに違いない。
しかも、この麻酔薬は無いよりはだいぶマシだが、作業部屋に普通に置いておける程度のものなので、そんなに濃度の高いものじゃない。だから、本来このような手術ができる程の効果は期待できない。
あまりに苦しそうなエリオット様の顔を見て、私の手が止まる。
……でも、このまま放置しては死ぬだけだ。助けたければ強引にでも引き抜くしかない。
私は覚悟を決め、残りの部分も慎重に引き抜く。
「……よし」
カランッ……
ようやく針が抜け、私はトレーの上にその針を置く。
そして、用意していたもう1つの薬を患部にかける。すると、赤い色の光が段々弱まっているのを確認できた。これ以上悪化はしないだろう。
「あとは……」
傷口の出血がかなり酷い。このままでは失血死の恐れもある。
即座に魔法で治してしまえればいいのだが、私の低い魔力量ではそれは不可能だ。
とすると私ができるのは……
「あと少し、我慢してください。」
私は、患部の上に魔法陣を展開する。そして…
ジュッ!!
「がっ…!!!」
私が傷口を炎で焼き塞ぐと、エリオット様はそのまま気を失ってしまった。しかし、呼吸は安定している。処置は上手くいったようだ。
ーーーーーーーーー
「シェルシェーレさん!連れてきました!!」
数分後、ジョセフさんともう1人、恐らく治癒魔法が使える人が到着した。
「ありがとうございます。早速ですが、ここの傷の治癒をしていただけますか?」
「はい!」
連れてこられた人は、手際よく傷の治癒を始めた。
「ある程度治ったら、医務室まで運びましょう。」
ーーーーーーーーーーー
「応急処置が適切でしたから、このまま安静にしておけば直に目を覚ますでしょう。その後治療を適切に行えば、呪法具の効果も消せると思います。」
「わかりました、ありがとうございます。」
医務室にいらした治癒士の方は、診断を告げると自身の駐在スペースへと戻っていった。
エリオット様への最低限の応急処置が終わったあと、私たちは何とか医務室までエリオット様を運んできた。捜査課の作業部屋から医務室まではかなり距離があるので、やはりあそこで応急処置をしたのは正解だった。
ちなみに、治癒魔法の使い手の方はたまたま近くを歩いていた研究所の職員で、時々修道院で子どもの健康診断のボランティアをしているらしい。医務室には本業の治癒士の方がいたので、そのことを確認するとその方は仕事に戻っていった。恩人には今度高めのお菓子でも差し入れることにしよう。
「それでは、私は先程シェルシェーレさんが摘出した針の検査に戻りたいと思います。何かあればお呼びください。」
「はい、わかりました。」
ジョセフさんはそのまま医務室を後にした。
「……」
「ですが…」
「大丈夫だ…俺はシェリーを信じる。だからシェリーも俺を信じてくれ。」
「……わかりました。」
そう言われたらやるしかない。
私は患部に麻酔薬をかけ、医療用のナイフで患部の表面を切る。
そして、赤黒く光っている箇所をピンセット状の魔道具で掴み、ゆっくりと引っ張る。すると透明な小さな針が姿を現し始めた。
「……っ!!」
エリオット様が呻き声をあげる。
この針、どうも簡単には抜けないように小さな返しがついているようで、それが体の傷を抉っていく。想像を絶する痛さに違いない。
しかも、この麻酔薬は無いよりはだいぶマシだが、作業部屋に普通に置いておける程度のものなので、そんなに濃度の高いものじゃない。だから、本来このような手術ができる程の効果は期待できない。
あまりに苦しそうなエリオット様の顔を見て、私の手が止まる。
……でも、このまま放置しては死ぬだけだ。助けたければ強引にでも引き抜くしかない。
私は覚悟を決め、残りの部分も慎重に引き抜く。
「……よし」
カランッ……
ようやく針が抜け、私はトレーの上にその針を置く。
そして、用意していたもう1つの薬を患部にかける。すると、赤い色の光が段々弱まっているのを確認できた。これ以上悪化はしないだろう。
「あとは……」
傷口の出血がかなり酷い。このままでは失血死の恐れもある。
即座に魔法で治してしまえればいいのだが、私の低い魔力量ではそれは不可能だ。
とすると私ができるのは……
「あと少し、我慢してください。」
私は、患部の上に魔法陣を展開する。そして…
ジュッ!!
「がっ…!!!」
私が傷口を炎で焼き塞ぐと、エリオット様はそのまま気を失ってしまった。しかし、呼吸は安定している。処置は上手くいったようだ。
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「シェルシェーレさん!連れてきました!!」
数分後、ジョセフさんともう1人、恐らく治癒魔法が使える人が到着した。
「ありがとうございます。早速ですが、ここの傷の治癒をしていただけますか?」
「はい!」
連れてこられた人は、手際よく傷の治癒を始めた。
「ある程度治ったら、医務室まで運びましょう。」
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「応急処置が適切でしたから、このまま安静にしておけば直に目を覚ますでしょう。その後治療を適切に行えば、呪法具の効果も消せると思います。」
「わかりました、ありがとうございます。」
医務室にいらした治癒士の方は、診断を告げると自身の駐在スペースへと戻っていった。
エリオット様への最低限の応急処置が終わったあと、私たちは何とか医務室までエリオット様を運んできた。捜査課の作業部屋から医務室まではかなり距離があるので、やはりあそこで応急処置をしたのは正解だった。
ちなみに、治癒魔法の使い手の方はたまたま近くを歩いていた研究所の職員で、時々修道院で子どもの健康診断のボランティアをしているらしい。医務室には本業の治癒士の方がいたので、そのことを確認するとその方は仕事に戻っていった。恩人には今度高めのお菓子でも差し入れることにしよう。
「それでは、私は先程シェルシェーレさんが摘出した針の検査に戻りたいと思います。何かあればお呼びください。」
「はい、わかりました。」
ジョセフさんはそのまま医務室を後にした。
「……」
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