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第5章
3.爪と牙(2)
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この能力が何なのか、ずっと知りたかった。
なぜこの能力があるのか、どうやって役に立てればいいのか、この能力に何の意味があるのか。
誰もが信じず、否定し、認めないその能力を、真崎だけが信じて必要としてくれた。真崎の中にある得体の知れない暗がりを、猫のイブキの命を奪うようなことにしか繋がらない存在を、一体何なのか見立ててくれと望まれていた。
けれど、本当に望まれていたのは、『それは何か』ではなく『それは意味あるものだ』という見立てだった。
美並はずっと『見て』きた。人の気持ちを、隠された、次々と変化する、容赦ない、幻のようなそれを。けれど、どれほど瞬間であろうと、それはそこに存在し、存在したことで力を放ち動きをもたらす。だからこそ、美並は警戒して確認していた、自分の心の物陰から。嘲笑が人を脅かし、恐怖が人を食い尽くし、憤怒が人を飲み込み、憐憫が人を押し流すのを。
それらに対して『見る』ことしかできない無力な自分を恥じた。人が見て欲しくないのに『見えて』しまう自分に傷つき、『見えて』も何もできない自分を悲しみ続けた。
けれど、真崎と出会って、能力は意味を変えた。
真崎は望む、『見て』欲しいと。傷ついてしまった自分では見つけることもできず探すこともできなくなった、どこかに居たはずの自分、隠され失われてしまった本来の自分を見て欲しいと。
見て欲しい、探して欲しい。
見せて欲しい、教えて欲しい。
どれほど傷つけられ、どれほど切り刻まれても、失われることない姿を。
本来の、美しさを。
美並の能力は、『それ』を見つけるためにある。
そのためには、相手を壊しかねないほど深く『見る』必要があって、脆くて砕かれそうな真崎ではこれ以上は踏み込めなかった。
けれど今、磨かれ研がれた刃は、美並が『見る』ことにも向けられるだろう。真崎を傷つけるような部分への接近は、ちゃんと防がれるだろう。だからこそ、美並は安心して進めるだろう、この先へ。
今まで自分でも恐れて進めなかった、未来へ。
「何をすればいいの…」
見つめる美並の視線に焦れたように、真崎が眉を寄せた。
「僕の何が必要…?」
「京介を下さい」
全部、隅々まで。
「上げる…僕を全部、上げる」
熱に浮かされた声で真崎が誓う。
「…嫌だけど……僕は…美並が危険な目に合うなんて……絶対嫌だけど…」
堪え切れないように唇を合わせ、舌を絡ませてくる。
ああ鋭い、やっぱり。
美並は目を閉じながら微かに笑う。
これから美並のすることは『羽鳥』という人間を知ることが全てだ。恐らくは多くの人を傷つけ、今もなお犯罪に手を染めて怯むこともないのかも知れないけれど、なぜ『羽鳥』が今に至ったのか、それを知っていくことだ。
そうして『羽鳥』を見立てた時、『見えない』糸が浮き上がる。『見えない』企みが晒された時、事件は閉じて終わるだろう。
暴こうとする美並の爪に、真崎は気が付いている。
「…でも、美並がそうやってしか生きられないなら、僕が盾になる」
頬に唇を触れながら囁く。
「剣になり、鎧になり、馬になり……餌になる…」
掠れた声で呟きながら唇が再び重ねられた。
「美並は僕を食べて……お腹一杯…」
「ん…っ」
這い降りた唇が首筋から降りる。膝に寝かされ、ブラウスのボタンを外しながら真崎が唇を滑らせる。体の両側から回った手がブラジャーを引き下ろし、溢れた胸を掬い上げた。頂きに吸い付かれて、刺激にのけぞる。
「あ…」
「ん…っ」
甘い声を上げたのは真崎もだ。仰け反った顔が屈み込んだ腰に擦られ、熱を孕んだ膨らみが布越しに触れた。欲しがっている感触に嬉しくなって囁く。
「このままじゃ…食べ…られませんね…?」
「そう…だね…」
呼吸を乱した真崎の唇が交互に胸を弄び、同時にゆっくりスカートを引き上げる。熱っぽい掌で内側を探ると、腰を撫でながら巧みにストッキングごと下着を引き下ろしていった。
「僕は食べられる…よ」
「っあっ」
柔らかく足を広げられたと思ったら、囁き声とともに濡れたものが這い降りて声を上げる。
「京…介…っ、」
だめ、まだシャワーも。
無言のまま舌先が入り込む、小さな粒を弄びながら。
「っっ」
「これは…僕だけの…果実……」
低い声が這うように響いた。指先で押し開かれ、掬い上げられ含まれる。舐められ撫でて摩られる。抱え込まれた腰を引こうとしてもままならない、ただただ開かれ愛される。
「、、っ」
視界が眩む。息が弾んで胸が焼け付く。まだ布越しでそっと押し当てられたものの硬さ、迎えようと口を開いた矢先、吸い込まれて舌で擦られ一気に駆け上がった。
「あっあああ!」
声は切なく響き渡る。喘ぐ呼吸に崩れ落ちる。
「美並…」
力が抜けた体を抱き上げられてベッドに運び込まれた。
「僕が全部刈り取ってあげる」
なぜこの能力があるのか、どうやって役に立てればいいのか、この能力に何の意味があるのか。
誰もが信じず、否定し、認めないその能力を、真崎だけが信じて必要としてくれた。真崎の中にある得体の知れない暗がりを、猫のイブキの命を奪うようなことにしか繋がらない存在を、一体何なのか見立ててくれと望まれていた。
けれど、本当に望まれていたのは、『それは何か』ではなく『それは意味あるものだ』という見立てだった。
美並はずっと『見て』きた。人の気持ちを、隠された、次々と変化する、容赦ない、幻のようなそれを。けれど、どれほど瞬間であろうと、それはそこに存在し、存在したことで力を放ち動きをもたらす。だからこそ、美並は警戒して確認していた、自分の心の物陰から。嘲笑が人を脅かし、恐怖が人を食い尽くし、憤怒が人を飲み込み、憐憫が人を押し流すのを。
それらに対して『見る』ことしかできない無力な自分を恥じた。人が見て欲しくないのに『見えて』しまう自分に傷つき、『見えて』も何もできない自分を悲しみ続けた。
けれど、真崎と出会って、能力は意味を変えた。
真崎は望む、『見て』欲しいと。傷ついてしまった自分では見つけることもできず探すこともできなくなった、どこかに居たはずの自分、隠され失われてしまった本来の自分を見て欲しいと。
見て欲しい、探して欲しい。
見せて欲しい、教えて欲しい。
どれほど傷つけられ、どれほど切り刻まれても、失われることない姿を。
本来の、美しさを。
美並の能力は、『それ』を見つけるためにある。
そのためには、相手を壊しかねないほど深く『見る』必要があって、脆くて砕かれそうな真崎ではこれ以上は踏み込めなかった。
けれど今、磨かれ研がれた刃は、美並が『見る』ことにも向けられるだろう。真崎を傷つけるような部分への接近は、ちゃんと防がれるだろう。だからこそ、美並は安心して進めるだろう、この先へ。
今まで自分でも恐れて進めなかった、未来へ。
「何をすればいいの…」
見つめる美並の視線に焦れたように、真崎が眉を寄せた。
「僕の何が必要…?」
「京介を下さい」
全部、隅々まで。
「上げる…僕を全部、上げる」
熱に浮かされた声で真崎が誓う。
「…嫌だけど……僕は…美並が危険な目に合うなんて……絶対嫌だけど…」
堪え切れないように唇を合わせ、舌を絡ませてくる。
ああ鋭い、やっぱり。
美並は目を閉じながら微かに笑う。
これから美並のすることは『羽鳥』という人間を知ることが全てだ。恐らくは多くの人を傷つけ、今もなお犯罪に手を染めて怯むこともないのかも知れないけれど、なぜ『羽鳥』が今に至ったのか、それを知っていくことだ。
そうして『羽鳥』を見立てた時、『見えない』糸が浮き上がる。『見えない』企みが晒された時、事件は閉じて終わるだろう。
暴こうとする美並の爪に、真崎は気が付いている。
「…でも、美並がそうやってしか生きられないなら、僕が盾になる」
頬に唇を触れながら囁く。
「剣になり、鎧になり、馬になり……餌になる…」
掠れた声で呟きながら唇が再び重ねられた。
「美並は僕を食べて……お腹一杯…」
「ん…っ」
這い降りた唇が首筋から降りる。膝に寝かされ、ブラウスのボタンを外しながら真崎が唇を滑らせる。体の両側から回った手がブラジャーを引き下ろし、溢れた胸を掬い上げた。頂きに吸い付かれて、刺激にのけぞる。
「あ…」
「ん…っ」
甘い声を上げたのは真崎もだ。仰け反った顔が屈み込んだ腰に擦られ、熱を孕んだ膨らみが布越しに触れた。欲しがっている感触に嬉しくなって囁く。
「このままじゃ…食べ…られませんね…?」
「そう…だね…」
呼吸を乱した真崎の唇が交互に胸を弄び、同時にゆっくりスカートを引き上げる。熱っぽい掌で内側を探ると、腰を撫でながら巧みにストッキングごと下着を引き下ろしていった。
「僕は食べられる…よ」
「っあっ」
柔らかく足を広げられたと思ったら、囁き声とともに濡れたものが這い降りて声を上げる。
「京…介…っ、」
だめ、まだシャワーも。
無言のまま舌先が入り込む、小さな粒を弄びながら。
「っっ」
「これは…僕だけの…果実……」
低い声が這うように響いた。指先で押し開かれ、掬い上げられ含まれる。舐められ撫でて摩られる。抱え込まれた腰を引こうとしてもままならない、ただただ開かれ愛される。
「、、っ」
視界が眩む。息が弾んで胸が焼け付く。まだ布越しでそっと押し当てられたものの硬さ、迎えようと口を開いた矢先、吸い込まれて舌で擦られ一気に駆け上がった。
「あっあああ!」
声は切なく響き渡る。喘ぐ呼吸に崩れ落ちる。
「美並…」
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「僕が全部刈り取ってあげる」
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