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7 逃走
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蜘蛛怪人が絶命したことに、桑畑は狼狽えた。確かにコイツらは怪物で、しかも自分達を殺そうとしてきた存在だ。だがしかし、元は人の姿をして言葉を話していたのだ。虫を殺すのとは訳が違う……
桑畑は自分の両手を見た。まだ白い体液がベットリと付着している。
「あぁ……あぁ……」自分が恐ろしい力を得ていることをやっと理解する。
「これは……その……」桑畑は少女を見た。少女は眼を見開いて虚空を見つめている。死んだ蜘蛛怪人を見ているのか、はたまた父親だった物の命を奪った自分を見ているのか、判断はつかなかった。
桑畑が気を逸らしているうちに、アギトアリ怪人が大顎を打ち下ろしてきた。黒い鎧から真っ赤な火花が飛ぶ。
字面に叩きつけられた桑畑の体を大顎で挟み、信じられない怪力で投げ飛ばす。
「うわぁぁ!!」桑畑は土手の上まで放り出され、背中から着地する。
アギトアリは追い討ちとばかりに桑畑の真上へ跳躍し、大顎の牙で串刺しにしようと落下してくる。
しかし、桑畑も落下に合わせて両足でアギトアリの胸を蹴りあげる。軌道を逸らされ、勢い余ったアギトアリ怪人は、河川敷の外側へ転げ落ちていった。
「くっ!」アギトアリはすぐさま起き上がり、住宅地の方へ向かって逃げようとした。桑畑がそれを追いかける。
「待てっ!」
追いついた桑畑が、背後から飛びかかる。二人は絡れ合いながら、急な坂道をゴロゴロと転がっていった。
気付くと住宅地の中まで侵入してしまっていた。周囲を民家に囲まれ、今に住民が現れてこの状況を目撃しかねない。
まずい! こんなとこ誰かに見られたら……
周囲を気にする桑畑を、アギトアリ怪人は突き飛ばした。二人の間に距離が出来る。
「勝負は預けておきます。あの少女にもよろしく言っておいてください」
「なに……?」
アギトアリ怪人は大顎を目いっぱい広げた。桑畑はそれを見て身構える。
しかし、アギトアリはこちらに向かってくることはなく、おもむろに開いた大顎を地面に近づける。
バチッッッ!!!
破裂音と共にアギトアリ怪人の体は空中に飛び上がった。大顎を凄まじい速度で閉じ、その衝撃で体を飛び上がらせたのだ。
「あっ……」
桑畑が追いかけようとした時には既に遙か彼方まで到達しており、姿は殆ど見えなくなっていた。
桑畑はその様子を唖然と眺めている事しか出来なかった。
「そうだ! あの女の子は!?」
桑畑は少女の事を思い出し、河川敷に戻ろうと足を一歩踏み出した。
「……!!?」ガクリと膝が折れ、その場に崩れ落ちる。咄嗟に手を地面につくが、その手にも力が入らない。
気付けば目の前にコンクリートの地面が広がっていた。硬い感触が、微かな痛みと共に頬を伝う。
あれ? いつの間に倒れたんだ??
あれ? あれ? あ……
桑畑は自分の意識が急激に遠のいていくのを感じた。そして、いつしかプツリと何も感じなくなった。
桑畑は自分の両手を見た。まだ白い体液がベットリと付着している。
「あぁ……あぁ……」自分が恐ろしい力を得ていることをやっと理解する。
「これは……その……」桑畑は少女を見た。少女は眼を見開いて虚空を見つめている。死んだ蜘蛛怪人を見ているのか、はたまた父親だった物の命を奪った自分を見ているのか、判断はつかなかった。
桑畑が気を逸らしているうちに、アギトアリ怪人が大顎を打ち下ろしてきた。黒い鎧から真っ赤な火花が飛ぶ。
字面に叩きつけられた桑畑の体を大顎で挟み、信じられない怪力で投げ飛ばす。
「うわぁぁ!!」桑畑は土手の上まで放り出され、背中から着地する。
アギトアリは追い討ちとばかりに桑畑の真上へ跳躍し、大顎の牙で串刺しにしようと落下してくる。
しかし、桑畑も落下に合わせて両足でアギトアリの胸を蹴りあげる。軌道を逸らされ、勢い余ったアギトアリ怪人は、河川敷の外側へ転げ落ちていった。
「くっ!」アギトアリはすぐさま起き上がり、住宅地の方へ向かって逃げようとした。桑畑がそれを追いかける。
「待てっ!」
追いついた桑畑が、背後から飛びかかる。二人は絡れ合いながら、急な坂道をゴロゴロと転がっていった。
気付くと住宅地の中まで侵入してしまっていた。周囲を民家に囲まれ、今に住民が現れてこの状況を目撃しかねない。
まずい! こんなとこ誰かに見られたら……
周囲を気にする桑畑を、アギトアリ怪人は突き飛ばした。二人の間に距離が出来る。
「勝負は預けておきます。あの少女にもよろしく言っておいてください」
「なに……?」
アギトアリ怪人は大顎を目いっぱい広げた。桑畑はそれを見て身構える。
しかし、アギトアリはこちらに向かってくることはなく、おもむろに開いた大顎を地面に近づける。
バチッッッ!!!
破裂音と共にアギトアリ怪人の体は空中に飛び上がった。大顎を凄まじい速度で閉じ、その衝撃で体を飛び上がらせたのだ。
「あっ……」
桑畑が追いかけようとした時には既に遙か彼方まで到達しており、姿は殆ど見えなくなっていた。
桑畑はその様子を唖然と眺めている事しか出来なかった。
「そうだ! あの女の子は!?」
桑畑は少女の事を思い出し、河川敷に戻ろうと足を一歩踏み出した。
「……!!?」ガクリと膝が折れ、その場に崩れ落ちる。咄嗟に手を地面につくが、その手にも力が入らない。
気付けば目の前にコンクリートの地面が広がっていた。硬い感触が、微かな痛みと共に頬を伝う。
あれ? いつの間に倒れたんだ??
あれ? あれ? あ……
桑畑は自分の意識が急激に遠のいていくのを感じた。そして、いつしかプツリと何も感じなくなった。
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