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移送作戦【当日・下】・9
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「アリーシャさんさえ良ければ、今後はうちの娘とも仲良くしてやってね。勿論、息子たちや義理の息子とも」
「はい。ありがとうございます」
マルテはクローゼットから離れると、「靴はここにあるからね」とベットの下から平らな衣装箱を取り出してくれる。
アリーシャもベッドの上に帽子を置くと、マルテの隣で衣装箱の中を覗き込む。
靴もブーツやヒールだけではなく、部屋履きやローファーなど色違いやデザイン違いも合わせて数足用意されていたのだった。
「何足か用意したけど、サイズが合わなかったら教えてね。デザインも気に入らなければ別の物を用意するから」
「そんな……ありがとうございます。でも、お金が掛かるので、サイズは確かめますが、デザインはこれで大丈夫です」
「遠慮しなくていいのよ。オーキッド坊っちゃんから多めにいただいているから」
どうやら、アリーシャの洋服代はあらかじめ、オルキデアがマルテたちに渡していたらしい。
マルテによると、「人前に出ても、アリーシャが恥ずかしい思いをしないように」ということで、アリーシャに似合う洋服を見立てる様に、オルキデアに言われたとのことであった。
「これも急いで用意したから、貴族御用達の仕立て屋のものじゃなくて、平民でもお金を出せば買えるような、そこそこの値段と生地のものばかりだけど……」
「そんな事はありません。どれも素敵です! ありがとうございます」
シュタルクヘルトでは、他の姉妹から洋服を貰うことはあったが、流行を過ぎた服であり、ほとんどが破れてほつれたものや、汚れているものだった。
父は新しい洋服を買い与えてくれなかったので、当時のメイドやアリーシャ自身で修繕しなければならなかった。
けれども、セシリアやマルテたちが用意してくれたものは、どれも丁寧に作られた新品同然であり、破れやほつれ、汚れも見当たらなかった。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。それ以外の荷物はカバンごとベッドの側に置いたから確認してね」
マルテに言われて顔を上げると、ベッド脇のサイドテーブルの足元に、オルキデアが運び込んだカバンが置いてあった。
「私はクシャさんと主人が買い出しから帰って来たら、夕食の準備を始めるわ」
「あっ! 私も手伝います!」
慌てるアリーシャにマルテは「いいのよ」と、やんわりと止める。
「今日くらいはゆっくりして。それよりも、荷物や洋服で足りないものが無いか確認してくれる? もし必要なものがあれば、暗くならない内に、クシャさんと主人に買いに行くように頼むから」
「わかりました……」
「私は一階にいるから、何かあったら気軽に呼んでね」と言ってマルテが出て行くと、一人きりになった部屋の中が急に広くなったように感じた。
シュタルクヘルトよりも広くて、綺麗に整った部屋。物音もほとんど聞こえてこなかった。
オルキデアと出会ってから、こんなに静かな環境は始めてだからか、どこか寂しいとさえ思ってしまう。
部屋の中を改めて見回すと、クローゼットの脇に黒い布がかけられた縦長の置き物があった。
置き物に近いたアリーシャが黒い布を取ると、布の下からは置き物ではなく大きな姿見が出てきた。
姿見には銀が混ざった藤色の髪を頭の後ろで一つにまとめた娘が、ぼうっと写っていたのであった。
「はい。ありがとうございます」
マルテはクローゼットから離れると、「靴はここにあるからね」とベットの下から平らな衣装箱を取り出してくれる。
アリーシャもベッドの上に帽子を置くと、マルテの隣で衣装箱の中を覗き込む。
靴もブーツやヒールだけではなく、部屋履きやローファーなど色違いやデザイン違いも合わせて数足用意されていたのだった。
「何足か用意したけど、サイズが合わなかったら教えてね。デザインも気に入らなければ別の物を用意するから」
「そんな……ありがとうございます。でも、お金が掛かるので、サイズは確かめますが、デザインはこれで大丈夫です」
「遠慮しなくていいのよ。オーキッド坊っちゃんから多めにいただいているから」
どうやら、アリーシャの洋服代はあらかじめ、オルキデアがマルテたちに渡していたらしい。
マルテによると、「人前に出ても、アリーシャが恥ずかしい思いをしないように」ということで、アリーシャに似合う洋服を見立てる様に、オルキデアに言われたとのことであった。
「これも急いで用意したから、貴族御用達の仕立て屋のものじゃなくて、平民でもお金を出せば買えるような、そこそこの値段と生地のものばかりだけど……」
「そんな事はありません。どれも素敵です! ありがとうございます」
シュタルクヘルトでは、他の姉妹から洋服を貰うことはあったが、流行を過ぎた服であり、ほとんどが破れてほつれたものや、汚れているものだった。
父は新しい洋服を買い与えてくれなかったので、当時のメイドやアリーシャ自身で修繕しなければならなかった。
けれども、セシリアやマルテたちが用意してくれたものは、どれも丁寧に作られた新品同然であり、破れやほつれ、汚れも見当たらなかった。
「そう言ってもらえると嬉しいわ。それ以外の荷物はカバンごとベッドの側に置いたから確認してね」
マルテに言われて顔を上げると、ベッド脇のサイドテーブルの足元に、オルキデアが運び込んだカバンが置いてあった。
「私はクシャさんと主人が買い出しから帰って来たら、夕食の準備を始めるわ」
「あっ! 私も手伝います!」
慌てるアリーシャにマルテは「いいのよ」と、やんわりと止める。
「今日くらいはゆっくりして。それよりも、荷物や洋服で足りないものが無いか確認してくれる? もし必要なものがあれば、暗くならない内に、クシャさんと主人に買いに行くように頼むから」
「わかりました……」
「私は一階にいるから、何かあったら気軽に呼んでね」と言ってマルテが出て行くと、一人きりになった部屋の中が急に広くなったように感じた。
シュタルクヘルトよりも広くて、綺麗に整った部屋。物音もほとんど聞こえてこなかった。
オルキデアと出会ってから、こんなに静かな環境は始めてだからか、どこか寂しいとさえ思ってしまう。
部屋の中を改めて見回すと、クローゼットの脇に黒い布がかけられた縦長の置き物があった。
置き物に近いたアリーシャが黒い布を取ると、布の下からは置き物ではなく大きな姿見が出てきた。
姿見には銀が混ざった藤色の髪を頭の後ろで一つにまとめた娘が、ぼうっと写っていたのであった。
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