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勝負の日・3
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一瞬、虚をつかれた顔をしたティシュトリアだったが、すぐに整えられた眉を釣り上げた。
「……どういうことなの。説明してくれるかしら?」
言葉は丁寧だが、声音は低く、今にも癇癪を起こしそうな様子であった。
ソファーに深く座りながら、「言葉の通りです」とオルキデアは膝の上で手を組む。
「俺はコーンウォール家を通じて知り合い、兼ねてからお付き合いしていたアリーシャと結婚しました」
「コーンウォール家って、あの名ばかりの没落貴族よね」
「生前から父上と親交があったコーンウォール家です。我がラナンキュラス家と同じ、今は名ばかりの貴族ではありますが、コーンウォール家も由緒正しい貴族の家柄です」
オルキデアが「母上もご存知でしょう?」と促すと、「そうね……」とオルキデアの母親は渋々頷いた。
「けれども、オーキッド。コーンウォール家では貴方は幸せになれないわ」
「……どうして母上がそう考えるのか、教えて頂けますか?」
静かに尋ねると、「そりゃあ、そうよ」と当たり前の様に話し出す。
「コーンウォール家は今後の先行きが怪しいもの。借金は返済したらしいけど、もう貴族社会に戻ってくる気はないんですって? あの人が生きている時にそんな噂を聞いたわ」
「それは……」
ティシュトリアの言う通りであった。
ティシュトリアが言う「あの人」とは、オルキデアの父のエラフのことだ。
エラフが生きていた頃に、オルキデアも同じ話を聞いたことがあった。
たとえこの先、コーンウォール家が借金を完遂して、事業が上手くいっても、貴族社会に戻って来る気はないと。
メイソン曰く、「気難しい貴族を相手にするより、きっぷのいい下町の市民を相手にしている方が気が楽だ。自分に貴族は向いてない」らしい。
貴族相手に造園や貴族向けの公園の管理をするよりも、自らが経営する市民向けの新聞を取り扱った新聞を取り扱う印刷工場の方が、向いていると度々愚痴を漏らしていた。
貴族は値段はいいが、一つの仕事に対して注文が多い。一方、市民は値段はあまり取れないが、仕事に対してある程度は融通が利くそうだ。
借金を返済した以上、無理に高い金額を払ってくれるがプライドの塊である貴族を相手にせずとも、下町で市民相手に日々の生活に困らない程度に、細々とやっていくだけでいいらしい。
「貴族社会に戻って来る気がないなら、楽な生活は出来ないでしょう? 下町の平民同然の一族の出身なんて、貴方の今後の名声にも影響してくるわ。
なんて言っても、貴方は軍の出世株。若くして少将になって、次は中将に昇級するのも近いでしょう」
「母上。俺は名声など気にしません。出世にも興味はないんです」
「そんなことを言って……出世を続ければ、国からもっと高い爵位を賜わるわ。そうすれば、今よりももっと楽な生活が出来て、ここよりもいい屋敷に住めるわ。
そうなった時に、身分に相応しい女性と結婚しなければ、貴族社会で笑われてしまう。私は貴方の今後を考えて言っているのよ」
オルキデアは足を組むと、膝の上で強く手を握りしめる。
「俺は今の生活とこの屋敷が気に入っているんです。
仮に今よりも高い爵位を賜わっても、この屋敷でアリーシャと……愛する人と静かに暮らしていくつもりです。それは相手も承諾してくれています」
アリーシャとそんな話をしたことはないが、彼女は一時的な関係だ。
この話は、オルキデアが生涯を遂げたいと思った女性にすればいい。
「……どういうことなの。説明してくれるかしら?」
言葉は丁寧だが、声音は低く、今にも癇癪を起こしそうな様子であった。
ソファーに深く座りながら、「言葉の通りです」とオルキデアは膝の上で手を組む。
「俺はコーンウォール家を通じて知り合い、兼ねてからお付き合いしていたアリーシャと結婚しました」
「コーンウォール家って、あの名ばかりの没落貴族よね」
「生前から父上と親交があったコーンウォール家です。我がラナンキュラス家と同じ、今は名ばかりの貴族ではありますが、コーンウォール家も由緒正しい貴族の家柄です」
オルキデアが「母上もご存知でしょう?」と促すと、「そうね……」とオルキデアの母親は渋々頷いた。
「けれども、オーキッド。コーンウォール家では貴方は幸せになれないわ」
「……どうして母上がそう考えるのか、教えて頂けますか?」
静かに尋ねると、「そりゃあ、そうよ」と当たり前の様に話し出す。
「コーンウォール家は今後の先行きが怪しいもの。借金は返済したらしいけど、もう貴族社会に戻ってくる気はないんですって? あの人が生きている時にそんな噂を聞いたわ」
「それは……」
ティシュトリアの言う通りであった。
ティシュトリアが言う「あの人」とは、オルキデアの父のエラフのことだ。
エラフが生きていた頃に、オルキデアも同じ話を聞いたことがあった。
たとえこの先、コーンウォール家が借金を完遂して、事業が上手くいっても、貴族社会に戻って来る気はないと。
メイソン曰く、「気難しい貴族を相手にするより、きっぷのいい下町の市民を相手にしている方が気が楽だ。自分に貴族は向いてない」らしい。
貴族相手に造園や貴族向けの公園の管理をするよりも、自らが経営する市民向けの新聞を取り扱った新聞を取り扱う印刷工場の方が、向いていると度々愚痴を漏らしていた。
貴族は値段はいいが、一つの仕事に対して注文が多い。一方、市民は値段はあまり取れないが、仕事に対してある程度は融通が利くそうだ。
借金を返済した以上、無理に高い金額を払ってくれるがプライドの塊である貴族を相手にせずとも、下町で市民相手に日々の生活に困らない程度に、細々とやっていくだけでいいらしい。
「貴族社会に戻って来る気がないなら、楽な生活は出来ないでしょう? 下町の平民同然の一族の出身なんて、貴方の今後の名声にも影響してくるわ。
なんて言っても、貴方は軍の出世株。若くして少将になって、次は中将に昇級するのも近いでしょう」
「母上。俺は名声など気にしません。出世にも興味はないんです」
「そんなことを言って……出世を続ければ、国からもっと高い爵位を賜わるわ。そうすれば、今よりももっと楽な生活が出来て、ここよりもいい屋敷に住めるわ。
そうなった時に、身分に相応しい女性と結婚しなければ、貴族社会で笑われてしまう。私は貴方の今後を考えて言っているのよ」
オルキデアは足を組むと、膝の上で強く手を握りしめる。
「俺は今の生活とこの屋敷が気に入っているんです。
仮に今よりも高い爵位を賜わっても、この屋敷でアリーシャと……愛する人と静かに暮らしていくつもりです。それは相手も承諾してくれています」
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