ひこうき雲

みどり

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ゆいの青春③ミチヒロ家に来る

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翌朝


といっても昼になりそうな時間に

ゆいはまだ布団の中で眠っていた。


ゆいの母・あいは

土曜は仕事が休みなので家にいた。

父は仕事でいなかった。


ピンポーン


誰か来た。


あいがインターホンのモニターを見ると

見知らぬ少年がひとり立っていた。



ミチヒロは、ゆいと中学が同じ男子生徒に

ゆいの家の場所を知らないか聞いた。


男子生徒は

ゆいの父は高速バスの運転手だから

通勤するのに便利な主要駅のそばの

マンションに住んでいる。すぐわかるよ。

と教えてくれた。


だから、早速やって来たのである。


あいは「どちら様ですか?」と聞いた。


ミチヒロは

「ゆいちゃんとお付き合いさせていただいています。ミチヒロといいます。

テスト勉強を一緒にしようと思って来ました。」

と言った。


あいは開鍵した。


玄関にきてドアを開けてもらったミチヒロは

アダムスファミリーのお母さん??、と思った。


「今、あなたが思ってること、当ててあげましょうか?

あの女優さんに似てる!、でしょ?」

あいはにっこり笑ってミチヒロを迎え入れた。



よく眠っていたゆいは


「ゆい、起きなさい。

あなたの彼氏だって子が来てるわよ。」

とあいに言われ飛び起きた。

夢であって欲しい、と思った。


パジャマのまま自分の部屋から出て

リビングに行くと


ミチヒロがいつも自分が座る椅子に座り

3人の祖母たちと一緒に昼食をとっていた。


「なんであんたここにいるのよ!」

ゆいは怒りのあまりテーブルをバン!と叩いた。


「ちょっと、食事中だよ。やめとくれ。」

マツおばあちゃんが言った。

「お昼まだなんだって。」

「早く顔洗って着替えて来なさい。」

あいが言った。


ゆいは洗顔してジャージに着替えると

いつも父が座る椅子でご飯を食べた。


「ママ、なんでこのヒト家の中に入れたのよ。」

「え~、だって、彼氏だって言うじゃない?

いろいろお話聞いてみたかったのよ。」

あいはニヤニヤしていた。


「彼氏だ、って言ったなら、急に言い始めただけよ。

だいたい、なんで勝手に家まで来るのよ。

特進だかなんだか知らないけど、ホントはバカなんじゃないの⁇」


「コレ、彼氏に、バカ、なんて言うもんじゃないよ。」

はなおばあちゃんが言った。

「そうやって怒りながらご飯食べるのは、よくないわよ。」

ナミおばあちゃんも言った。


「あ~もう頭くる!だって、私このヒトの名前もしらないのよ。」

「ミチヒロだよ。」

「あ~ミチヒロ君ね、って。違うでしょ!ご飯食べたら、帰ってよね。

ママ、おかわり!」

「自分で行きなさいよ。」


あいは食事の後片付けが終わると

どこかへ出かけてしまった。


自分の部屋にミチヒロを入れたくなかったゆいは

食卓でテスト勉強することにした。


「3時には帰ってよね。」

「ゆい、勉強教えてもらうんだから、隣に座った方がいいんじゃないの?」

「嫌です。それに、教えてもらわなくても、自分でできるから。」

「あらまぁ、この子ったら。私たちがいるから恥ずかしがっちゃって。」

「ねぇねぇ、後でいいから、新聞読んで。老眼なのよぉ。」

食卓には3人の祖母たちも同席していた。


「なんでおばあちゃん3人もいるの?」

「私とおばあちゃんたちはセットだから。嫌なら、すぐ帰って。」


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