ひこうき雲

みどり

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ボクはモブじゃない

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みんなはボクのことをモブだと思っているだろ?


主人公のゆいちゃんに相手にしてもらえてないと

思っているだろ?


ボクは諦めない。絶対ゆいちゃんと結婚するんだ。

ゆいちゃんはボクの魅力に気づかないだけだ。


ゆいちゃんは進路が決まると思って

ファミレスで短期のバイトを始めたのに

進学先は決まらず、その話は流れてしまい

シフトだけが残った。


ボクは、母さんに聞いたら「卒業までならいいわよ」

と言われたので、ゆいちゃんと同じ店でバイトしている。

シフトに入る日もほぼ一緒だ。

ゆいちゃんは、仕事のできるボクを

いつも誉めてくれるんだ。

帰りも一緒だ。こんな楽しいことはない。


「ゆいちゃん、あのテーブル片付け終わったよ。」

「ミチヒロ君、あそこだけじゃなくて、こっちもそっちも

お客さまが帰ったテーブルは片付けるの!それに、

いちいち報告してこなくていいから。」


「おい、誰だよ?あんなの雇ったの?」

「ゆいの彼氏だって言ってるぞ。シフト一緒にしてるから

責任取れよな、ゆい。」

「え~そんなぁ。ミチヒロ君、教えてもなぜか次の時に入ったら忘れて

リセットされてるんだもん。また1からなんだもん。」

「知るかよ、そんなの。」



ある日


仕事が終わって休憩室に行ったら

女子がケンカしてたんだ。


なんか、ボクとゆいちゃんがいつも同じ時間帯に入ってるのを

よく思ってない女子がゆいちゃんにケンカ売ったみたいなんだ。


「彼氏と仲良くバイトなんて、何考えてるのよ!遊びじゃないのよ。

仕事中におしゃべりばかりするのやめてよ!ってか、もう辞めたら?」

「私だって、いつもカバーするのしんどいんだから。

わかったわよ。辞めてやる!こんなバイト!」

いつになくゆいちゃんは辛そうで、泣き出してしまった。


騒ぎを聞きつけて、社員が仲裁に駆けつけた。

「ゆいは仕事ができるから辞めたらダメだ!辞めるならミチヒロだ!」


みんながボクの方を見た。流れ弾だ。

社員は、ボクがいるのを知らなくて言ってしまったそうだ。

とりあえず、その場を丸くおさめるために

その場にいないボクを悪者にした気にしないで欲しい、と謝ってくれた。


女の子を守るのは当然だ。

ましてやゆいちゃんが泣いているんだ。

ボクは喜んで悪者になるよ。


バイトの帰り道、ボクはゆいちゃんを慰めた。

「ミチヒロ君、バイトは遊びじゃないのよ。」

とゆいちゃんは言った。


家に帰ると、母さんが

「バイトもう辞めなさい。店に電話しといたから。」

と言った。

ゆいちゃんと一緒に帰ることはできなくなってしまった。


「ゆい、ミチヒロの母さんから、バイト辞めさせるって電話あったよ。」

「えっ?何でですか?」

「勉強させるって言ってたぞ。」

「そうなんですか…」


ボクはいいこと思いついたんだ。

それで、ゆいちゃんの家に行った。


ゆいちゃんは何か言いかけたけど

そのままボクの話に賛成してくれたんだ。


「ゆいちゃん、ボクたちの貯金通帳だよ。」

「通帳?」

「うん。名前はボクのだけど、ふたりの通帳。

ゆいちゃんには通帳を預ける。ボクはキャッシュカードを持っとくよ。

ふたりで貯金するんだ!」

「貯金?」

「結婚資金だよ。いつでも、入れられる時に入れてくれたらいいよ。

ゆいちゃんは頑張り屋さんだけど、すごくバイト頑張ることはないよ。」


ゆいちゃんは、しばらくの間目をキョロキョロさせていたけど

やっと言ってくれたんだ。


「わかったよ、ミチヒロ君。」


「本当にいいの?」

ボクは思わず確認してしまったんだ。


「天にも昇る気持ちって、こういうことかな?」

またまた思わず言ってしまったんだ。


「そのまま昇っちゃってもいいよ。」

とマツおばあちゃんに言われた。


外野は気にしないから、ボクは。
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