ひこうき雲

みどり

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ミチヒロとノリヒロ

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ミチヒロとノリヒロは朝からパチンコ店にいた。


ミチヒロをパチンコに誘ったのはノリヒロだった。


「オマエ、CAの彼女と別れたんだって? 

 何でそんなもったいないことすんの?」


「うん。」


「で、もうすぐ結婚すんだろ?」


「うん。」


「招待状届いたよ。好きなの?今の彼女?」


「うん。」


「何か浮かない顔だな。嫌なのか?」


「そういうわけじゃないけど。」


「けど、何だよ?」


「ゆいちゃん、最初はCAになったの嬉しかったよ。マグレだと思ってたからさ。」


「めっちゃ自慢してたじゃん。」


「何かメイクのせいなのか会う度にキラキラしていってさ。

 どんどん出世するし。給料もオレよりいっぱいもらってるみたいだしさ。」


「稼いでもらえばいいじゃん!」


「何か自分が抜き去られた感じがして惨めになってきたんだ。」


「そんなことを自慢する子じゃないだろ?」


「そうだよ。そういうところが嫌になってきたんだ。」

 ふたりで作った貯金通帳にも毎月入金するしさ。」


「別れた時返したのか?それ?」


「今の彼女と旅行した時使ったんだ。

 ゆいちゃんが中国支部を離れることになった時

 向こうのスタッフから、送別会にサプライズで来て欲しいって言われて。

 花束は向こうで用意してくれてたけど。

 旅費は出してくれなかったんだ。」


「それ、妊娠中の彼女と行ったのか?」


「うん。そうだよ。心配したけど、大丈夫だって言うからさ。」


「幾らあったのか知んないけど。何年も貯金してくれてたんだろ元カノ。

 残りは返せよ。」


「結婚、出産準備に使ったんだ。あれオレ名義の通帳だよ。」


「元カノ知ってんのか?使い込んだこと。。。」


「送別会の時に残高ゼロの通帳渡したんだ。」


「中国まで持ってったのか?」


「うん。」


「元カノ何か言ったのか?」


「一発殴らせろって。」


「それくらいしてもいいと思うよ。」


「腹パンされたよ。痛かった!あの子は野蛮なんだよ。

 それにさ、向こうの何か偉い人?おっさんに

 家族の様なうちのスタッフ傷付けるようなマネするなって

 睨まれるし。呼んだのはそっちじゃん。」


「オレ、帰るわ。」


「え?何で?出てるよ。これ、どうすんの?」


「何か気分悪くなったから。」



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