転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

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本編

45.初歩

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 さっきまで確かに座っていたのに、今は後ろから抱え込まれたままに二人仲良く並んで寝転がって、さりげに耳をかじかじ甘噛みとかされちゃってるし、ズボンに手を突っ込まれたりしている。

 ただでさえ状況に脳が追いついていないのに、直でゆるゆる竿を撫でられたら余計に思考が霧散していく。

「え、エイジ……っ、その」
「うん。どこが気持ちいい?」
「や、……ぁ、待ってそれ、っ」

 見えなくても、反応をつぶさに観察しながら弄られてるのが分かって瑛士君の手の中ですくすく順調に育っていく陰茎が恥ずかしい。先走りを広げるように先端に塗りつけられると腰が揺れ、喉がひくひくした。

 ズボンを微妙にずり下げられて、完勃ちしたモノだけ勢いよく飛び出てくると、野外で露出している並みの羞恥心が襲ってきたが、恥ずかしさを感じるよりも自由になって大胆になった手つきに翻弄される方が勝ってひんひん情けない声で喘いでしまう。

 待って、本当にちょっと待って。気持ち良すぎて今にも暴発してしまいそうなのだ。あまりにも呆気なくイってしまったら、瑛士君絶対引くじゃん。

「腰すっげ揺れてる、可愛い。好きにイって良いのに」
「やっ、俺だけ……っ」
「フィーの気持ち良いとこ覚えたいから。こっちは?」
「ひぁっ! あ、っ」

 服の中に入ってきた反対側の手で胸の先を撫でられ、ぞわっとする。快感なのかは分からないけれど、謎に触れられる前から微妙に勃ってた乳首が擦られると陰茎がぴくぴく動く。

「ん、こっちも気持ち良いな?」

 暗示をかけるみたいな囁きが耳に直接吹き込まれ、ぢゅうっと吸われ――もう限界だった。ゆるゆる扱かれ続けた陰茎から堪らず精液を吐き出す。食いしばった歯から呻き声が洩れた。

 かつてない程心臓がバクバク音をたててるし、いつからか握りしめていた瑛士君の手首から手が離せないままに、ふーふー言ってんのがめちゃ恥ずかしい。

 全部出し切れとばかりにやわく擦られるのも、満足そうに耳の裏にチュッチュとキスされるのも、どうにもむず痒くて。僅かに身じろぐと、腿の付け根に硬い感触がしてビクッとした。

「――っ、」

 わ、わわ。瑛士君でも勃つんだ、なんて真っ先に思った。

「ビビられると困るんだけど? ……勃つだろ、普通に」
「や、そうなんだけど……ね」

 長く瑛士君を崇拝していた俺にとって、そこに陰茎がある事にすら驚きを隠せない。いや、勿論ついているのは分かっているのだが、何かこう……性器という生々しい想像といまいち結びつかないのだ。

 存在を主張するようにお尻に押し当てられてしまうと、そんな生っちょろい事も言えなくて、その熱さと硬さに息を呑む。手首を掴んでいた手を逆に取られて、後ろに引っ張られた。

「慣れて。触るのも触られんのも。お前まだ俺に遠慮してんだろ」

 どこを、と思わず漏れた呟きに、「好きな所を好きなだけ」なんて気前の良すぎる答えが返ってきた。触られる事には幾分慣れてきたけれど、恐れ多くて瑛士君を触るのはどうしても躊躇してしまう、俺のこの胸の内はバレてしまっていたようだ。

「良いなら……触りたい。エイジみたいに自然にはまだ出来ないけど、本当は上から下まで全部まんべんなく触りたい」
「え、急に欲しがりじゃん。ウケる」

 練習な、って俺の手に握らせてくれた。やっぱり熱くて硬くて、自分のと全く違う感触に指がわなわな震えて、笑いながら瑛士君が自分の手も上から重ねる。

 ぎゅって握り込んで上下に動く。そんなに強くして大丈夫かなと心配になるくらい。余計な事すると萎えちゃわないかと硬直している間に、瑛士君の呼吸が速くなって、項におでこがグーッと埋められる。

「――っく、」

 呻き声がとんでもなくエロかった。俺の息まで上がってる事に気づく。湿っぽく感じる室内に、しばらく二人の呼吸の音だけが響いていた。

「……すげー気持ち良かった」
「……俺も」

 瑛士君の独り言みたいな言葉に心から同意した。マラソン完走した並みの達成感と疲労感に目を閉じて、一瞬後片付けなんて嫌な事が過ぎったけれど、もうどうでも良いやって寝た。






「――ちょっと実家に行って来る!」

 朝起きて、同じく寝落ちした瑛士君とちょっと目を背けたいほど爛れた室内を手分けして片付けた後、俺は宣言した。

 仕入れもしなくては店が開けられないので、買い出しにも行かなくてはならないけれど、そっちは瑛士君に任せても良いかなと思う。とにかく旅の間かなり実家に頼ってしまったので、顔を出しておかないと後が怖い。

「一人で行くのか?」
「うん。留守が長かったから、すごい怒られると思うんだよね」
「なら俺も行く。フィーが良いなら」
「じゃあ、瑛士君には買い出しを――って、え?」

 一人で行く前提で話していたので、何を言われたか分からなかった。瑛士君が行きたいなら、止める理由は何もないのだが、決して楽しいものではないと思うんだけど……。

 朝食の途中だったのだが、その手を止めてまで、こちらにやけに真剣な眼差しを向けてくる瑛士君に首を傾げた。

「俺のせいだし、謝るのは当然だろ。それに、これからずっと居るならフィーの親にもちゃんと挨拶しときたい」
「えっ……言うの? 俺は嬉しいけど……父ちゃん、兄ちゃんと同じで頭固いからエイジが嫌な思いするかも」

 母ちゃんは俺寄りなので、家にとんでもないイケメンが来て、さらに息子と付き合ってるなんて話した日には飛び上がって無邪気に喜ぶだろう。問題は父ちゃんだ。確実にうるさいと思う。

 その辺りを瑛士君に確認するけれど、やっぱり意思は変わらない。男同士なら結婚する訳でもないし、成人以降は本人らの自由にすることが多いのだけれど……正々堂々お付き合いしたいって瑛士君らしくて格好良い。好き。

 という訳で、二人で先に買い出しを済ませ、隣町に向かう。まぁ隣町といっても川を挟むだけなので、そんなに時間はかからない。せいぜい徒歩十分の道のりをデート気分で楽しんだ。

「……エイジは、その、ご両親に会いたいなぁとかない? 寂しくない?」

 親だけではなく友達もだけど、女神の力では仮に元の世界に戻れたとしても瑛士君はもう誰とも会う事が出来ない。聞くのは無神経かなと思いながらも、聞いてしまう。一人で抱え込まれるのは嫌だし。

「ないな。たぶん向こうで行方不明とかになってんだろ? 申し訳ないなとは思うけど。俺にはどうしようもなかったからなー」

 もごもご口を濁らせる俺に対し、瑛士君はあっけらかんとして答える。

「ほ、ホントに?」
「あぁ。田中ん時と違って後悔はないしなー。口喧嘩した後とかだったら辛かったかも」
「仲良かったの? どんな人?」

 辛くないなら聞きたい事は山程あった。この世に瑛士君を生み出し、こんっっなにも素敵に育ててくれた人達なのだ。リスペクトしかない。

「たぶんフィーん家ほど仲良し家族じゃないけどな。親父は体育会系の暑苦しいタイプでさ……」

 瑛士君は家族の事を話してくれた。熱いお父さんと優しいお母さん。不満は色々あったみたいだけど、それでも瑛士君が家族に愛されていたのは伝わってくる。

 何もなければ、あと何十年も家族として過ごしていたのに……と思うとやり切れない。望まない転移は瑛士君からたくさんのものを奪った。どんな見返りがあったとしても全然見合わないだろうに、ご褒美が俺とは……何とも申し訳ない。

「兄ちゃんはさ、もうエイジの兄ちゃんじゃん? 父ちゃんも母ちゃんも、きっとそうなるよ」

 拙い俺の言葉はちゃんと伝わってくれるだろうか。

 兄ちゃんは、もう瑛士君の事も弟だと思っている。奪われたものは大きくてとても代わりにはならないけれど、家族になれたら良いなと思う。

 俺は前世も今も家族には恵まれたから。恋人とは違った、家族からしか摂取できない愛情もあると思うから。瑛士君にも受け取って欲しい。

「そうだな……家族になれると良いな」
「なるよ! 父ちゃんうるさいけど意外とチョロい所あるから、積極的にそこ狙ってこー」
「お前たまにゲスい事言うよな」
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