転生した気がするけど、たぶん意味はない。(完結)

exact

文字の大きさ
47 / 63
本編

47.擦合

しおりを挟む

 その夜、ベッドにがっちがちになって座っている俺を見て、瑛士君は涙目になる位に盛大に笑った。

 その少し前まではジッと座ってるのがとにかく苦痛で、部屋中をうろうろ歩き回っていたのだが、腹をすかせたハイエナみたいだと思って止めたというのに。一体どちらがマシだったんだろう。

「緊張し過ぎな、分かるけど。リラックスしろって」
「無理だよ。妄想が溢れて止まらないんだよ」
「え、嘘だろ。すげープレッシャーかけてくんじゃん」
「違っ……断じてそんなつもりは……!」

 あわあわと否定しながらも、夕飯を食べて交代で身体拭いたりして準備している間に、随分と煮詰まって我ながら変な仕上がり方になっている気はする。

 ローズ先生から教わった手練手管が頭を過るのだ。話し方が妙に上手いせいで臨場感たっぷりに語られた諸々が、瑛士君の姿を伴って脳内で鮮明に再生されてしまうから手に負えない。

「俺ら初心者じゃん? なら、まずはベタな所から始めよっかなって……もっと玄人向けにする?」
「初心者コースでお願いします!」

 答えた途端に、よし、と瑛士君がガバっと上着を脱いだ。それは惚れ惚れするほど男気のあるいい脱ぎっぷりだった。咄嗟に半裸の瑛士君からそっと目を逸らしたは良いが、ここは俺もひとつ脱いでおくべきだろう。

 けれど、決意して服の裾を掴んだ手を何故か瑛士君に取られてしまい、頭に疑問符を浮かべたままベッドに導かれる。そのまま瑛士君がうつ伏せに寝てしまうから、こっちは予想より筋肉質な綺麗な背中に見惚れて立ちつくすしかない……お、俺はどうすれば?

「なぁ。マッサージして?」

 交差した腕を枕に、うつ伏せたまま顔だけこちらに向けて瑛士君が言った。それでライキの実を消費しちゃおうと。その意図はすぐに理解出来たのだが、おねだり瑛士君という初めての光景が衝撃的で思わず鼻血が噴き出るかと思った。

 待って待って。して? って何。引くほど可愛いんだけど。ちょっと可愛いが過ぎて怖い。

「お、俺がして良いの?」
「本当は俺がしたいけど、後で良いよ」

 きっと俺の緊張を見越しての提案なんだろう。マッサージなら性的なご奉仕よりは随分ハードルが低くなったと思う。ただ純粋に健全に、身体を揉み解すだけで良いんだから別に難しく考える必要もないのだ。やれる、やってやる。

 鼻息荒く寝室に準備していたライキの実を二つ両手に握りしめ、曝け出された瑛士君の魅惑的な肢体に……いや美術品みたいに綺麗な背中に……え、本当綺麗なんだけどこれ作り物じゃないの? なんて考えていたら、両手でパーンと実が割れた。

「ウケる、マジ何やってんの。ほら、それ塗って」
「え、あぁ……うん」
「じゃ、背中に跨って」
「え、こうかな。え? 重くない?」

 放心状態で言われるがまま動く俺を瑛士君が笑っている。

 ライキから出た軽い質感の油は伸びが良く、背中の上でスルスルと薄く広がった。肌なじみが良いのかすぐに乾いてしまいそうで追加で二、三個割って、ようやく手のひらが滑っていく感覚に変わる。

 体温で温められたのか、あの独特の香香が部屋にじわじわ広がっていく。今日も嗅ぎ慣れてるはずなのに、状況が状況だけに今は美味しそうな香りとは思えない。エキゾチックなお香でも焚いてるみたいだった。空気もどこか湿っぽい。

「フィーの手が温かくて気持ち良い」

 技術も何もないけれど、下から上に滑るに任せてゆっくり背中を撫でる。何度も繰り返していたら瑛士君が穏やかな声で言った。

 俺もポカポカして気持ち良い。瑕のない引き締まった背中にのる筋肉は彫刻めいているのに押せば程よく弾力があった。枕元にだけ置いたランプの橙色がライキを塗った背中の凹凸をてらてら照らしている。

 それが綺麗で、手を動かしながら見惚れているうちに、この広い背中に抱きつきたい衝動が襲って来るから困った。上げられた腕の下、脇に出来た空間にズボッと自分の腕を差し込み、厚い胸板をギュッと抱えて、肩甲骨と肩甲骨の間の窪みに顔を埋めて思いきり頬擦りしたい。堪能したい。さっきからそんな考えに囚われている。

「なんか……あっついね」

 片時も目を離せずに上着を脱ぐ。背中の上に変質者が居ると思われたくなくて必死に息を殺すがその分鼻息がヤバい。あー抱きつきたい。ウズウズが止まらない。生肌ヤバい。

「フィー? ちょっと……」
「……うん」
「や、フィー。聞いて」
「うん――えっ、ふぁっ?!」

 ぽけーっと生返事していたら、突然瑛士君が腕立てみたいにグワッと身を起こしてきてビビる。そのまま俺の下で身体を反転させようとするから、腰を浮かせたものの不安定さにグラついた。瑛士君に腰を支えられて、何とか着地する。

「瑛士、く――っ、んん」

 問いかけは遮られ、勢いよくキスされた。首の後ろと腰をがっちりホールドされて逃げ場はなくて、口内の奥深くまで舌でいっぱいになる。口の中を思いきり弄られて溢れそうな唾液を、んくんく懸命に飲み込む。

 勝手に揺れ出す腰を咎めるように瑛士君に引き寄せられると、脚の間で硬い感触同士が密着した。唇が解け、ギュッと抱きしめられる。た、勃ってる。俺は若干自覚あったけど瑛士君も? 

「……聞けって言ってんのに」

 不貞腐れた声で言われた。

「ごめん」
「背中の上でさかんなよ、生殺しか」
「っい、」

 見えてないのに、しっかりバレてて喉がキュウと鳴る。確かにもじもじしてたかも。それを腰の上でやられたら瑛士君も気になって仕方ないだろう。

「なぁ、剥いて良い?」

 ズボンに手をかけて問われ、挙動不審になりつつも了承する。剥くって言葉が的確だと思うくらいツルンとズボンが下ろされ、すぐに尻が剥き出しになった。前が引っ掛かって半ケツ状態なのが余計に恥ずかしくて、瑛士君の首に縋ってぎゅうぎゅう抱きつく。

「あ、無理だ。フィーちょっと立てれる? 一瞬だけ」
「自分で脱げる……から、その、エイジも……」
「ん、脱ぐ。さっきから痛ぇし」

 痛いとは……具体的にどの辺りが痛いか詳しく聞きたい所だけれど、そんな変態親父みたいな真似よりこっちも脱ぐのが先決だ。勢いよく立って、邪魔なズボンを脱ぎ去ってポイッと投げて座り直すと、尻に人肌が触れて大げさなまでにビクッとした。火傷しそうに熱く感じたのだ。

 しかも陰茎には未だかつて感じた事のない感触が。温くて硬いもの同士が、何だかそっと寄り添うようにそこにある。頭が沸騰しそうだった。抗いがたい吸引力に、ついそこを確認して「イケメン……!」と最初に思った。シュッとしたイケメンなのだ。自分のものとは全く違う。これはまるで……。

「王子様……」
「お前、どこ見て何言ってんの」

 俺のアホな発言なんて軽く受け流す瑛士君はライキを手に取り、左手を握り込んで陰茎の上で潰す。手のひらからトロリと滴る粘液がとにかくエロい。そして右手は拳のまま俺の背後に回った。

「握って良い? ……これ、たぶんやべーよ?」
「俺もそんな気がする。あ、待って」

 直前で日和った俺の制止を待たず、瑛士君の滑る手の中に俺の陰茎が包まれる。じわっと温かくて吸い付くような感触に先走りが漏れたのが分かった。回転するように塗りつけられるたび、ぴくぴく身体が小さく跳ねる。扱かれると尚更快感を強く感じた。

「んっ、ん……っくぅ」

 出したくもないのに子犬の鳴き声みたいなのが口から零れる。勝手に背中が丸まってしまうのを嫌って、瑛士君からしっかり手を回せって指示が飛ぶ。やたらとグチュグチュと水音が聞こえるのは、ライキより先端からひっきりなしに出てくる先走りのせいだろう。絶えず噴き出す割れ目に指の腹を添わせて、滑りながらスライドされると腰が抜けそうに気持ち良かった。

 瑛士君が俯きがちな俺の顔に、下から掬うようにして深く口付けてくる。舌の裏側や上顎をぬめった感触が撫でていき、瑛士君のと一緒に陰茎を扱かれる。今にもイきそうなのを必死に堪えた。

「ぅ、あっ……待って、イっちゃう」
「もうちょい我慢して」
「ん、んっ、無理かも……っ」

 キスを解いて、瑛士君の首元に額を擦りつけて耐える。さっきまで抱きつきたくて仕方なかった綺麗な背中にしがみ付いた時、俄かに後ろの方を撫でられる感触がした。

「――っあ、ん」

 後孔を濡れた指先で撫でられる。陰茎で感じる刺激の方が鮮烈なのに、後ろで感じる僅かな刺激を強く感じた。意志とは関係なく孔がひくつく。違和感を誤魔化すように陰茎を扱かれて、脳が混乱した。指先のほんの少しがツプツプと出し入れされて、トプッと陰茎からカウパーを吐き出す。

「っエイジ、……えいじくんっ、もぉ」
「ん、よく我慢したな。いっていいよ」
「あ、っん、あっあ――っく、あああ」

 瑛士君のとまとめて強く握り込まれ、一層激しく擦られる。後孔に指が深く差し込まれるのと同時に果てた。イってからも追い打ちかけるみたいに扱かれて、中の指を食い締める。瑛士君がイって、お腹まで精液が飛んできたのに少しびっくりした。
しおりを挟む
感想 18

あなたにおすすめの小説

《本編 完結 続編 完結》29歳、異世界人になっていました。日本に帰りたいのに、年下の英雄公爵に溺愛されています。

かざみはら まなか
BL
24歳の英雄公爵✕29歳の日本に帰りたい異世界転移した青年

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

転生したら嫌われ者No.01のザコキャラだった 〜引き篭もりニートは落ちぶれ王族に転生しました〜

隍沸喰(隍沸かゆ)
BL
引き篭もりニートの俺は大人にも子供にも人気の話題のゲーム『WoRLD oF SHiSUTo』の次回作を遂に手に入れたが、その直後に死亡してしまった。 目覚めたらその世界で最も嫌われ、前世でも嫌われ続けていたあの落ちぶれた元王族《ヴァントリア・オルテイル》になっていた。 同じ檻に入っていた子供を看病したのに殺されかけ、王である兄には冷たくされ…………それでもめげずに頑張ります! 俺を襲ったことで連れて行かれた子供を助けるために、まずは脱獄からだ! 重複投稿:小説家になろう(ムーンライトノベルズ) 注意: 残酷な描写あり 表紙は力不足な自作イラスト 誤字脱字が多いです! お気に入り・感想ありがとうございます。 皆さんありがとうございました! BLランキング1位(2021/8/1 20:02) HOTランキング15位(2021/8/1 20:02) 他サイト日間BLランキング2位(2019/2/21 20:00) ツンデレ、執着キャラ、おバカ主人公、魔法、主人公嫌われ→愛されです。 いらないと思いますが感想・ファンアート?などのSNSタグは #嫌01 です。私も宣伝や時々描くイラストに使っています。利用していただいて構いません!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

役目を終えた悪役令息は、第二の人生で呪われた冷徹公爵に見初められました

綺沙きさき(きさきさき)
BL
旧題:悪役令息の役目も終わったので第二の人生、歩ませていただきます 〜一年だけの契約結婚のはずがなぜか公爵様に溺愛されています〜 【元・悪役令息の溺愛セカンドライフ物語】 *真面目で紳士的だが少し天然気味のスパダリ系公爵✕元・悪役令息 「ダリル・コッド、君との婚約はこの場をもって破棄する!」 婚約者のアルフレッドの言葉に、ダリルは俯き、震える拳を握りしめた。 (……や、やっと、これで悪役令息の役目から開放される!) 悪役令息、ダリル・コッドは知っている。 この世界が、妹の書いたBL小説の世界だと……――。 ダリルには前世の記憶があり、自分がBL小説『薔薇色の君』に登場する悪役令息だということも理解している。 最初は悪役令息の言動に抵抗があり、穏便に婚約破棄の流れに持っていけないか奮闘していたダリルだが、物語と違った行動をする度に過去に飛ばされやり直しを強いられてしまう。 そのやり直しで弟を巻き込んでしまい彼を死なせてしまったダリルは、心を鬼にして悪役令息の役目をやり通すことを決めた。 そしてついに、婚約者のアルフレッドから婚約破棄を言い渡された……――。 (もうこれからは小説の展開なんか気にしないで自由に生きれるんだ……!) 学園追放&勘当され、晴れて自由の身となったダリルは、高額な給金につられ、呪われていると噂されるハウエル公爵家の使用人として働き始める。 そこで、顔の痣のせいで心を閉ざすハウエル家令息のカイルに気に入られ、さらには父親――ハウエル公爵家現当主であるカーティスと再婚してほしいとせがまれ、一年だけの契約結婚をすることになったのだが……―― 元・悪役令息が第二の人生で公爵様に溺愛されるお話です。

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

処理中です...