弱小種族の冒険譚

わっしー

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第二章

22.初めての敗北

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僕がゴブリンキングの元に着くとドロンさんが片膝をついていた。
「ドロンさん!」
「!?ポム!避けろ!!」
僕は反射的に後ろに飛ぶと今まで僕がいた場所が僕の身長より少し大きなこん棒によって凹んでいた。
『ほう・・・。我の攻撃を避けるか・・・。』
「えっ!?このゴブリン、喋る!?」
僕は驚いてゴブリンキングを見上げる。体長は4m近くありその体には大小さまざまな傷がついている。
「ドロンさん!援護します!」
僕はそう言ってゴブリンキングに突っ込んでいった。ゴブリンキングはその大きなこん棒を振りあげる。
「遅い!」
僕はゴブリンキングの脚に正拳突きを叩き込み小手のトリガーを引く。すると、小手から爪が飛び出しゴブリンキングの脚に突き刺さる。
『ほう・・・。まさか、爪をそんな風に使うものがいるとはな・・・。』
ゴブリンキングは大して痛そうにしておらずもう片方の手で僕を払おうとした。
「やばい!」
僕は急いで避けようとしたが爪がゴブリンキングの脚に刺さっていて避けられない。そのまま僕はゴブリンキングの手で後方に吹き飛ばされてしまう。
「くっ!「ウインド」!」
僕は咄嗟に魔法を唱えて後方に吹き飛ぶ勢いを殺す。しかし、それでも衝撃は凄かった。
「がっ!?」
僕はバウンドして一回転してから地面の上に転がっていた。
「ポム!」
ドロンさんの声に僕は何とか立とうとしたが腕に力が入らない。
『小さき者よ。ここで、お前の仲間がやられるのを見ているがいい・・・。』
そう言ってゴブリンキングはこん棒をドロンさんに振りかぶる。
「くそ・・・。「エイド」」
僕は回復魔法を唱えるがそれでもやはり起き上がるのは難しかった。そうしている間にもこん棒がドロンさんを襲う。
「ぐおぉ!!」
ドロンさんは咄嗟にこん棒に自分の斧を叩きつけた。しかし、拮抗することなくドロンさんは後方に飛ばされてしまう。
「ぐはぁ!!」
「ドロンさん・・・。」
僕は何とか立ち上がって拳を握る。
『ほう・・・。これだけ力の差を見せつけられてもまだ立ち上がるか、小さき者よ?』
「当たり前だ!まだ、仲間が戦っているんだ!こんな所で僕だけ寝てられない!」
『愚かな・・・。実に愚かだ!』
そう言ってゴブリンキングはまたこん棒を振り下ろす。僕は何とかそれを紙一重で避ける。
「愚かでも、やるしかないんだ!」
僕はこん棒を伝ってゴブリンキングの顔目掛けて爪を立てる。しかし、その爪はゴブリンキングの顔をかすめてしまう。
『狙いは良いが、早さが足りんな。』
そう言ってゴブリンキングは僕をまるでハエを払うかのように叩き落とす。
「ぐは!」
僕はそのまま地面に叩きつけられた。
『せめてもの情けだ・・・。これでおしまいにしてやろう。』
そう言ってゴブリンキングはこん棒を振りあげた。
「く・・・そ・・・ぅ。」
僕は身体を動かそうとするが力が入らない。意識もだんだんとはっきりしなくなってきた。
(こんな所で終わるのか・・・?何も成し遂げられていないのに・・・。)
「「アクアハンマー」!」
その時、ゴブリンキングの顔に水の塊が直撃する。
『ぬ?』
ゴブリンキングの視線が僕から逸れた。
「彼から離れなさい!」

「彼から離れなさい!」
わたくしは魔法を放つ。ゴブリンキングにさらに水の塊が殺到する。それをゴブリンキングは煩わしそうに片手で払いのける。
『ほう・・・。誰かと思えば我の精鋭と戦っていた女魔法使いではないか・・・。他の仲間はどうしたのだ?』
「すぐに追いつきますわ!それよりも・・・。」
わたくしは魔力を集める。
「彼から離れろと言っているでしょう!!」
わたくしは水の槍を形成して射出した。ゴブリンキングは持っていた、こん棒で水の槍を迎撃する。
『・・・ほう。これはなかなか強いな・・・。』
そう言ってゴブリンキングは少し後ろに下がった。
『なら、我も同じことをしよう・・・。』
そう言ってゴブリンキングは魔法を唱える。
『ファイアーランス』
すると、一本の炎の槍が形成されてわたくしに向けて射出された。
「「アクアランス」!」
わたくしはすぐに水の槍を射出して相殺する。
『ほら、休んでいる暇はないぞ?ゆっくりしていると骨の髄まで焼き尽くしてやるからな!』
そう言ってゴブリンキングはさらに炎の槍を形成する。そして射出する。
「くっ!?」
わたくしは何とか飛来してくる炎の槍を撃ち落としているが数が多い。
(数が多すぎる!全部を迎撃するのは不可能ね・・・。)
わたくしは自分に当たりそうな炎の槍だけ狙い撃つ。迎撃できなかった炎の槍はわたくしの後方で大きな音を立てて地面に刺さり辺りを燃やす。
「・・・ミネアさん。」
そんなわたくしにポムさんが声を掛ける。彼は何とか立とうとしている。
『ふむ・・・。なかなか粘るな・・・。なら、これでどうかね?』
そう言ってゴブリンキングは炎の槍を一つに集め始めた。そして、それは巨大な炎の槍になる。
『ボルカノンランス』
その槍がわたくしに射出された。わたくしはその場から急いで逃げた。全力に走ったがその巨大な炎の槍が地面に刺さるとものすごい爆発が起こり、衝撃波でわたくしは吹き飛ばされてしまった。
「・・・くっ。」
『ほう・・・。よく生きていたな。』
ゴブリンキングは感心したように言う。わたくしは杖を支えに何とか立ち上がる。吹き飛ばされた際に足を軽くひねってしまったようだ。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
わたくしはそれでも魔法を撃とうと魔力を集めて水の槍を形成しようとしたが水は槍の形になることなく地面に落ちてしまった。
『・・・魔力切れか。』
わたくしはその場に崩れ落ちる。
『まったく、哀れだな・・・。相手との力量を見極めることも出来ないで仲間を道連れに死ぬことになるのだから・・・。』
ゴブリンキングは少しずつ近づいて来る。
『せめてもの情けだ。この一撃で終わらせてやろう・・・。』
そう言ってゴブリンキングはこん棒を振りあげる。
「・・・おりゃ!!」
「はぁ!!」
そこに二人の影がわたくしの前に踊りでる。
「ドロン!ポムさん!」
「お嬢は逃げろ!ワイが時間を稼ぐ!」
「命に代えても守ります!」
二人はそれぞれの武器でこん棒を受け止めていた。
『この!死にぞこない共が!』
ゴブリンキングがイラついたようにこん棒に力を入れる。
「ぐぬ!?」
「うぅ!?」
二人の身体が地面にうまる。
「ドロン!ポムさん!」
「な・・・何のこれしき・・・。」
「・・・はい!まだやれます!」
そう言ってドロンとポムさんがこん棒を弾く。
『ぬ!?』
「ポム!合わせろ!!」
「はい!」
ドロンとポムさんは体勢を崩したゴブリンキングに体当たりした。そのまま二人はゴブリンキングとその場に倒れた。
『くそ・・・。これしきのことで・・・。』
「まだまだ!!」
ポムさんがゴブリンキングの右目に拳を叩き込む。
「食らえ!」
そして、カチッという音と共に拳から爪が出てゴブリンキングの目を貫く。
『ぐおぉ!!』
ゴブリンキングは目を抑えようと手をポムさんに近づける。
「ドロンさん!今の内にミネアさんと一緒に逃げて!」
「・・・でも!」
「このままじゃ、みんなやられる!僕がこいつの目を指している内に早く!」
「・・・スマン!」
そう言ってドロンはゴブリンキングから離れてわたくしの元に来る。
「お嬢!逃げますぜ!」
「でも、ポムさんが・・・。」
「アイツの決意を無駄にしちゃいけません!今は逃げることだけ考えてくだせい!」
そう言ってドロンはわたくしを担いで脱兎のごとく逃げるのだった。
「ポムさん!!!」
最後に見たのはポムさんがゴブリンキングに捕まるところだった。
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