弱小種族の冒険譚

わっしー

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第二章

27.悲しい再会

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僕達はすぐに戦闘準備を整える。村の人たちは避難所に避難してもらった。
「ポムさん。無理はしないでくださいね。」
「わかっています。」
僕は拳を合わせる。僕の横にはアランさん、ドロンさん、ボルドウさんがそれぞれの得物を構えていた。
後ろでは、ミネアさんが魔法を唱え、エレナさんも矢をつがえていた。
「「コキュートス・フィールド」!」
先頭で走っていたゴブリンは凍り付きそれが壁になる。そこにすかさずエレナさんが矢を放つ。
「「土角」!」
次の瞬間、エレナさんが放った矢の刺さった場所から土の棘がせり上がった。一つ一つは小さいが数が多い。その土の棘がゴブリンたちの足に突き刺さる。
ゴブリンたちはそのあまりの痛さに足を止める。その隙にエレナさんはさらに矢を放つ。その矢がゴブリンたちに突き刺さりその場に倒れる。
「ポム、行くぞ!」
「はい!」
僕はアランさんの言葉に頷きミネアさんとエレナさんでカバーできなかった地点に移動する。
近くでゴブリンたちを見るとその異様さに驚く。
(目の焦点が合ってない?まるで、何かに操られているような・・・。)
「ポム!ボーとしてるな!」
アランさんが目の前のゴブリンを剣で両断しながら僕に怒鳴る。
「すみません!」
今は考えるのは後だ。今は、こいつらをどうにかしないと・・・。
僕は槍を取り出し構える。その槍を正面のゴブリンに突き刺す。
「まずは、一匹!」
僕は素早く、槍をゴブリンの身体から引き抜き、そのゴブリンを踏み越えて襲ってくるゴブリンに突き刺す。
それを何度か繰り返すが、いくら突き刺してもゴブリンたちは途切れることなく襲ってくる。
僕はひたすらゴブリンを槍で突きさす。その時、ゴブリンの肋骨に槍が引っ掛かり抜けなくなった。
「くそ!」
僕は槍を引き抜くのをあきらめて槍を手放す。そして、僕の近くまで来ていたゴブリンを右ストレートでぶん殴り、小手のトリガーを引く。
小手から銅の爪が飛び出しゴブリンの顔を貫通する。そのゴブリンを刺したまま僕は反対に居たゴブリンにそのゴブリンごと叩きつける。
「はぁ・・・はぁ・・・。」
もう、どれくらいゴブリンを倒したのだろう?僕の小手はゴブリンの血で濡れていた。
「ポム!大丈夫か!?」
ドロンさんが声を掛けてくる。そう言うドロンさんもゴブリンの返り血で体を汚していた。
「大丈夫です。すこし、数が多くて疲れただけです。」
そう言って僕は向かってくるゴブリンを右前脚で蹴る。そして、倒れたところを爪で切り裂く。
「そうかよ!」
そう言ってドロンさんも斧でゴブリンを両断する。
「皆!気を付けて!ゴブリンキングが現れたよ!」
エレナさんが大きな声で報告する。僕は正面を向く。そこにはゴブリンキングがいた。ただ、その姿は以前とは違って一回り大きくなっていた。そして、ゴブリンキングの周りにはレッドキャップとブルーキャップが5体ずついた。
「あ・・・。」
僕は言葉を失う。そのブルーキャップの中にモリナさんがいた。
「モリナさん!」
僕はモリナさんに駆け寄ろうとする。しかし、それは炎によって阻まれた。それを放ったのはモリナさんだった。
「モリナさん!?何をするんですか!?」
僕はモリナさんに叫ぶがモリナさんは僕の言葉を無視して魔法を唱える。
「くっ!」
僕は後方に飛ぶ。その瞬間、僕のいた場所に火柱が上がる。その炎は確実に僕を焼き殺そうとする火力だった。
「どうしたんですか!?モリナさん!僕が分からないんですか!!」
僕がどんなに呼びかけてもモリナさんは一切反応しない。ただ、虚ろな目で見るだけだった。
「ポムさん!」
そう呼ばれた瞬間、モリナさんに水の塊が当たる。モリナさんはその勢いで後方に吹き飛ばされる。
「無事ですか!?」
「ミネアさん!」
ミネアさんが僕の方に走って来る。そして、ミネアさんと合流したところでモリナさんも立ち上がる。
「・・・「アクアハンマー」はあまり効いていないようですね。」
「そのようですね・・・。」
その時、レッドキャップが2体モリナさんを守るように立ちふさがる。
「ポムさん。あのゴブリンのことが気になるみたいですけど今は・・・。」
「わかってます。」
僕は拳を構える。
「まずは、こいつらを倒してからですよね?」
「ええ。」
僕は構える。その様子をモリナさんは虚ろな目で見ていた。
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