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第三章
32.騎士団長
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僕はエレナさんと共に村長の家に向かった。そこにはすでにミネアさんとアランさんがいた。その向かいにはフルプレートの騎士が一人座っていた。
「エレナ、ご苦労様。」
ミネアさんがそう言うとミネアさんはアランさんの隣に立つ。
「あの・・・。どうして、僕が呼ばれたのでしょうか?」
僕はミネアさんを見上げながら聞く。すると、ミネアさんは答えてくれる。
「ポムさんにはゴブリンキングについて話してほしいのです。最後まで戦ったのはポムさんとボルドウさんだけだから・・・。本当ならボルドウさんも居ればよかったのだけどあの人はもうこの村に居ないから・・・。」
ミネアさんが説明してくれる。
ちなみにボルドウさんは、「ミルラ村」を1週間前に旅立った。一緒に旅をしようというミネアさんの提案に首を振り、
「俺は一人の方が気楽でいい。」
といってそのまま別れた。
「そうですか・・・。分かりました。」
そして、僕はあの時のゴブリンキングとの戦いのことを話す。
「僕とボルドウさんで「狂化の宝石」というマジックアイテムを付けられたゴブリンキングと対峙しました。「狂化の宝石」により自我を失って暴れるゴブリンキングに対して僕は最初に「狂化の宝石」を破壊しました。」
「ほう・・・。「狂化の宝石」を破壊したのはなぜなのかね?」
そのフルプレートの騎士は聞いて来る。案外穏やかな声をしていた。
「それは、ゴブリンキングと戦う前に一人のホブゴブリンと戦闘になった際に彼女の付けていた「狂化の宝石」を破壊したところ無力化に成功したためです。」
「なるほど・・・。「狂化の宝石」は破壊すれば相手を無力化できるということか?」
そう聞かれて僕は首を振る。
「残念ながら逆でした。ゴブリンキングの「狂化の宝石」を破壊したところ魔力や身体の体積が倍になりました。そして、完全に理性を失い化け物になりました。」
騎士は黙って聞いていた。
「そのホブゴブリン以外は全員、狂化の宝石を破壊したら化け物になってしまいました。結局、無力化出来たのはそのホブゴブリンのみでした。」
「・・・そうか。」
騎士は頷く。
「貴重な話を聞かせてくれて感謝する。実のところ、今、帝国ではその「狂化の宝石」を付けた兵士が魔族と戦っているという報告を受けていて情報が欲しいところだったんだ。」
「帝国でアレが使われているのですか?」
「ああ。その効力はすさまじい物みたいだが君の話では危険な品物みたいだな・・・。これはすぐにでも陛下に報告せねばならないな。」
「その事ですが、私たちが陛下に報告しましょう。」
そう言いだしたのはミネアさんだった。
「ランバルド殿・・・。申し出はうれしいが貴公は領土に戻らなくてはいけないのではないのか?」
「心配はいりませんわ。それに、陛下にはお願いしたいこともありますので、その時に一緒にお話しますわ。」
「そうか・・・。では、ランバルド殿、よろしく頼む。」
そう言って騎士は頭を下げる。そこにポミュがコーヒーを持ってくる。
「お父様、いつまで兜をしているのですか?部屋の中では取ってください。」
ポミュは目の前の騎士をお父様と呼ぶ。僕は騎士を見た。
「これはすまない、ポミュ。」
そう言って兜を外す騎士改めポミュのお父様。
「自己紹介が遅れたな。私はスラート王国騎士団長、アーガス・ホートマスだ。いつも娘たちが世話になっているな。」
そう言ってアーガスさんが微笑む。そこにトコトコとポポが寄って来る。
「お父さん!」
「おお!ポポか!しばらく見ないうちに大きくなったな!」
そう言ってアーガスさんはポポを抱き上げる。ポポも嬉しそうに甘えていた。
「ところで、君がポム君かね?」
「はい。」
そう返事をすると、アーガスさんはしばらく僕を値踏みするように見た後、一つ頷く。
「うむ!良い目をしている!どうだ?私の家に婿に来ないか?」
「え?」
「お父様!?」
「ポミュももう年ごろ・・・。そろそろ、結婚も考えないといけないからな・・・。それに手紙にいつも出てくるポム君のことも気になっていたし。」
「お父様!!」
ポミュは顔を真っ赤にしてアーガスさんを睨む。その視線にアーガスさんは少しビビっていた。
「それ以上、余計なことを言うようならもうお父様とは呼びません。」
「す・・・すまない!ポミュ!機嫌を直してくれ!!」
ポミュよりも倍以上の背丈のアーガスさんが首を垂れる。何というかこの家族の力関係を見た気がする。
僕は顔を赤くしているポミュに視線を移すとポミュはさらに真っ赤になってうつむいてしまう。
「あの・・・。父の行ったことは忘れてください・・・。あれは、父の冗談ですから・・・。」
「いや・・・。私は冗談を言っては・・・。」
そう言うアーガスさんにポミュは睨みつける。
「なんでもないです・・・。」
アーガスさんは口を閉じる。
「では、翌日私たちは王都スラートに向けて出発します。今日の内に引継ぎを済ませるわよ。」
ミネアさんのその一言で僕たちは王都、「スラート」に向けて準備をすることになった。
「エレナ、ご苦労様。」
ミネアさんがそう言うとミネアさんはアランさんの隣に立つ。
「あの・・・。どうして、僕が呼ばれたのでしょうか?」
僕はミネアさんを見上げながら聞く。すると、ミネアさんは答えてくれる。
「ポムさんにはゴブリンキングについて話してほしいのです。最後まで戦ったのはポムさんとボルドウさんだけだから・・・。本当ならボルドウさんも居ればよかったのだけどあの人はもうこの村に居ないから・・・。」
ミネアさんが説明してくれる。
ちなみにボルドウさんは、「ミルラ村」を1週間前に旅立った。一緒に旅をしようというミネアさんの提案に首を振り、
「俺は一人の方が気楽でいい。」
といってそのまま別れた。
「そうですか・・・。分かりました。」
そして、僕はあの時のゴブリンキングとの戦いのことを話す。
「僕とボルドウさんで「狂化の宝石」というマジックアイテムを付けられたゴブリンキングと対峙しました。「狂化の宝石」により自我を失って暴れるゴブリンキングに対して僕は最初に「狂化の宝石」を破壊しました。」
「ほう・・・。「狂化の宝石」を破壊したのはなぜなのかね?」
そのフルプレートの騎士は聞いて来る。案外穏やかな声をしていた。
「それは、ゴブリンキングと戦う前に一人のホブゴブリンと戦闘になった際に彼女の付けていた「狂化の宝石」を破壊したところ無力化に成功したためです。」
「なるほど・・・。「狂化の宝石」は破壊すれば相手を無力化できるということか?」
そう聞かれて僕は首を振る。
「残念ながら逆でした。ゴブリンキングの「狂化の宝石」を破壊したところ魔力や身体の体積が倍になりました。そして、完全に理性を失い化け物になりました。」
騎士は黙って聞いていた。
「そのホブゴブリン以外は全員、狂化の宝石を破壊したら化け物になってしまいました。結局、無力化出来たのはそのホブゴブリンのみでした。」
「・・・そうか。」
騎士は頷く。
「貴重な話を聞かせてくれて感謝する。実のところ、今、帝国ではその「狂化の宝石」を付けた兵士が魔族と戦っているという報告を受けていて情報が欲しいところだったんだ。」
「帝国でアレが使われているのですか?」
「ああ。その効力はすさまじい物みたいだが君の話では危険な品物みたいだな・・・。これはすぐにでも陛下に報告せねばならないな。」
「その事ですが、私たちが陛下に報告しましょう。」
そう言いだしたのはミネアさんだった。
「ランバルド殿・・・。申し出はうれしいが貴公は領土に戻らなくてはいけないのではないのか?」
「心配はいりませんわ。それに、陛下にはお願いしたいこともありますので、その時に一緒にお話しますわ。」
「そうか・・・。では、ランバルド殿、よろしく頼む。」
そう言って騎士は頭を下げる。そこにポミュがコーヒーを持ってくる。
「お父様、いつまで兜をしているのですか?部屋の中では取ってください。」
ポミュは目の前の騎士をお父様と呼ぶ。僕は騎士を見た。
「これはすまない、ポミュ。」
そう言って兜を外す騎士改めポミュのお父様。
「自己紹介が遅れたな。私はスラート王国騎士団長、アーガス・ホートマスだ。いつも娘たちが世話になっているな。」
そう言ってアーガスさんが微笑む。そこにトコトコとポポが寄って来る。
「お父さん!」
「おお!ポポか!しばらく見ないうちに大きくなったな!」
そう言ってアーガスさんはポポを抱き上げる。ポポも嬉しそうに甘えていた。
「ところで、君がポム君かね?」
「はい。」
そう返事をすると、アーガスさんはしばらく僕を値踏みするように見た後、一つ頷く。
「うむ!良い目をしている!どうだ?私の家に婿に来ないか?」
「え?」
「お父様!?」
「ポミュももう年ごろ・・・。そろそろ、結婚も考えないといけないからな・・・。それに手紙にいつも出てくるポム君のことも気になっていたし。」
「お父様!!」
ポミュは顔を真っ赤にしてアーガスさんを睨む。その視線にアーガスさんは少しビビっていた。
「それ以上、余計なことを言うようならもうお父様とは呼びません。」
「す・・・すまない!ポミュ!機嫌を直してくれ!!」
ポミュよりも倍以上の背丈のアーガスさんが首を垂れる。何というかこの家族の力関係を見た気がする。
僕は顔を赤くしているポミュに視線を移すとポミュはさらに真っ赤になってうつむいてしまう。
「あの・・・。父の行ったことは忘れてください・・・。あれは、父の冗談ですから・・・。」
「いや・・・。私は冗談を言っては・・・。」
そう言うアーガスさんにポミュは睨みつける。
「なんでもないです・・・。」
アーガスさんは口を閉じる。
「では、翌日私たちは王都スラートに向けて出発します。今日の内に引継ぎを済ませるわよ。」
ミネアさんのその一言で僕たちは王都、「スラート」に向けて準備をすることになった。
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