「脇役人生」の冒険譚

わっしー

文字の大きさ
1 / 3

0.僕という存在

僕はゲームをする時、主人公が他にいるものを選ぶ。
例えば、TRPG(タクティクス・RPG)などでは自分の名前を主人公の方に入れずにあとで雇えるキャラ、メイキングキャラに自分の名前を入力してまるで主人公の仲間の一人のように物語を楽しむ。
そう、僕は主人公になりたいわけじゃない。主人公をどんな時でも最後に支える、メインキャラでも敵役でもないその他大勢になりたかった。僕はそんなスタンスで現実もやってきた。現実では兄が主人公だった。そして、僕はその後をついていく。継承者になりたいわけではない。僕は兄のように勉強が出来るわけでもない。妹のようにこれといった特技もない。なので、僕はそこで思い知らされるのだ。「ああ・・・。やっぱり僕は脇役なんだ・・・。」と。
「人は人生という名の舞台では等しく主人公だ。」と嘯く奴がいる。まあ、正解だろう。ある面においては・・・。
例えば、俳優や女優、社長などといった人はそう言う風に考えるだろう。ああいう職業は少なからず自分が特別だと思わないとまず目指さないものだ。それが例え、卵や一生芽吹かない種だとしても・・・。そういう人たちは自分を主人公だと思っている。だから頑張れる。自分のために自分を支える周りのために・・・。
では、僕はどうか?僕は人生という舞台にはやはり役がきまっていると思っている。そして、僕の役は脇役だと意識している。主人公の兄の弟。主人公の妹の兄。そして、その両方を引き立てるだけの存在自分。
一時、考えたこともあった「自分は脇役じゃない。主人公になるんだ!」・・・と。
そのために兄が持っていない資格を取った。兄が途中でやめたものを続けた。兄とは違う選択肢を選んだ。
でも、結局は何もかも無駄だと悟った。主人公だと思っていた兄も妹も世間的に見れば脇役だったのだ。じゃあ、その脇役である脇役の自分は?その時、思い知らされたのだ。「人は人生という名の舞台では等しく主人公だ。」しかし、他の誰かの人生では脇役なんだ。しかし、それを跳ね除けるほどの魅力がない限りそれには気が付かない。そして、世間という名の舞台では配役はきまっている。その中で「私は主人公だ!」と言える人はどれほどいるのだろうか?
きっと一握りの人間だ。だから、人は代替案を考える。「人生という名の舞台の主人公になれないなら物語の中、ゲームの中でだけでも主人公の気分を味わおう」と・・・。
それは、人それぞれだろう。ドラマのヒーロー、ヒロインに自分を投影させる者。物語の主人公を自分に置き換える者。僕が最も手っ取り早く考えるのはゲームの主人公の名前を自分の名前にすることだ。
そうして、自分を守る人もいる。そして、「世間」という舞台では脇役だが「空想」の世界では皆、主人公になれる。これを考えた人はきっと僕と同じような考えを持っていると思う。そして、満たされる人も大勢いるだろう。でも、中には満たされない人もいる。僕のように・・・。僕はその空想の中でも主人公の名前を変えない。主人公が決まっていなければ空想の主人公を作って自分は脇役になる。それも出来なければ、自分とは違う名前で参加する。そうして、自分というものは必ず、脇役と位置付けてきた。それでよいと思っていた。今でも思っている。そうやって死んでいくのだと確信した。
そして、僕は今日この日、この世界を去った・・・。享年25歳。事故死だった・・・。

「目が覚めたか?」
僕が目を開けるとそこには少女がいた。髪は銀髪のロングヘア。整った顔立ちをしている。
「貴様は覚えておるのか?貴様の最後を?」
僕は少し思い出す。あれは原付に乗っていた時のことだ、信号無視をしたトラックに衝突して、僕は痛みを抱えながら死んで行った・・・。
「理解できたようだな。喜べ、貴様は最後の最後で悲劇の主人公になったぞ。ほれ?」
そう尊大な言葉遣いをする少女は新聞を渡す。その日の一面ではなく小さい欄に僕の名前と事故があったことが記されていた。僕は笑ってしまった。最後の最後まで、「世間」では僕は脇役のようだ。
「そう悲観するでない。お前はお前という「コミュニティ」の中では悲劇の主人公として今葬式を行われておるぞ。ほれ。」
そう言って少女は何もない空間から映像を見せる。そこには僕の葬式の様子が映し出されている。親、兄妹、従兄妹、祖母、叔母、職場の上司や同僚、幼稚園からの幼馴染(男)。こうしてみると、僕は意外と人脈があったんだな・・・。
「ほれ、お前は最後の最後で主役になった。よかったな。自分では諦めていた主役というものに最後には成れたのだから。」
それが、自分の死というのは笑える。悲劇の主人公?本当に笑える。僕はこんなものになりたかったわけではない。こんな最後になるくらいなら主人公になんかならなければ良かった!!
「ふむ・・・。不満か?しかし、お主はまだ幸せな方じゃぞ?中には最後まで脇役として最後を終える者もいる。中には舞台に上がる前に退場させられるものが居るのだぞ?」
それがどうした!僕はこんな、最後を望んでいたのではない!!脇役でもよかった!細々と少しの幸せと少しのお金があればよかった。別に長生きをしたかったわけじゃない。ただ天命があるのならそれに従って死にたかった!!こんな幕引きはあんまりだ!!!
「ふむ・・・。お主も存外我侭じゃのう・・・。あい、分かった。なら、お主にチャンスをやろう。この世界にはお主を戻すことは残念ながら出来ぬ。「真理」たる我は何事にも平等でなくてはの。」
「真理」?この子は何を言っているんだ?それよりチャンスとは何だ?
「喜べ、人間。お前には選択肢を与えよう。3つの選択肢じゃ。一つは王道に生きる主人公。一つは覇道に生きる覇王。そして最後に平凡だがとある事情で大きな騒乱に巻き込まれる一般庶民。さあ、選ぶがいい。」
そう言って少女は僕に選択肢を突きつけた。王道の主人公?覇道に生きる覇王?平凡だがとある事情で騒乱に巻き込まれる一般庶民?どう違うんだ?どれも等しく面倒くさそうなものばかりではないか?
「ふむ・・・。不満か?しかし、我はこれでも寛大なのだよ。本来なら、選択肢の有無を与えずにその「人生」に放り込むところを、選ばせてやっとるんだ。ほれ、さっさと選ばぬか?」
そうは言っても内容がわからないんじゃ・・・。概要くらい教えてくれないか?
「仕方ないの・・・。じゃあ、一回だけ大まかに説明してやる。その耳をかっぽじってよく聞くがよい!」
そう言って少女は説明を始める。
「まずは、王道に生きる主人公。この「人生」ではとある農村で強大な魔力を宿した英雄が誕生する。そして、将来は覇王と世界を掛けて戦う。といったところかの?勝敗は言わぬぞ。そんなことしたら面白くないからの。」
少女の説明は続く。
「次に、覇道に生きる覇王。この「人生」はある王族に生まれた王女だ。その王女は武芸に秀でて強力なカリスマを持っている。そして将来は王道に生きる主人公と戦うことになる。」
つまりは、同じ世界。同じ世界軸に存在する者ということか?
「ほう。それくらい理解できる頭があるのか?」
ほっとけ!
「最後に、平凡だがとある事情で大きな騒乱に巻き込まれる一般庶民。ふむ、字数的には他の二つよりも多いの?」
そんなことはいいから説明をしてくれ!
「わかった、わかった。この「人生」ではとある農村で生まれたごく平凡なごく普通の農民じゃ。だが、あらゆるトラブルに巻き込まれる。しかし、この人生では前世の記憶が引き継がれる。そうじゃのう・・・。名前やお前が経験した物事については持ち越し不可だが経験は知識となってお主に引き継がれる。まあ、それがこの「人生」でトラブルに巻き込まれる種なのじゃがな。」
そう言って少女が笑い出す。・・・。どれも、面倒くさい人生じゃないか!!なんなんだよこのラインナップは!!
「お主は自分の最後に不満があるのじゃろ?我がわざわざ忙しい時間を割いて考えてやった「人生」なのじゃ。少しは我を楽しませてもらわないと面白くない。」
ふざけるな!僕はお前を楽しませるための道具じゃない!!
「はあ・・・。本当に我侭な人間じゃのう・・・。しかし、「真理」である我が下した結果じゃ。甘んじて受けるがよい。」
変更は無理なのか?
「無理じゃ。ほれ、さっさと選べ。後が閊えておる。我は忙しいのじゃ。」
僕はため息を吐く。どの人生を選んでも面倒くさそうだ。しかも、その内の二択はとても「脇役人生」を生きてきた僕には荷が重そうだ。なあ、3番目の選択肢を選ぶとどれだけの人を助けられるんだ?
「それは、お主次第じゃな。1番と2番はどちらも多くの人間を生かす。同時に多くのものを殺すであろう。しかし、3番目は選択によっては1番と2番が救えなかった命を救うことが出来るやもしれぬ。」
・・・わかった。僕は3番目の選択肢を選ぶよ。
「ほう、理由を聞かせてみよ?」
理由は2つ。僕には1番も2番も荷が重すぎる。「脇役人生」を生きてきたからな。それが一つ。もう一つは1番と2番では多くの犠牲者が出るといったな?
「そうじゃ。」
なら、僕がそれを変えて見せる。どんなトラブルか知らないが救える命があるのなら僕はそれに掛けたい。
「何故じゃ?お主は面倒くさいことは嫌いなのだろ?」
ああ。でも、僕は「脇役人生」にはふさわしくない夢を抱いていたんだよ。
「ほう?どんなものか教えてみよ。」
僕は世界の困っている人を助けたい。そんな夢を中学の時に持っていた。あの頃は兄や可能性のある妹に焦っていたんだろうな。でも、この夢だけは色あせることなく僕の心に残っていた。だから、僕は1番と2番が出来なかったことをして見せる。それぐらいの野心は持ってもいいだろう?
「ふむ。面白い!なら、やって見せよ!「脇役人生」でどれほどのものを助けられるか。」
ああ。じゃあ、手続きを頼む。
「うむ。心得た。では、その門をくぐるがいい。」
そう言って少女は一番右端の扉を指さす。僕はそこに向かって歩き出した。そして、門が開き僕は進む。新たな「人生」を・・・・。
感想 0

あなたにおすすめの小説

『病弱な幼馴染を優先してください』と言った妻が消えた翌日、夫は領地の会計書類が全て白紙になっていることに気づいた

歩人
ファンタジー
侯爵家に嫁いで五年。ルチアは夫エミルの領地会計・社交・使用人管理を全て一人で担ってきた。だがエミルはいつも幼馴染のアリーチェを優先する。「アリーチェは体が弱いんだ、お前とは違う」——その言葉を百回聞いた日、ルチアは微笑んで離縁届に署名した。「ええ、私は丈夫ですから。どうぞ幼馴染様をお大事に」。翌朝、エミルが目にしたのは——税務報告の締切、領民からの陳情の山、そして紅茶の淹れ方すら知らない自分。三ヶ月後、かつて「地味な妻」と呼ばれたルチアは、辺境伯の財務顧問として辣腕を振るっていた。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

醜悪令息レオンの婚約

オータム
ファンタジー
醜悪な外見ゆえに誰からも恐れられ、避けられてきたレオン。 ある日、彼は自分が前世で遊んでいたシミュレーションRPGの世界に転生しており、 しかも“破滅が確定している悪役令嬢の弟”として生きていることに気付く。 このままでは、姉が理不尽な運命に呑まれてしまう。 怪しまれ、言葉を信じてもらえなくとも、レオンはただ一人、未来を変えるために立ち上がる――。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。 5/14 その後の話を追加しました。

いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持

空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。 その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。 ※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。 ※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

悪役令嬢、休職致します

碧井 汐桜香
ファンタジー
そのキツい目つきと高飛車な言動から悪役令嬢として中傷されるサーシャ・ツンドール公爵令嬢。王太子殿下の婚約者候補として、他の婚約者候補の妨害をするように父に言われて、実行しているのも一因だろう。 しかし、ある日突然身体が動かなくなり、母のいる領地で療養することに。 作中、主人公が精神を病む描写があります。ご注意ください。 作品内に登場する医療行為や病気、治療などは創作です。作者は医療従事者ではありません。実際の症状や治療に関する判断は、必ず医師など専門家にご相談ください。