物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。

文字の大きさ
6 / 34

6

しおりを挟む
公爵家に来て一週間。
セレナの生活は、
静かに、しかし確実に変わっていた。

肌は明るさを取り戻し、
髪は艶を帯び、
表情は柔らかくなった。

ミーナは毎朝、
セレナの髪を梳かしながら微笑む。

「セレナ様、本当に綺麗になられましたね」

セレナは照れたように首を振る。

「そ、そんな……
 わたしなんて……」

「いいえ。
 “本来の姿”が戻ってきただけです」

ミーナの言葉に、
胸がじんと温かくなる。



その日の午後。
レオンがセレナの部屋を訪れた。

「セレナ。
 今夜、社交界の集まりがある。
 あなたにも来てほしい」

セレナは驚いた。

「わ、わたしが……?
 でも……ドレスも……」

レオンは微笑んだ。

「用意してある。
 あなたのために仕立てたものだ」

セレナの胸が跳ねる。

(……わたしの……ために……?)



夕方。
セレナの部屋には侍女たちが集まり、
まるで宝石を磨くように
丁寧に彼女を仕上げていく。

髪はゆるく編み込み、
光を受けて柔らかく輝く。

肌は薄く化粧を施され、
もともとの美しさが際立つ。

そして――
ミーナがドレスを広げた。

淡い青のドレス。
光の角度で銀色に輝く、
繊細な刺繍が施されている。

「セレナ様。
 これが、あなたのドレスです」

セレナは息を呑んだ。

(……綺麗……
 こんなドレス……着たことない……)

袖を通すと、
身体にぴたりと合い、
まるで“セレナのために生まれた”ようだった。

ミーナは満足げに頷く。

「これで完璧です。
 セレナ様は……本当に美しい」

セレナは鏡を見て、
思わず手を口元に当てた。

(……これ……わたし……?)

そこに映っていたのは、
かつて物置部屋に閉じ込められていた少女ではなく――
社交界に咲く一輪の花だった。




廊下で待っていたレオンは、
セレナを見た瞬間、
完全に言葉を失った。

「……セレナ……?」

セレナは不安そうに裾をつまむ。

「へ、変じゃ……ありませんか……?」

レオンはゆっくりと近づき、
その瞳に深い感情を宿した。

「変なはずがない。
 あなたは……
 誰よりも美しい」

セレナの頬が熱くなる。

レオンは手を差し出した。

「行こう。
 あなたを皆に紹介したい」

セレナはその手を取った。



会場に入った瞬間、
ざわめきが広がった。

「誰……あの人……?」
「ヴァルター公爵の隣にいるのは……?」
「見たことない……でも、すごく綺麗……」

セレナは戸惑い、
レオンの腕にそっと力を込めた。

レオンは優しく囁く。

「大丈夫。
 あなたは堂々としていればいい」

その声に、
セレナの緊張が少しほどけた。


そして――
会場の奥で、
見覚えのある顔が固まった。

義妹リリア。

豪華なドレスを着ているが、
セレナの美しさの前では
その輝きが霞んで見える。

リリアは震える声で呟いた。

「……嘘……
 なんで……
 なんでお姉様が……
 こんな……」

継母も青ざめていた。

「ありえない……
 あの子が……こんな姿に……?」

レオンは冷たい目で二人を見た。

「セレナは……
 最初から美しかった。
 あなた方が、それを奪っていただけだ」

リリアは唇を噛み、
嫉妬で震えた。



人々がセレナに視線を向けるたび、
レオンはさりげなく彼女の腰に手を添えた。

「……レオン様……?」

「あなたが誰かに奪われるのは……
 考えたくない」

その低い声に、
セレナの心臓が跳ねた。

(……こんなふうに……
 誰かに想われるなんて……)

レオンは微笑む。

「セレナ。
 あなたは……私の誇りだ」

その言葉は、
セレナの胸に深く刻まれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

【完結】6人目の娘として生まれました。目立たない伯爵令嬢なのに、なぜかイケメン公爵が離れない

朝日みらい
恋愛
エリーナは、伯爵家の6人目の娘として生まれましたが、幸せではありませんでした。彼女は両親からも兄姉からも無視されていました。それに才能も兄姉と比べると特に特別なところがなかったのです。そんな孤独な彼女の前に現れたのが、公爵家のヴィクトールでした。彼女のそばに支えて励ましてくれるのです。エリーナはヴィクトールに何かとほめられながら、自分の力を信じて幸せをつかむ物語です。

[完結]気付いたらザマァしてました(お姉ちゃんと遊んでた日常報告してただけなのに)

みちこ
恋愛
お姉ちゃんの婚約者と知らないお姉さんに、大好きなお姉ちゃんとの日常を報告してただけなのにザマァしてたらしいです 顔文字があるけどウザかったらすみません

王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。

しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。 相手は10歳年上の公爵ユーグンド。 昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。 しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。 それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。 実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。 国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。 無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。  

幼い頃、義母に酸で顔を焼かれた公爵令嬢は、それでも愛してくれた王太子が冤罪で追放されたので、ついていくことにしました。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 設定はゆるくなっています、気になる方は最初から読まないでください。 ウィンターレン公爵家令嬢ジェミーは、幼い頃に義母のアイラに酸で顔を焼かれてしまった。何とか命は助かったものの、とても社交界にデビューできるような顔ではなかった。だが不屈の精神力と仮面をつける事で、社交界にデビューを果たした。そんなジェミーを、心優しく人の本質を見抜ける王太子レオナルドが見初めた。王太子はジェミーを婚約者に選び、幸せな家庭を築くかに思われたが、王位を狙う邪悪な弟に冤罪を着せられ追放刑にされてしまった。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

公爵家の家政を10年回した私が出ていったら、3ヶ月で領地が破綻しました

歩人
ファンタジー
エレナは公爵家に嫁いで10年、夫は愛人に入れ込み、義母には「家政婦代わり」と 罵られた。だが領地の財務も、商会との交渉も、使用人の管理も、全部エレナが やっていた。ある日、義母から「あなたの代わりなんていくらでもいる」と言われ、 エレナは静かに離縁届を出した。「では、代わりの方にお任せください」 辺境の町で小さな商会を開いたエレナ。10年間の実務経験は伊達ではなかった。 商会はたちまち繁盛する。一方、エレナがいなくなった公爵家は3ヶ月で経営破綻。 元夫が「戻ってこい」と泣きつくが—— 「お断りです。あと、10年分の未払い給金を請求いたしますね」

置き去りにされた転生シンママはご落胤を秘かに育てるも、モトサヤはご容赦のほどを 

青の雀
恋愛
シンママから玉の輿婚へ 学生時代から付き合っていた王太子のレオンハルト・バルセロナ殿下に、ある日突然、旅先で置き去りにされてしまう。 お忍び旅行で来ていたので、誰も二人の居場所を知らなく、両親のどちらかが亡くなった時にしか発動しないはずの「血の呪縛」魔法を使われた。 お腹には、殿下との子供を宿しているというのに、政略結婚をするため、バレンシア・セレナーデ公爵令嬢が邪魔になったという理由だけで、あっけなく捨てられてしまったのだ。 レオンハルトは当初、バレンシアを置き去りにする意図はなく、すぐに戻ってくるつもりでいた。 でも、王都に戻ったレオンハルトは、そのまま結婚式を挙げさせられることになる。 お相手は隣国の王女アレキサンドラ。 アレキサンドラとレオンハルトは、形式の上だけの夫婦となるが、レオンハルトには心の妻であるバレンシアがいるので、指1本アレキサンドラに触れることはない。 バレンシアガ置き去りにされて、2年が経った頃、白い結婚に不満をあらわにしたアレキサンドラは、ついに、バレンシアとその王子の存在に気付き、ご落胤である王子を手に入れようと画策するが、どれも失敗に終わってしまう。 バレンシアは、前世、京都の餅菓子屋の一人娘として、シンママをしながら子供を育てた経験があり、今世もパティシエとしての腕を生かし、パンに製菓を売り歩く行商になり、王子を育てていく。 せっかくなので、家庭でできる餅菓子レシピを載せることにしました

処理中です...