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ドラン王国編
王子と人魚姫の恋
しおりを挟む「ケヴィン王子お下がりください!この数では守りきれません!」
「民の後ろに隠れる王がいるか!私が次の王になった時にお前たちがいなくてはこうしてたまに海に出ることすらできなくなってしまうではないか!」
私は船に乗り、隣の大陸の調査に向かっていると大量のサハギンが船を襲ってきた。
「危ない!」
乗組員の一人を咄嗟に庇ってしまい深い傷と共に私は海に落ちた。船がどんどん離れていく……私はここで何もなせずに死ぬのか……。
「……目を……けて。」
なんだ……女の声?船はどうなった?私は死んだのか?
「目を開けて!」
「っけほっげほ」
目を開けるとそこには私の見たことがない世界が広がっていた。
「渡れたのか……すまない、助かった。私の名前はケヴィン・ドランだ。君は……何故岩に上がらないんだ?」
「別にいいでしょ!助かったんなら私はもう行くわね!」
「まぁそう言うな、陸に上がってお礼させてく……重っ!!」
「失礼ね!しょうがないでしょそういう体なんだから!」
「君は……マーメイドなのか?そうか!君がマーメイドか!初めて見たよ!少し話を聞かせてくれないか?」
この頃の人間に海の生き物に嫌悪感を抱くものはいなかった、私は好奇心が旺盛だったこともあり。目の前の美しいマーメイドに目を奪わてしまっていた。
「あなた変わってるのね……私、あなたに話さなきゃいけないことがあるの!」
「なんだ?愛の告白か?」
「違うわ!真面目な話なの。あなたを見つけて陸に引き上げたのだけれど、あなたの魔力が消えかけていたの。」
人間から魔力が亡くなるとは死ぬということ。息をしなくなっても魔力は少しの間残り続ける、となると本当に死ぬ寸前だったのであろう。
「……改めてこの命救っていただきありがとうございます。このお礼は国に帰ったら必ずさせていただきます。」
「違うの!私、消えかけた魔力を戻すために私の血に魔力を込めてあなたの体に流したの!」
言われてみると体に力がみなぎっている。
「それの何が問題なんだ?」
「私たちマーメイドは莫大な魔力が込められている水中で暮らすうちに人間の数百倍の魔力を手に入れてしまったの。その一欠片とはいえ魔力を人間の体に流したのだから何かしらの副作用が起きてしまうかもしれないの。」
「考えすぎなんじゃないか?なんなら溺れる前より体が軽いぞ。ほら!」
私は不安そうな彼女の前でバク宙をして元気であると証明して見せた。
「あなたは魔力のことを何もわかっていないわ。あなたの中で作られる魔力は魔法に使うことができるけど、空気や食事など取り込むことで得る魔力は体を作るための魔力なの。」
「つまりどういうことだ?」
「あなたは一生分の空気や食事を摂取することで生まれる魔力を私の血のせいで一度にとってしまったの……死なせたくなかったあまり軽率な行動をとってしまったわ、ごめんなさい。」
「……よく分からんが分かった!君のおかけでこの命が救われたことには違いないだろ?もしこの体にどんな副作用が起ころうとも私は君を恨んだりしないよ。」
「……ありがとう。」
彼女が落ち着きを取り戻したのを確認して俺は質問攻めにした。どんな生活をしているのか、何を食べるのか、どうやって産まれるのか。
「あなた本当に変わってるのね。」
彼女の初めて見せてくれた笑顔に俺は心を奪われた。
「なぁそういえばまだ君の名前を聞いていなかったな。」
「私?そういえば教えてなかったわね。私の名前はレティシア・サンテール。海の中に沈んだサンテール王国のこれでもお姫様なの。」
「そうかレティシア……では改めて私も自己紹介をさせていいだこう。私はドラン王国、第二王子のケヴィン・ドランだ。」
「王子様だったのね!でも国民もこんな王子様じゃ大変ね!」
「違いないな……現に私のわがままで船に乗っていた二十人の乗組員の命を奪ってしまった。」
「……ケヴィンごめんなさい、私そんなつもりじゃ……」
「おーい、ケヴィン王子~」
「生きていたのか!よかった……。」
「……それじゃあ私行くわね。」
「待ってくれ、お礼をさせてくれないか?」
「必要ないわ、それに私の姿を見たら普通の人なら不気味に見えてしまうと思うし。」
「そんなことは……わかった!その代わり、もし次に会えた時はお礼させてくれ!」
「えぇ楽しみにしてるわ。」
俺はレティシアと別れ。船の仲間に無事隣の大陸にたどり着いたことを城に伝えるよう頼み、初めの目的の大陸の調査を一人で行った。大陸には我々の大陸と同じ種族もいれば見たことの無いケンタウロスなどの種族とも出会った。
多種多様な種族と出会い、上手くいかない時もあったが最終的には仲良くなり、隣の大陸に来てから五年と半年ようやく元いた大陸に帰る日がきた。
「やっぱりレティシアはいないか……。」
初めの海につきレティシアを探すが当然レティシアの姿はなかった。
「出航の準備整いました!」
「わかった今行く。」
現地で会った人達に俺がいた大陸の話をすると興味を示してくれて俺を元いた大陸まで送ってくれることになった。
「ケヴィンさん大変だ!女が海に浮かんでます!」
「なに!何か捕まるものを持ってこい!おい女、このロープに捕まって登ってこれるか?」
「……」
女は何も言わず首を振った。
「そうかわかった!」
「何をするんです!」
「決まってるだろ彼女を助けに行くんだよ!」
私は着ていたものを全て脱ぎ海へ飛び込んだ。
「今引き上げてやるからな!」
「ップフフ」
「何がおかし……ってお前レティシアか!」
「驚いた?言ったでしょ元は人間だって。私まだお礼してもらってないから、こうすれば船に載せてくれるでしょ?」
「悪趣味だぞ!それに少し磯臭い……」
「……!相変わらず失礼な男ね!」
「ップあはははは。」
ひとしきり笑うと私とレティシアは船に引き上げられた。
「随分と仲が良さそうに見えますがお知り合いで?」
「あぁ昔命を救われたことがあってな。すまないが、元いた大陸に着くまで乗せてやってくれ。」
私はレティシアに自分の服と羽織るものを貸し与え、一緒に食事をとることにした。
「今日という日に!」
「今日という日に!!」
俺たちは船が陸に着くまでの一週間毎日のように酒を飲み夜を明かした。
「レティシア!俺は父が死んだらこの冒険を称えられ王になるはずだ!俺が王になったらお前に伝えたいことがある!」
「えぇ待ってるわ。」
酒の勢いでレティシアに思いを伝える約束をし。俺たちはようやく陸に着いた。
「レティシア待た……」
レティシアのいた場所を見ると既にレティシアの姿はなかった。
「またな。」
私は海を後にして城に帰った。
「ケヴィン!あなた生きていたの!帰ってこないから、てっきり死んだとばかり!」
「伝えるよう頼んだのですが、私が乗っていた船は帰ってないのですか?」
「えぇ帰ってないわ……だからてっきりあなたも死んでしまったとばかり……。」
私が暮らしていた街に帰ると俺は死んでしまったことになっており。私の死の知らせによって海に近づくと穢れたものに襲われて帰らなくなると伝えられていて、既に国民の中に海に近づくものはいなくなっていた。
「ケヴィン王子、よくぞ穢れた海からお戻りになられました。あなたこそこの国の象徴にふさわしいお人だ!」
「母上この方は?」
「この方は教皇様よあなたがいなくなって海の神は穢れの神として扱われるようになって、七神教はなくなってしまったの。今はこの教皇様が六神教として教えをといてくれているの。」
「母上違うのです!私がサハギンに襲われ溺れかけたところをマーメイドに助けられら隣の大陸の調査を終え帰ってきたのです!決して海は穢れなどではございません!」
「王妃様、どうやらケヴィン王子はマーメイドに暗示をかけられているようです。部屋に閉じ込め落ち着かせた方がよろしいかと。」
「私は正常だ!貴様無礼だぞ!」
「そうね、衛兵ケヴィンを部屋に閉じ込めておきなさい。ケヴィンこれもあなたのためなの、きっとよくなるからね。」
私はそれから一ヶ月の間部屋に閉じ込められ。部屋から出してもらえても城からは出してもらえず。誰にも信じられず三年がたった。私は大陸の調査の功績が認められ正式に国王になった。
約束通り海に向かおうとしたが、海に近づかせてはもらえず、結局血の副作用で三百年以上生きた今も会えないまま時間だけが残酷に過ぎていた、この日までは。
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