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魔酔いの森
第五十六話
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奥の方から戻ってきたケラニとケレンは、カリーナさんの鏡が放った光に驚いたようだ。
また僕が、何かをやらかしたと思ったそうだから、概ね正解。
「で? 私たちをお嫁に行けない体にした裸の王様が、今度は何をしたのかしら?」
「えっと……、光の女神に捧げ物を少し……」
四人の女性から、呆れと戸惑いの表情を向けられ、正座する僕はどんな罪人だろう……?
っていうか、どうしてアイギスさんまでそっち側に?
「ノボルが犯せし咎は、我が子らを零隊と成したること」
「れ、零ですか……?」
正式名称は、討伐班遠征組第零方面隊だそうだ。
零方面とは、冥界および塔のことで、帰還の見込みが無いため、存在しない隊として扱われるという。
「どうしてそんなことに……?」
「自分たち姉妹が、オーグの中で一番レベルが高くなったからです」
アイギスさんによれば、冥界のオーグでも到達しなかったレベルだそうだ。
冥界は聞き覚えがあるけど、塔ってのは、ひょっとして……。
「左様。竜の巣なり。地下より道を定める事となるらむ」
「ああ……、鉱山の問題ってそういう事だったんですね……」
困ったな……。
僕の護衛をした事で、ケラニたちのレベルが上がって、その結果、鉱山のアルトスや塔の王様と対立してしまうのは非常に不味い……。
「もちろん、ノルが責任を取ってくれるのよね?」
「ノ、ノ、ノルが……!? せせ、せ、責任……!?」
「うん! 僕が責任を持って冥界に行けるようにするから、王やアルトスとは戦わないで欲しい……! それと、これまで護衛してくれた事に対する感謝の気持と、これから三人に対して責任を果たす誓いとして、これを受け取って欲しい……」
正座のまま、両手で掲げる形になってしまったけど、勾玉を渡すタイミングとしては、ちょうど良いかも知れない。
あっ! ケラニとケウナが倒れた! どうして!?
「ちょ、ちょっと! ノル! 本気!?」
「うん。アイギスの前で言った言葉だって理解してる」
「ふっふ……! 実に良し!」
ケレンが受け取った勾玉を眩しそうに眺めて、「神話級の輝きだわ……!」と大袈裟に喜んでくれた。
アイギスさんは、水の女神のコレクションにも無いクオリティーだから、「神界戦争級ぞ!」と何故か誇らしげだ。
「嫉妬深き女神の目に触れぬよう身に着くるがよし。見咎められしならば、私の盾を以っても防ぎ倦ねるやもしれぬ……。恐ろしきこと……! 早う冥界へ赴かねばならぬな? ノボルよ」
「あっ! さっき捧げたのはそういう……! 分かりました! 男に二言はありません! 早急に取り組みます」
騙されたとは思わないけど、上機嫌にヘビでケレンとハイタッチするアイギスさんにとっては、それだけ重要度が高いんだろう。
問題があるとすれば、大量の冥闇物質をどこから調達するか……。
一番は闇石だけどリスクが高い、次が夜の雫でも高濃度の場所が分からない、後は……、ん? あれは……?
「……ノル。自分が勾玉の話をしたから、この短時間で作ったですか……?」
「うん。ラニのおかげで良い仕事が出来た。希望どおりか自信ないけど、良かったら受け取って」
意識が戻って暫くぼんやりしてたケラニが、受け取った後に泣き始めてしまった……。
うーん、どういう感情だろう……? 正座の僕に出来る事はないけど、ネガティブな感情じゃないと良いな……。
「ノ、ノル! わ、わたしもノルのために作った!」
「うん! ありがとうウナ! とても丁寧で綺麗に作られてるから本当に嬉しい! 一生大事に使う!」
ケウナにも受け取って貰えて良かった。
でも、僕の勾玉とは比べ物にならない労力と時間を費やしたケウナはもっと報われるべき! 他に出来る事はないかな……?
「そうだ! ウナの爪は、形が美しくて大きいから、磨きやすいかも!」
「わ、わたしの爪……!?」
一摘みしたモヤをタオルに付けて、ケウナの爪を撫でるように磨く!
おお! 光った! 一摘みのモヤは、ダイヤモンドパウダー以上の性能があるとみた。
「す、すごい! わ、わたしの爪が……!」
「ちょっとノル! ウナばっかり可愛がり過ぎじゃない!? だいたい何時まで座ってるつもりよ……!?」
「そこでノルを非難するのは違うと思うです!」
「何でよ! だいたいちょっと処女捨てたくらいで……!」
「我が子らよ! いで立つ時にあらざりしや?」
「「「はい……」」」
おお……! 母の一声で収まった!
三人とも、勾玉に少し長めの革紐を通して首から下げ、革の胸当ての内側に仕舞い、出発の準備を始めたようだ。
「ふっふ……! そなたの妻にてこそあらで!?」
「それは分かりませんが……。あ、そうだった、アイギス! 黒い鏡を作りましょう!」
あ! アイギスさんの驚いた表情を初めて見た!
唐突に「黒い鏡」と言われれば、驚くのは無理ないけど、びっくりした顔も可愛い!
さっき気付いたのは、奥の木に立て掛けてあった縦長のスモーキークォーツだ。
僕が魔女術の実験で作った灰色の道を、ケウナが掘り出したらしい。
「僕の世界には、姿見と呼ばれる縦長の鏡があるんです」
「心得たり! 身の丈の門より、長き道の門! 素晴らしき!」
さすがアイギスさん、理解が早い。
薄くて長い板状にすれば、冥闇物質の量も最小限で済むはず。
「存分に試みよ」
「早速、闇石から冥闇物質を取り出してやってみますね」
灰色の道を作った際、周囲に夜の雫はそれほど無かったから、僕の周りだけモヤが掛かる量を垂らせば十分のはず。
これを腹式呼吸で地面に薄く浸透させ、水溜りを作る感じで薄く地表を満たして、上下同時に範囲を絞って密度を上げる!
「ふう! 今までよりも楽に出来ました! アイギスのおかげです。この黒い鏡を女神アイギスに捧げます」
「うむ! 見事なる黒き鏡、然と受け取りたり」
アイギスさんが頭尾双頭のヘビを地面に落とした。
黒い鏡に向かって走って行ったヘビは、その上まで行って、落ちる様に消えた……。
「消えたという事は……?」
「紛うことなき冥界の空よ!」
空?
空に繋がってしまったとすると、下りて行くことは……?
「造作なし!」
「えっ! 黒い鏡が浮いた!?」
どういう仕組みか分からないけど、浮いた鏡が分割されて複数枚になった。
あっ! これは、僕がアナさんから貰った鏡に似てる……!?
「左様。我が魔鏡ぞ。我が子らと、我が夫ノボルに授く」
「僕が貰っても大丈夫でしょうか……?」
可愛らしくウィンクしたって事は、良くはないけど、問題はないらしい。
と言っても、使い方というか、使い道は、アイギスさんから文字が送られて来るのかな?
「聖に属する女神どもめ、語るをも惜しむか……! 聖の鏡は『鏡よ』、魔の鏡は『黒き鏡よ』とぞ唱えよ」
「黒き鏡よ!」
あ! 目の前に黒い鏡が来た。
冷たい空気を伴い、光を全く反射しないそれは、やはり暗い瞳に見つめられる感じがした。
また僕が、何かをやらかしたと思ったそうだから、概ね正解。
「で? 私たちをお嫁に行けない体にした裸の王様が、今度は何をしたのかしら?」
「えっと……、光の女神に捧げ物を少し……」
四人の女性から、呆れと戸惑いの表情を向けられ、正座する僕はどんな罪人だろう……?
っていうか、どうしてアイギスさんまでそっち側に?
「ノボルが犯せし咎は、我が子らを零隊と成したること」
「れ、零ですか……?」
正式名称は、討伐班遠征組第零方面隊だそうだ。
零方面とは、冥界および塔のことで、帰還の見込みが無いため、存在しない隊として扱われるという。
「どうしてそんなことに……?」
「自分たち姉妹が、オーグの中で一番レベルが高くなったからです」
アイギスさんによれば、冥界のオーグでも到達しなかったレベルだそうだ。
冥界は聞き覚えがあるけど、塔ってのは、ひょっとして……。
「左様。竜の巣なり。地下より道を定める事となるらむ」
「ああ……、鉱山の問題ってそういう事だったんですね……」
困ったな……。
僕の護衛をした事で、ケラニたちのレベルが上がって、その結果、鉱山のアルトスや塔の王様と対立してしまうのは非常に不味い……。
「もちろん、ノルが責任を取ってくれるのよね?」
「ノ、ノ、ノルが……!? せせ、せ、責任……!?」
「うん! 僕が責任を持って冥界に行けるようにするから、王やアルトスとは戦わないで欲しい……! それと、これまで護衛してくれた事に対する感謝の気持と、これから三人に対して責任を果たす誓いとして、これを受け取って欲しい……」
正座のまま、両手で掲げる形になってしまったけど、勾玉を渡すタイミングとしては、ちょうど良いかも知れない。
あっ! ケラニとケウナが倒れた! どうして!?
「ちょ、ちょっと! ノル! 本気!?」
「うん。アイギスの前で言った言葉だって理解してる」
「ふっふ……! 実に良し!」
ケレンが受け取った勾玉を眩しそうに眺めて、「神話級の輝きだわ……!」と大袈裟に喜んでくれた。
アイギスさんは、水の女神のコレクションにも無いクオリティーだから、「神界戦争級ぞ!」と何故か誇らしげだ。
「嫉妬深き女神の目に触れぬよう身に着くるがよし。見咎められしならば、私の盾を以っても防ぎ倦ねるやもしれぬ……。恐ろしきこと……! 早う冥界へ赴かねばならぬな? ノボルよ」
「あっ! さっき捧げたのはそういう……! 分かりました! 男に二言はありません! 早急に取り組みます」
騙されたとは思わないけど、上機嫌にヘビでケレンとハイタッチするアイギスさんにとっては、それだけ重要度が高いんだろう。
問題があるとすれば、大量の冥闇物質をどこから調達するか……。
一番は闇石だけどリスクが高い、次が夜の雫でも高濃度の場所が分からない、後は……、ん? あれは……?
「……ノル。自分が勾玉の話をしたから、この短時間で作ったですか……?」
「うん。ラニのおかげで良い仕事が出来た。希望どおりか自信ないけど、良かったら受け取って」
意識が戻って暫くぼんやりしてたケラニが、受け取った後に泣き始めてしまった……。
うーん、どういう感情だろう……? 正座の僕に出来る事はないけど、ネガティブな感情じゃないと良いな……。
「ノ、ノル! わ、わたしもノルのために作った!」
「うん! ありがとうウナ! とても丁寧で綺麗に作られてるから本当に嬉しい! 一生大事に使う!」
ケウナにも受け取って貰えて良かった。
でも、僕の勾玉とは比べ物にならない労力と時間を費やしたケウナはもっと報われるべき! 他に出来る事はないかな……?
「そうだ! ウナの爪は、形が美しくて大きいから、磨きやすいかも!」
「わ、わたしの爪……!?」
一摘みしたモヤをタオルに付けて、ケウナの爪を撫でるように磨く!
おお! 光った! 一摘みのモヤは、ダイヤモンドパウダー以上の性能があるとみた。
「す、すごい! わ、わたしの爪が……!」
「ちょっとノル! ウナばっかり可愛がり過ぎじゃない!? だいたい何時まで座ってるつもりよ……!?」
「そこでノルを非難するのは違うと思うです!」
「何でよ! だいたいちょっと処女捨てたくらいで……!」
「我が子らよ! いで立つ時にあらざりしや?」
「「「はい……」」」
おお……! 母の一声で収まった!
三人とも、勾玉に少し長めの革紐を通して首から下げ、革の胸当ての内側に仕舞い、出発の準備を始めたようだ。
「ふっふ……! そなたの妻にてこそあらで!?」
「それは分かりませんが……。あ、そうだった、アイギス! 黒い鏡を作りましょう!」
あ! アイギスさんの驚いた表情を初めて見た!
唐突に「黒い鏡」と言われれば、驚くのは無理ないけど、びっくりした顔も可愛い!
さっき気付いたのは、奥の木に立て掛けてあった縦長のスモーキークォーツだ。
僕が魔女術の実験で作った灰色の道を、ケウナが掘り出したらしい。
「僕の世界には、姿見と呼ばれる縦長の鏡があるんです」
「心得たり! 身の丈の門より、長き道の門! 素晴らしき!」
さすがアイギスさん、理解が早い。
薄くて長い板状にすれば、冥闇物質の量も最小限で済むはず。
「存分に試みよ」
「早速、闇石から冥闇物質を取り出してやってみますね」
灰色の道を作った際、周囲に夜の雫はそれほど無かったから、僕の周りだけモヤが掛かる量を垂らせば十分のはず。
これを腹式呼吸で地面に薄く浸透させ、水溜りを作る感じで薄く地表を満たして、上下同時に範囲を絞って密度を上げる!
「ふう! 今までよりも楽に出来ました! アイギスのおかげです。この黒い鏡を女神アイギスに捧げます」
「うむ! 見事なる黒き鏡、然と受け取りたり」
アイギスさんが頭尾双頭のヘビを地面に落とした。
黒い鏡に向かって走って行ったヘビは、その上まで行って、落ちる様に消えた……。
「消えたという事は……?」
「紛うことなき冥界の空よ!」
空?
空に繋がってしまったとすると、下りて行くことは……?
「造作なし!」
「えっ! 黒い鏡が浮いた!?」
どういう仕組みか分からないけど、浮いた鏡が分割されて複数枚になった。
あっ! これは、僕がアナさんから貰った鏡に似てる……!?
「左様。我が魔鏡ぞ。我が子らと、我が夫ノボルに授く」
「僕が貰っても大丈夫でしょうか……?」
可愛らしくウィンクしたって事は、良くはないけど、問題はないらしい。
と言っても、使い方というか、使い道は、アイギスさんから文字が送られて来るのかな?
「聖に属する女神どもめ、語るをも惜しむか……! 聖の鏡は『鏡よ』、魔の鏡は『黒き鏡よ』とぞ唱えよ」
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