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四章
黄金の夜明け
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「私が、生まれてこなければ……」
絶望の表情で震える月夜を見て、暁未はにんまり笑った。
「だから、お前はここで死ぬのよ。ちょうどいいじゃない? その男と一緒に死ねるんだから」
「縁樹、さんと……?」
その言葉に月夜は我に返る。
縁樹をかばうように両手を広げ、自分が壁になって暁未を睨み据えた。
「嫌よ。彼は死なせない」
月夜が縁樹の前に立つと、それを見た暁未が高らかに声を上げて笑った。
「あははっ、妖力を失ったお前に何ができるの?」
「まだ、完全に失ったわけじゃない。お姉さまを止めるためなら、どんな小さな力だって全力で出すわ」
月夜の瞳が紅く光る。朱華色の髪が揺れ、身体を鈍い光が包み込む。
「お馬鹿さんね。そんなもの、あたしの前では効かないわよ」
暁未はにたりと笑い、月夜をはるかに超える妖力を放った。それは周囲の樹木が軋む音を立てて折れ曲がるほどの凄まじい力だ。
それが月夜の身体にも圧しかかり、押し潰されそうになる。
月夜は自身の力で防いだが、その差は歴然で、そのまま力尽きて地面に尻もちをついた。顔を上げると暁未が間近に立って見下ろしている。
彼女はもはや以前の人間らしい表情をしていなかった。
「さよなら、月夜」
暁未が振り下ろした腕に叩きつけられる瞬間、月夜はその場を動かず縁樹の盾になるつもりだった。
月夜は目をつぶってぼそりと声を洩らす。
「おばあちゃん、ごめんなさい」
必ず生きのびるようにという祖母の遺言を果たせない。月夜はそれでも縁樹の前から動かなかった。
地面が轟音とともに押し潰される。周囲の樹木が割れて倒れ、その衝撃が月夜にも襲いかかるはずだった。しかし激痛を感じることはなく、むしろ身体が軽くなり、足もとが浮いている感覚すらした。
仰向けになった月夜の視線の先には、濃い紫紺の空が橙色へと変わっていく様子が広がっていた。しかしそれよりも明るいのは自身を包みこむ金色の光だ。
月夜が驚いて目を瞠るとさらりと金の長い髪が頬に当たった。それが自分の髪ではなく、別のものだとすぐにわかった。
「縁樹さん……?」
背後から月夜を抱えていたのは縁樹だ。彼は瞳の色と同じくらいまばゆい黄金色の髪をしている。長く伸びたその髪がまるで月夜を守るように包み込んでいる。
「なんてことをしてくれる? 君が死ねば俺が香月さんに恨まれるだろう」
「縁樹さん、無事で……」
「夜明けだ」
東の空から日が昇り、あたりを柔らかな光で照らし出す。雨上がりの木々の葉に光が反射し、きらきらと輝きながら、いっぺんに闇から目覚めたように明るくなった。
月夜は気が抜けたように身体から力が抜けた。
縁樹に抱きかかえられ、安堵したように意識が薄れていく。
しかしふと暁未のことが頭をよぎり、そちらへ意識が向いた。
「……お姉さま?」
暁未の姿を捉えることはできなかった。
絶望の表情で震える月夜を見て、暁未はにんまり笑った。
「だから、お前はここで死ぬのよ。ちょうどいいじゃない? その男と一緒に死ねるんだから」
「縁樹、さんと……?」
その言葉に月夜は我に返る。
縁樹をかばうように両手を広げ、自分が壁になって暁未を睨み据えた。
「嫌よ。彼は死なせない」
月夜が縁樹の前に立つと、それを見た暁未が高らかに声を上げて笑った。
「あははっ、妖力を失ったお前に何ができるの?」
「まだ、完全に失ったわけじゃない。お姉さまを止めるためなら、どんな小さな力だって全力で出すわ」
月夜の瞳が紅く光る。朱華色の髪が揺れ、身体を鈍い光が包み込む。
「お馬鹿さんね。そんなもの、あたしの前では効かないわよ」
暁未はにたりと笑い、月夜をはるかに超える妖力を放った。それは周囲の樹木が軋む音を立てて折れ曲がるほどの凄まじい力だ。
それが月夜の身体にも圧しかかり、押し潰されそうになる。
月夜は自身の力で防いだが、その差は歴然で、そのまま力尽きて地面に尻もちをついた。顔を上げると暁未が間近に立って見下ろしている。
彼女はもはや以前の人間らしい表情をしていなかった。
「さよなら、月夜」
暁未が振り下ろした腕に叩きつけられる瞬間、月夜はその場を動かず縁樹の盾になるつもりだった。
月夜は目をつぶってぼそりと声を洩らす。
「おばあちゃん、ごめんなさい」
必ず生きのびるようにという祖母の遺言を果たせない。月夜はそれでも縁樹の前から動かなかった。
地面が轟音とともに押し潰される。周囲の樹木が割れて倒れ、その衝撃が月夜にも襲いかかるはずだった。しかし激痛を感じることはなく、むしろ身体が軽くなり、足もとが浮いている感覚すらした。
仰向けになった月夜の視線の先には、濃い紫紺の空が橙色へと変わっていく様子が広がっていた。しかしそれよりも明るいのは自身を包みこむ金色の光だ。
月夜が驚いて目を瞠るとさらりと金の長い髪が頬に当たった。それが自分の髪ではなく、別のものだとすぐにわかった。
「縁樹さん……?」
背後から月夜を抱えていたのは縁樹だ。彼は瞳の色と同じくらいまばゆい黄金色の髪をしている。長く伸びたその髪がまるで月夜を守るように包み込んでいる。
「なんてことをしてくれる? 君が死ねば俺が香月さんに恨まれるだろう」
「縁樹さん、無事で……」
「夜明けだ」
東の空から日が昇り、あたりを柔らかな光で照らし出す。雨上がりの木々の葉に光が反射し、きらきらと輝きながら、いっぺんに闇から目覚めたように明るくなった。
月夜は気が抜けたように身体から力が抜けた。
縁樹に抱きかかえられ、安堵したように意識が薄れていく。
しかしふと暁未のことが頭をよぎり、そちらへ意識が向いた。
「……お姉さま?」
暁未の姿を捉えることはできなかった。
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