13 / 57
13、すべて私がやったのよ(セリス)
しおりを挟む
レイラ、今頃どうしているかしら?
ベルン男爵に気に入られるといいわね。
大丈夫よ。あのお方は少しお年を召しているけれど、お金持ちだし今の生活よりずっと贅沢な暮らしはできるはずよ。彼は妾にもすごくお優しい方だって有名だもの。
感謝してよね。
私があなたを救ってあげたの。
あなたはずっと伯父様に監禁されて、食事も質素なものしか与えられず、仕事の納期が遅れそうになると暴力まで振るわれて、本当に可哀想だった。
そんなあなたを見ていて、ほんの少しだけ優越感を抱いたけれど、哀れんでいたのは本当よ。
だけど、やっぱりどうしても許せないことってあるの。
私とあなたは同時期から神殿で絵を学び始めたわ。
だけど、あなたは瞬く間に才能を開花させ、子供なのに大人レベルの絵を描くようになった。
その頃の私は純粋に、あなたのことをすごいなって思っていたの。
もちろん尊敬もしていたわ。
だって、あなたは私より年上だから、当然のことだって。
でもね、年齢が上がっていくうちに、歳の差なんて感じなくなっていった。
それなのに、あなたは私を大きく引き離して、品評会で大人に混じってトップ10以内の順位になった。
一方、私は品評会に出展することもできないくらいの実力だった。
子供の中ではトップレベルだったけど、あなたを見ていると自分が情けなくなったわ。
どうして同じ時期に始めたのに、あなたとこんなに差がついてしまったのか。
納得できなくて、あなたが何か不正をしているのではないかと思ったわ。
調べてみたけれど、不審な点はなくて、がっかりした。
やがて、あなたに仕事の依頼が来るようになって焦ったわ。
私は品評会にようやく出せるようになったのに、順位は30位以下。
一方のあなたはすでに1位になっていた。
何かが間違っていると思ったの。
あなただけがこんなにいい思いをするなんて、許せないわ。
でもね、私はお母様と伯父様とみんなで食事をするときが一番心が穏やかになれたの。
だって、伯父様は実の娘のあなたを嫌ってて、私を溺愛してくれるんだもの。
外では凛とした姿勢で堂々と振る舞うあなたが、家庭内では無言で虚ろな表情をしているのが、滑稽でたまらなかった。
それだけが、私の自尊心を満たしてくれた。
やがて、あなたは伯父様が取ってくる仕事の依頼が多すぎて学校を辞めたわ。
おかげで私は学校で華になれたの。
そのことにも感謝している。
だって、アベリオが私だけを見てくれると思ったから。
アベリオと出会ったのも、あなたと一緒にいたときだったわね。
私はアベリオに一目惚れした。
絶対に彼のお嫁さんになりたいと思ったの。
それなのに、アベリオはある日こう言ったの。
「君に報告があるんだ。実は、僕はレイラに縁談を申し込んだ」
驚愕を通り越して絶句したわ。
どうしてなの?
今あなたのそばにいるのは、レイラではなく私なのに!
レイラ、あなたはどこまで私の人生の邪魔をすれば気が済むの?
私のすべてを奪うなんて許せない!
あんたなんか、いなくなればいいのよ!
ある日、私は実行した。
レイラとまったく同じ絵を描いたの。
そして、レイラの絵が仕上がった頃に伯父様の家に行き、私の絵と交換した。
ふふっ、レイラは私が頻繁にあなたの様子を見に差し入れを持って行っていると思っていたんでしょ。
実は、あなたの部屋を訪れて、進捗を確認していたのよ。
そして、私は忠実にあなたの絵を再現してみせた。
多少異なる部分はあったけれど、伯父様はあなたの絵と私の絵の区別なんてできなかったわ。
だって、私もすでに品評会でトップ10入りするくらいの実力になっていたんだもの。
でもね、私には絵の依頼が来ないのよ。
なぜか。それはあなたがいるせいよ。
あなたがいなくなれば、みんな私に依頼してくるわ。
そう思って、私は入念に準備したの。
顧客たちにはレイラの絵と見せかけて私の絵を売った。
そうやって、私の絵をアピールしていくの。
いずれ、あなたが絵を描けなくなった頃に、皆が私の絵を違和感なく求めるようになるからよ。
そう、あなたはいずれ、必ず絵が描けなくなるの。
私は違法薬物を手に入れるために闇取引をする商人と接触した。
もちろん素性は隠して。
手に入れたのは神経を遮断する薬よ。
医療ではそれを薄めて麻酔薬として使われるらしいわ。
でもね、私が手に入れたのは原液。つまり、改良前の毒草を煎じたもの。
触れると大火傷を負い、神経を完全に麻痺させる。
飲み込むと死に至る毒だけど、私は別にあなたを殺したいわけじゃないの。
ただ、あなたに絶望を味わせたいだけ。
何の努力もせずにトップまで登りつめたあなたに、挫折を味わってもらいたいのよ。
計画は順調に進んだわ。
ベルン男爵に気に入られるといいわね。
大丈夫よ。あのお方は少しお年を召しているけれど、お金持ちだし今の生活よりずっと贅沢な暮らしはできるはずよ。彼は妾にもすごくお優しい方だって有名だもの。
感謝してよね。
私があなたを救ってあげたの。
あなたはずっと伯父様に監禁されて、食事も質素なものしか与えられず、仕事の納期が遅れそうになると暴力まで振るわれて、本当に可哀想だった。
そんなあなたを見ていて、ほんの少しだけ優越感を抱いたけれど、哀れんでいたのは本当よ。
だけど、やっぱりどうしても許せないことってあるの。
私とあなたは同時期から神殿で絵を学び始めたわ。
だけど、あなたは瞬く間に才能を開花させ、子供なのに大人レベルの絵を描くようになった。
その頃の私は純粋に、あなたのことをすごいなって思っていたの。
もちろん尊敬もしていたわ。
だって、あなたは私より年上だから、当然のことだって。
でもね、年齢が上がっていくうちに、歳の差なんて感じなくなっていった。
それなのに、あなたは私を大きく引き離して、品評会で大人に混じってトップ10以内の順位になった。
一方、私は品評会に出展することもできないくらいの実力だった。
子供の中ではトップレベルだったけど、あなたを見ていると自分が情けなくなったわ。
どうして同じ時期に始めたのに、あなたとこんなに差がついてしまったのか。
納得できなくて、あなたが何か不正をしているのではないかと思ったわ。
調べてみたけれど、不審な点はなくて、がっかりした。
やがて、あなたに仕事の依頼が来るようになって焦ったわ。
私は品評会にようやく出せるようになったのに、順位は30位以下。
一方のあなたはすでに1位になっていた。
何かが間違っていると思ったの。
あなただけがこんなにいい思いをするなんて、許せないわ。
でもね、私はお母様と伯父様とみんなで食事をするときが一番心が穏やかになれたの。
だって、伯父様は実の娘のあなたを嫌ってて、私を溺愛してくれるんだもの。
外では凛とした姿勢で堂々と振る舞うあなたが、家庭内では無言で虚ろな表情をしているのが、滑稽でたまらなかった。
それだけが、私の自尊心を満たしてくれた。
やがて、あなたは伯父様が取ってくる仕事の依頼が多すぎて学校を辞めたわ。
おかげで私は学校で華になれたの。
そのことにも感謝している。
だって、アベリオが私だけを見てくれると思ったから。
アベリオと出会ったのも、あなたと一緒にいたときだったわね。
私はアベリオに一目惚れした。
絶対に彼のお嫁さんになりたいと思ったの。
それなのに、アベリオはある日こう言ったの。
「君に報告があるんだ。実は、僕はレイラに縁談を申し込んだ」
驚愕を通り越して絶句したわ。
どうしてなの?
今あなたのそばにいるのは、レイラではなく私なのに!
レイラ、あなたはどこまで私の人生の邪魔をすれば気が済むの?
私のすべてを奪うなんて許せない!
あんたなんか、いなくなればいいのよ!
ある日、私は実行した。
レイラとまったく同じ絵を描いたの。
そして、レイラの絵が仕上がった頃に伯父様の家に行き、私の絵と交換した。
ふふっ、レイラは私が頻繁にあなたの様子を見に差し入れを持って行っていると思っていたんでしょ。
実は、あなたの部屋を訪れて、進捗を確認していたのよ。
そして、私は忠実にあなたの絵を再現してみせた。
多少異なる部分はあったけれど、伯父様はあなたの絵と私の絵の区別なんてできなかったわ。
だって、私もすでに品評会でトップ10入りするくらいの実力になっていたんだもの。
でもね、私には絵の依頼が来ないのよ。
なぜか。それはあなたがいるせいよ。
あなたがいなくなれば、みんな私に依頼してくるわ。
そう思って、私は入念に準備したの。
顧客たちにはレイラの絵と見せかけて私の絵を売った。
そうやって、私の絵をアピールしていくの。
いずれ、あなたが絵を描けなくなった頃に、皆が私の絵を違和感なく求めるようになるからよ。
そう、あなたはいずれ、必ず絵が描けなくなるの。
私は違法薬物を手に入れるために闇取引をする商人と接触した。
もちろん素性は隠して。
手に入れたのは神経を遮断する薬よ。
医療ではそれを薄めて麻酔薬として使われるらしいわ。
でもね、私が手に入れたのは原液。つまり、改良前の毒草を煎じたもの。
触れると大火傷を負い、神経を完全に麻痺させる。
飲み込むと死に至る毒だけど、私は別にあなたを殺したいわけじゃないの。
ただ、あなたに絶望を味わせたいだけ。
何の努力もせずにトップまで登りつめたあなたに、挫折を味わってもらいたいのよ。
計画は順調に進んだわ。
71
あなたにおすすめの小説
婚約者に値踏みされ続けた文官、堪忍袋の緒が切れたのでお別れしました。私は、私を尊重してくれる人を大切にします!
ささい
恋愛
王城で文官として働くリディア・フィアモントは、冷たい婚約者に評価されず疲弊していた。三度目の「婚約解消してもいい」の言葉に、ついに決断する。自由を得た彼女は、日々の書類仕事に誇りを取り戻し、誰かに頼られることの喜びを実感する。王城の仕事を支えつつ、自分らしい生活と自立を歩み始める物語。
ざまあは後悔する系( ^^) _旦~~
小説家になろうにも投稿しております。
旦那様に学園時代の隠し子!? 娘のためフローレンスは笑う-昔の女は引っ込んでなさい!
恋せよ恋
恋愛
結婚五年目。
誰もが羨む夫婦──フローレンスとジョシュアの平穏は、
三歳の娘がつぶやいた“たった一言”で崩れ落ちた。
「キャ...ス...といっしょ?」
キャス……?
その名を知るはずのない我が子が、どうして?
胸騒ぎはやがて確信へと変わる。
夫が隠し続けていた“女の影”が、
じわりと家族の中に染み出していた。
だがそれは、いま目の前の裏切りではない。
学園卒業の夜──婚約前の学園時代の“あの過ち”。
その一夜の結果は、静かに、確実に、
フローレンスの家族を壊しはじめていた。
愛しているのに疑ってしまう。
信じたいのに、信じられない。
夫は嘘をつき続け、女は影のように
フローレンスの生活に忍び寄る。
──私は、この結婚を守れるの?
──それとも、すべてを捨ててしまうべきなの?
秘密、裏切り、嫉妬、そして母としての戦い。
真実が暴かれたとき、愛は修復か、崩壊か──。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
第一王子様から選ばれるのは自分だと確信していた妹だったけれど、選ばれたのは私でした。
睡蓮
恋愛
ルビー第一王子様からもたらされた招待状には、名前が書かれていなかった。けれど、それを自分に宛てたものだと確信する妹のミーアは、私の事をさげすみ始める…。しかしルビー様が最後に選んだのは、ミーアではなく私だったのでした。
私は愛する人と結婚できなくなったのに、あなたが結婚できると思うの?
あんど もあ
ファンタジー
妹の画策で、第一王子との婚約を解消することになったレイア。
理由は姉への嫌がらせだとしても、妹は王子の結婚を妨害したのだ。
レイアは妹への処罰を伝える。
「あなたも婚約解消しなさい」
その支払い、どこから出ていると思ってまして?
ばぅ
恋愛
「真実の愛を見つけた!婚約破棄だ!」と騒ぐ王太子。
でもその真実の愛の相手に贈ったドレスも宝石も、出所は全部うちの金なんですけど!?
国の財政の半分を支える公爵家の娘であるセレスティアに見限られた途端、
王家に課せられた融資は 即時全額返済へと切り替わる。
「愛で国は救えませんわ。
救えるのは――責任と実務能力です。」
金の力で国を支える公爵令嬢の、
爽快ザマァ逆転ストーリー!
⚫︎カクヨム、なろうにも投稿中
無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……
タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。
戦場から帰らぬ夫は、隣国の姫君に恋文を送っていました
Mag_Mel
恋愛
しばらく床に臥せていたエルマが久方ぶりに参加した祝宴で、隣国の姫君ルーシアは戦地にいるはずの夫ジェイミーの名を口にした。
「彼から恋文をもらっていますの」。
二年もの間、自分には便りひとつ届かなかったのに?
真実を確かめるため、エルマは姫君の茶会へと足を運ぶ。
そこで待っていたのは「身を引いて欲しい」と別れを迫る、ルーシアの取り巻きたちだった。
※小説家になろう様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる