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25、どれほど傷つけられても
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部屋に戻り、扉が閉まった途端、張りつめていた糸が切れた。
嗚咽を殺しながら、大粒の涙が頬を伝った。
声を出してしまえば彼に気づかれる。だから唇を噛みしめ、ただ静かに涙を流した。
「すまなかった。あんな話を聞くことになるとは思わなかった。これからは食事を部屋へ運んでもらおう」
「い、え……大丈夫……」
震える声。
必死に気丈を装おうとしても、心の揺れを隠せなかった。
「レイラ、泣いているのか?」
「いいえ……泣いて、なんか……」
否定をしても、声は震えていて説得力がない。
どう言い訳をしようか迷っていると、エリオスの手が伸びてきて、私の手に触れた。
思わずどきりとしたが、私はその意味を理解し、彼の腕を支えてソファへ促した。
「座りましょうか」
「レイラ」
「え……?」
彼は腰を下ろすのではなく、私の体をそっと抱き寄せた。
突然の出来事に息を呑む。
「エリオス……?」
「悪い。君が消えてしまいそうで……嫌なら拒んでいい」
「嫌じゃないわ。むしろ、あなたの胸はとても温かい」
彼の胸に抱かれると、不思議と安心感が全身に広がった。
鼓動は速まるけれど、それを恋だと勘違いしてはいけない。
彼は私を慰めてくれているだけ。そう言い聞かせる。
エリオスは大きな手で私の背中を撫でた。
心地よさに包まれながらも、鼓動がどんどん速くなるのを感じる。
「君は本当に華奢だな。侍女たちが心配するのも無理はない。痩せすぎている」
「最近は良い食事をいただいているから大丈夫よ」
「……本当に、ひどい扱いをされてきたんだな。胸が痛む」
「でも、今こうしてあなたの言葉が私を癒やしてくれるから、もう大丈夫」
強がってみせた。
でも、彼が寄り添ってくれるだけで心が軽くなっていくのは本当だから。
エリオスの手が私の髪に触れた。
彼の指先が髪をすくように撫でていく感触に、思わず鼓動が高鳴った。
「君は月明かりのように美しい白銀の髪をしていると聞いた。目も眩むほど綺麗なのだろうな」
「そんなっ……買いかぶりすぎよ」
「たった一つだけ願いが叶うなら、君の姿を見てみたい」
「エリオス……」
思いがけない言葉に頬が熱くなる。
恥ずかしい気持ちと、少しの嬉しさが混ざった感覚だ。
「だが、姿が見えずとも、君の心は美しい。それだけで、俺は君に惹かれている」
「え? それは……」
戸惑いのあまり言葉を失うと、彼はそっと私から離れた。
そして、急に我に返ったように私から体を背ける。
「明日は早い。少しでも長く休んだほうがいいな」
「ええ、そうするわ。ありがとう」
「もし眠れないなら……」
言葉が途切れ、エリオスは小さく首を横に振った。
「いや、何でもない。俺が邪魔してはいけないな。これで失礼するよ」
彼はそう言って私に背中を向けて、扉のほうへ手を伸ばす。
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
「お部屋まで送るわ」
「なんとなく場所はわかるから平気だ」
「いいえ。送るわ」
「そうか。じゃあ、お願いしよう」
エリオスはにっこり笑った。
彼の笑顔は不思議だ。私の傷ついた心をそっと癒やしてくれる。
普段の凛々しい顔立ちとは違い、どこか可愛らしさもある。
それに、わずかばかり私の心を乱してしまう。
彼と一緒にいると、安心感に包まれるだけでなく、胸の奥にひそかな熱が広がっていく。
けれど、そんなことは口にできないから、心にそっとしまい込んだ。
嗚咽を殺しながら、大粒の涙が頬を伝った。
声を出してしまえば彼に気づかれる。だから唇を噛みしめ、ただ静かに涙を流した。
「すまなかった。あんな話を聞くことになるとは思わなかった。これからは食事を部屋へ運んでもらおう」
「い、え……大丈夫……」
震える声。
必死に気丈を装おうとしても、心の揺れを隠せなかった。
「レイラ、泣いているのか?」
「いいえ……泣いて、なんか……」
否定をしても、声は震えていて説得力がない。
どう言い訳をしようか迷っていると、エリオスの手が伸びてきて、私の手に触れた。
思わずどきりとしたが、私はその意味を理解し、彼の腕を支えてソファへ促した。
「座りましょうか」
「レイラ」
「え……?」
彼は腰を下ろすのではなく、私の体をそっと抱き寄せた。
突然の出来事に息を呑む。
「エリオス……?」
「悪い。君が消えてしまいそうで……嫌なら拒んでいい」
「嫌じゃないわ。むしろ、あなたの胸はとても温かい」
彼の胸に抱かれると、不思議と安心感が全身に広がった。
鼓動は速まるけれど、それを恋だと勘違いしてはいけない。
彼は私を慰めてくれているだけ。そう言い聞かせる。
エリオスは大きな手で私の背中を撫でた。
心地よさに包まれながらも、鼓動がどんどん速くなるのを感じる。
「君は本当に華奢だな。侍女たちが心配するのも無理はない。痩せすぎている」
「最近は良い食事をいただいているから大丈夫よ」
「……本当に、ひどい扱いをされてきたんだな。胸が痛む」
「でも、今こうしてあなたの言葉が私を癒やしてくれるから、もう大丈夫」
強がってみせた。
でも、彼が寄り添ってくれるだけで心が軽くなっていくのは本当だから。
エリオスの手が私の髪に触れた。
彼の指先が髪をすくように撫でていく感触に、思わず鼓動が高鳴った。
「君は月明かりのように美しい白銀の髪をしていると聞いた。目も眩むほど綺麗なのだろうな」
「そんなっ……買いかぶりすぎよ」
「たった一つだけ願いが叶うなら、君の姿を見てみたい」
「エリオス……」
思いがけない言葉に頬が熱くなる。
恥ずかしい気持ちと、少しの嬉しさが混ざった感覚だ。
「だが、姿が見えずとも、君の心は美しい。それだけで、俺は君に惹かれている」
「え? それは……」
戸惑いのあまり言葉を失うと、彼はそっと私から離れた。
そして、急に我に返ったように私から体を背ける。
「明日は早い。少しでも長く休んだほうがいいな」
「ええ、そうするわ。ありがとう」
「もし眠れないなら……」
言葉が途切れ、エリオスは小さく首を横に振った。
「いや、何でもない。俺が邪魔してはいけないな。これで失礼するよ」
彼はそう言って私に背中を向けて、扉のほうへ手を伸ばす。
私は慌てて彼の腕を掴んだ。
「お部屋まで送るわ」
「なんとなく場所はわかるから平気だ」
「いいえ。送るわ」
「そうか。じゃあ、お願いしよう」
エリオスはにっこり笑った。
彼の笑顔は不思議だ。私の傷ついた心をそっと癒やしてくれる。
普段の凛々しい顔立ちとは違い、どこか可愛らしさもある。
それに、わずかばかり私の心を乱してしまう。
彼と一緒にいると、安心感に包まれるだけでなく、胸の奥にひそかな熱が広がっていく。
けれど、そんなことは口にできないから、心にそっとしまい込んだ。
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