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1、怪しい占い師
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ー25秒であなたの全てを占いますー
その看板を見た七実は、思わず足を止めてしまった。
ホントかな……イヤイヤそんなワケ、ナイじゃん!
そう胸の中でツッコミを入れてみても、普段は超現実主義な七実の思考は、今日にかぎって、ちっとも働いてくれない。
さらに七実の足は、その看板に書かれた矢印方向にフラフラと向かい続け、その手は黒く塗られたドアを勢いよく開けた。
「おや?
まぁ、いらっしゃい!」
薄暗い部屋の中央に、小さなテーブルが置かれていて、黒いローブを着用した、いかにも占い師です!と言わんばかりの、声から推測して……女性が座っている。
しかもかなり若い?
占い師はローブに付いているフードを深くかぶっていて、鼻の下までは見えないが、口元だけは七実からも見えた。
唇には真っ赤な口紅がぬられているが、周辺の真っ白な肌はキメが整っていて、ピンと張り、皺ひとつない。
しかも占い師の次の言葉に、さらに七実は驚いた。
「待っていたわ!
さぁ、座ってちょうだい!」
やっぱりこの占い師、若いわ!
しかも私を待っていた?
本格的な占いなんて今日初めてだし、占い師の知り合いなんてもちろんいない
なのに、なんでその言葉が出てくるの?
七実の頭の中では、たくさんの疑問が浮かんでいたが、体は七実の意識に反して、引き寄せられるように、占い師の目の前に座る。
ちょっ、ちょっと、なんかおかしくない?
いつもの私らしくない!
自分の意思と行動が別々になっていることに七実がとまどっていると、いつの間にか占い師と七実の前に、透明で大きな丸いガラスのようなものが置かれていた。
「見事な水晶でしょう?
占いに必要なアイテムなのよねぇ~」
七実が実際に声に出して聞いてもいないのに、占い師は楽しそうに答える。
驚いて七実が目を見張ると、口の端をゆっくりと引き上げた占い師が、強い口調でズバリと切り込んできた。
「さぁ、アナタの悩みを言ってちょうだい」
ローブに隠れているが、占い師が目を見開いたのが、なぜか七実には分かった。
そして不思議なことに……七実の口が、滑らかに動き出す。
「高校卒業と同時に付き合って、今年で6年目、来年結婚しようと言っていた彼氏と先ほど別れた!」
こうして言葉にしても、まだ信じられない
だが七実の胸には、大きな穴が空いたような喪失感があった。
「ふぅ~ん、で、どちらから別れを切り出したの?」
占い師は驚くほど冷静に、七実に聞いてくる。
「私!」
占い師の冷静さとは逆に、七実はなかばヤケになって答えた。
しかし占い師は、そんな七実の態度は気にならないのか、さらに質問を重ねてきた。
「なんで?」
うううっ……
七実は内心でうなりながらも……正直に答える。
「私、なぜか昔から待つのが大っ嫌いで……今回も耐えられないと思ったから」
「待つ?」
占い師は横にコテリと首をかしげる。
「あ~っ」
七実は目の前のテーブルに前かがみに上体を傾けると、両ひじを着き、頭を両手で抱えこみながら、彼氏に別れを告げた理由を占い師に説明しはじめた。
「彼氏に海外主張が決まり……」
細かい情報が欲しいとばかりに、占い師からすぐに詳細を尋ねられる。
「何年ぐらい?」
「来年から短くて2年、長くて5年」
「そう……アナタ来年25歳だから、彼氏の海外赴任がもし長期となると……30歳になるわね」
「そうなの!
30歳になっちゃうから……さすがに……ね」
「賢明な判断をしたわりには、暗いわね?」
七実はガバッと顔を上げた。
「待つのは大っ嫌いなんだけど、付き合って6年は長いし……彼自身が嫌いになったわけではないの。
だから……だからこそ、この別れが正しいどうか……自信がない。
それに……」
「それに?」
占い師は顎に右手の指先をかけ、コテリと首を左に傾けた。
なんか……そのポーズ、カワイイかも
自分でやったコトもない行動に、目の前の、しかも初対面の、怪しい占い師に七実は、羨ましいという感情がメラッとわき上がる。
イヤイヤ……そんな感情は、今は置いといて
心の中の冷静なもう1人の七実が、落ち着いた声をかけてきた。
だから落ち着くため、はぁ~と息を吐いた七実だが、次の占い師のひと言に、七実の目は釣り上がる。
「じゃあ、待てば?」
「だから、待つのは、何よりも大嫌いなんだってば!」
「なんで?」
「なんでって……」
そう聞かれると、七実はいつものように口ごもってしまった。
「自分でも不思議なんだけど、コレと言った決定的な出来事は思いあたらないの。
でも……こう……心の奥から、待つという言葉を聞いただけで、拒絶反応がわき上がってきて、気がつくと、待てない!と口にしてるんだ……」
下唇を軽くかんで、うつむいた七実を占い師はしばらく黙ってジッと見つめていたが、やがて七実に声をかける。
「分かったわ。
じゃあ、その原因をふくめて占うわ。
アナタの両手の手のひらを水晶にかざしてくれる?」
「それだけで本当に分かるの?」
七実の問いかけに、占い師は大きくうなずいて、ハッキリと言い切った。
「25秒であなたの全てを占います!」
理由は分からないが、七実はこの占い結果を聞いてみなければ……と思った。
その看板を見た七実は、思わず足を止めてしまった。
ホントかな……イヤイヤそんなワケ、ナイじゃん!
そう胸の中でツッコミを入れてみても、普段は超現実主義な七実の思考は、今日にかぎって、ちっとも働いてくれない。
さらに七実の足は、その看板に書かれた矢印方向にフラフラと向かい続け、その手は黒く塗られたドアを勢いよく開けた。
「おや?
まぁ、いらっしゃい!」
薄暗い部屋の中央に、小さなテーブルが置かれていて、黒いローブを着用した、いかにも占い師です!と言わんばかりの、声から推測して……女性が座っている。
しかもかなり若い?
占い師はローブに付いているフードを深くかぶっていて、鼻の下までは見えないが、口元だけは七実からも見えた。
唇には真っ赤な口紅がぬられているが、周辺の真っ白な肌はキメが整っていて、ピンと張り、皺ひとつない。
しかも占い師の次の言葉に、さらに七実は驚いた。
「待っていたわ!
さぁ、座ってちょうだい!」
やっぱりこの占い師、若いわ!
しかも私を待っていた?
本格的な占いなんて今日初めてだし、占い師の知り合いなんてもちろんいない
なのに、なんでその言葉が出てくるの?
七実の頭の中では、たくさんの疑問が浮かんでいたが、体は七実の意識に反して、引き寄せられるように、占い師の目の前に座る。
ちょっ、ちょっと、なんかおかしくない?
いつもの私らしくない!
自分の意思と行動が別々になっていることに七実がとまどっていると、いつの間にか占い師と七実の前に、透明で大きな丸いガラスのようなものが置かれていた。
「見事な水晶でしょう?
占いに必要なアイテムなのよねぇ~」
七実が実際に声に出して聞いてもいないのに、占い師は楽しそうに答える。
驚いて七実が目を見張ると、口の端をゆっくりと引き上げた占い師が、強い口調でズバリと切り込んできた。
「さぁ、アナタの悩みを言ってちょうだい」
ローブに隠れているが、占い師が目を見開いたのが、なぜか七実には分かった。
そして不思議なことに……七実の口が、滑らかに動き出す。
「高校卒業と同時に付き合って、今年で6年目、来年結婚しようと言っていた彼氏と先ほど別れた!」
こうして言葉にしても、まだ信じられない
だが七実の胸には、大きな穴が空いたような喪失感があった。
「ふぅ~ん、で、どちらから別れを切り出したの?」
占い師は驚くほど冷静に、七実に聞いてくる。
「私!」
占い師の冷静さとは逆に、七実はなかばヤケになって答えた。
しかし占い師は、そんな七実の態度は気にならないのか、さらに質問を重ねてきた。
「なんで?」
うううっ……
七実は内心でうなりながらも……正直に答える。
「私、なぜか昔から待つのが大っ嫌いで……今回も耐えられないと思ったから」
「待つ?」
占い師は横にコテリと首をかしげる。
「あ~っ」
七実は目の前のテーブルに前かがみに上体を傾けると、両ひじを着き、頭を両手で抱えこみながら、彼氏に別れを告げた理由を占い師に説明しはじめた。
「彼氏に海外主張が決まり……」
細かい情報が欲しいとばかりに、占い師からすぐに詳細を尋ねられる。
「何年ぐらい?」
「来年から短くて2年、長くて5年」
「そう……アナタ来年25歳だから、彼氏の海外赴任がもし長期となると……30歳になるわね」
「そうなの!
30歳になっちゃうから……さすがに……ね」
「賢明な判断をしたわりには、暗いわね?」
七実はガバッと顔を上げた。
「待つのは大っ嫌いなんだけど、付き合って6年は長いし……彼自身が嫌いになったわけではないの。
だから……だからこそ、この別れが正しいどうか……自信がない。
それに……」
「それに?」
占い師は顎に右手の指先をかけ、コテリと首を左に傾けた。
なんか……そのポーズ、カワイイかも
自分でやったコトもない行動に、目の前の、しかも初対面の、怪しい占い師に七実は、羨ましいという感情がメラッとわき上がる。
イヤイヤ……そんな感情は、今は置いといて
心の中の冷静なもう1人の七実が、落ち着いた声をかけてきた。
だから落ち着くため、はぁ~と息を吐いた七実だが、次の占い師のひと言に、七実の目は釣り上がる。
「じゃあ、待てば?」
「だから、待つのは、何よりも大嫌いなんだってば!」
「なんで?」
「なんでって……」
そう聞かれると、七実はいつものように口ごもってしまった。
「自分でも不思議なんだけど、コレと言った決定的な出来事は思いあたらないの。
でも……こう……心の奥から、待つという言葉を聞いただけで、拒絶反応がわき上がってきて、気がつくと、待てない!と口にしてるんだ……」
下唇を軽くかんで、うつむいた七実を占い師はしばらく黙ってジッと見つめていたが、やがて七実に声をかける。
「分かったわ。
じゃあ、その原因をふくめて占うわ。
アナタの両手の手のひらを水晶にかざしてくれる?」
「それだけで本当に分かるの?」
七実の問いかけに、占い師は大きくうなずいて、ハッキリと言い切った。
「25秒であなたの全てを占います!」
理由は分からないが、七実はこの占い結果を聞いてみなければ……と思った。
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