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第4章 迫り来る包囲網
43、続・助っ人召喚(しょうかん)<前>
チリリ~ン
通い慣れた酒場の重厚な扉を開けると、開閉した合図として取り付けられた、これまた聴き慣れた涼やかな音が鳴った。
マーガレットは扉からヒョイと顔を覗かせると、入口扉から程近い位置にある、カウンター内でお酒を作っているマスターと目が合う。
マスターは顎を突き出して、いつも座るお気に入りのカウンター席を示したので、マーガレットは身体ごと扉の中に入れ、スルリとカウンター席の奥から3番目に座った。
マスターがこの席に案内したってことは、従兄弟のケネスはまだ来ていないってこと?
そう思いながらマーガレットは、目の前に来たマスターに注文する。
「季節の果物ジュース」
注文を聞いたマスターは、形の良い太い眉を少しだけクイッと上げ、マーガレットに確認する。
「ジュースでいいんだな?」
「そうなの、今日は従兄弟と待ち合わせしていて、話が終わってから、ゆっくりお酒を飲むことにするわ」
「従兄弟はさっきまでお前の席に座っていたぞ。
だが、目をギラつかせた女たちに奥へと連れて行かれた」
ケネス、もう来てたんだ!
マーガレットは軽く驚いたが、マスターからの情報を聞くと、従兄弟がココに戻って来るのは少し時間がかかりそうだと判断する。
母方の2人いる従兄弟のうち、次男であるケネスも、エドワード様と同じ、あの王太子様の近衛騎士だ。
恋愛も業務の糧とせよ!とする近衛騎士の方針をそのまま受け入れ、少しタレ目で、マリコさんの言葉を借りると、イイトコの坊ちゃんらしく、どの女性にも優しく接し、すぐ打ち解ける特技を持つ彼は、エドワード様ほどではないが、かなりモテると、噂と本人(!)から聞いていた。
ギラついた目ってコトは修羅場だよね?
仕方ない……大人しく待つか
すぐに渡されたジュースを右手で飲み、もう左手には少し膨れた布袋を抱え、しかも頭から黒いフードを被った、いつもの服装とは違うマーガレットに違和感を覚えたのだろうか……注文の品を置いたらいつもはサッサと仕事に戻るマスターが、また話しかけてきた。
「その格好はなんだ?」
今日のマスターも、マリコ語でいうところのイケオジ感がパネぇ?
マスターに答えを返す前に、ズリ下がってくる外套のフードの下から、体格も良く、昔も今もさぞかしモテているであろう、端正な顔立ちをした、カッコいいオジ様マスターをそっと見上げた。
聞かれたマーガレットはグラスを一旦カウンターの上に置くと、すぐ目にかかってくるフードを指で軽く摘んで、説明する。
「ああっ、コレ?
待ち合わせしている従兄弟に、今日は地下に連れていくから、フードを被って来いって言われてさぁ~」
もともとこの酒場は、ケネスの父であり、マーガレットの実母の弟である叔父に紹介されてマーガレットは通い始めたのだが、地下にも席があるっていう事を、長く通っているマーガレットは知らなかったし、生存確認と称してここで叔父と時々飲んだりするが、その叔父からも聞いたこともない。
もちろん、目の前にいる叔父の知り合いだという、イケオジマスターからもだ。
だが、今回のマスターは違った。
俄かに表情を引き締め、真剣な眼差しで再びマーガレットに問う。
「マーガレット、何をするんだ?」
ええっ!何?
今まで見たこともない真剣な表情のマスターに、マーガレットは驚き、つい焦って、自分の秘密任務をペラっと話してしまう。
「あっ……あっ、あのね!
わっ、私、ケネスの知り合いの人から上着を借りてて、それを汚してしまい……洗濯して返そうと思ったんだだけど……そっ、その人、今、長い休暇中らしくて会えなくて。
私の代わりに上着を返してもらおうと、ケッ、ケネスにお願いしようと思うの!」
最初は名を出していないものの、エドワード様関連のため、つっかえながら話し始めたマーガレットだったが、最後はなぜか、宣言するかのように力強く言い切ってしまう。
言い切ったことにより、マーガレットはそれが正しいことのように思えて、うん!と1人勝手に頷いて満足していた。
「なるほど、事情は分かったよ、マギー。
じゃあ、さっそく下に行こうか?」
なのでマーガレットは、背後から急に声をかけられ、同時に肩をポンって叩かれて、死ぬほどビックリした。
愛称で呼ばれたのと声で誰かと分かったので、辛うじて大声を上げずに済んだのだが、まだドキドキする心臓を右手で押さえながら、後ろを振り返る。
そこには、マーガレットと同じフード付きの外套を着ているが、スラリとした長身で、額にかかった金茶色の前髪を気だるげに払った若い男性が立っていた。
エドワード様といい、ケネスといい、王太子近衛軍団って、無駄にキラキラし過ぎだよね
前髪を払っただけなのに、周囲のテーブル席に座っていた他の女性客の顔を赤らめさせたのを確認しながら、本日の待ち人であり、絶対逃してはならない交渉相手である、ケネスの整った顔を見て、マーガレットはそう心の中で呟いた。
通い慣れた酒場の重厚な扉を開けると、開閉した合図として取り付けられた、これまた聴き慣れた涼やかな音が鳴った。
マーガレットは扉からヒョイと顔を覗かせると、入口扉から程近い位置にある、カウンター内でお酒を作っているマスターと目が合う。
マスターは顎を突き出して、いつも座るお気に入りのカウンター席を示したので、マーガレットは身体ごと扉の中に入れ、スルリとカウンター席の奥から3番目に座った。
マスターがこの席に案内したってことは、従兄弟のケネスはまだ来ていないってこと?
そう思いながらマーガレットは、目の前に来たマスターに注文する。
「季節の果物ジュース」
注文を聞いたマスターは、形の良い太い眉を少しだけクイッと上げ、マーガレットに確認する。
「ジュースでいいんだな?」
「そうなの、今日は従兄弟と待ち合わせしていて、話が終わってから、ゆっくりお酒を飲むことにするわ」
「従兄弟はさっきまでお前の席に座っていたぞ。
だが、目をギラつかせた女たちに奥へと連れて行かれた」
ケネス、もう来てたんだ!
マーガレットは軽く驚いたが、マスターからの情報を聞くと、従兄弟がココに戻って来るのは少し時間がかかりそうだと判断する。
母方の2人いる従兄弟のうち、次男であるケネスも、エドワード様と同じ、あの王太子様の近衛騎士だ。
恋愛も業務の糧とせよ!とする近衛騎士の方針をそのまま受け入れ、少しタレ目で、マリコさんの言葉を借りると、イイトコの坊ちゃんらしく、どの女性にも優しく接し、すぐ打ち解ける特技を持つ彼は、エドワード様ほどではないが、かなりモテると、噂と本人(!)から聞いていた。
ギラついた目ってコトは修羅場だよね?
仕方ない……大人しく待つか
すぐに渡されたジュースを右手で飲み、もう左手には少し膨れた布袋を抱え、しかも頭から黒いフードを被った、いつもの服装とは違うマーガレットに違和感を覚えたのだろうか……注文の品を置いたらいつもはサッサと仕事に戻るマスターが、また話しかけてきた。
「その格好はなんだ?」
今日のマスターも、マリコ語でいうところのイケオジ感がパネぇ?
マスターに答えを返す前に、ズリ下がってくる外套のフードの下から、体格も良く、昔も今もさぞかしモテているであろう、端正な顔立ちをした、カッコいいオジ様マスターをそっと見上げた。
聞かれたマーガレットはグラスを一旦カウンターの上に置くと、すぐ目にかかってくるフードを指で軽く摘んで、説明する。
「ああっ、コレ?
待ち合わせしている従兄弟に、今日は地下に連れていくから、フードを被って来いって言われてさぁ~」
もともとこの酒場は、ケネスの父であり、マーガレットの実母の弟である叔父に紹介されてマーガレットは通い始めたのだが、地下にも席があるっていう事を、長く通っているマーガレットは知らなかったし、生存確認と称してここで叔父と時々飲んだりするが、その叔父からも聞いたこともない。
もちろん、目の前にいる叔父の知り合いだという、イケオジマスターからもだ。
だが、今回のマスターは違った。
俄かに表情を引き締め、真剣な眼差しで再びマーガレットに問う。
「マーガレット、何をするんだ?」
ええっ!何?
今まで見たこともない真剣な表情のマスターに、マーガレットは驚き、つい焦って、自分の秘密任務をペラっと話してしまう。
「あっ……あっ、あのね!
わっ、私、ケネスの知り合いの人から上着を借りてて、それを汚してしまい……洗濯して返そうと思ったんだだけど……そっ、その人、今、長い休暇中らしくて会えなくて。
私の代わりに上着を返してもらおうと、ケッ、ケネスにお願いしようと思うの!」
最初は名を出していないものの、エドワード様関連のため、つっかえながら話し始めたマーガレットだったが、最後はなぜか、宣言するかのように力強く言い切ってしまう。
言い切ったことにより、マーガレットはそれが正しいことのように思えて、うん!と1人勝手に頷いて満足していた。
「なるほど、事情は分かったよ、マギー。
じゃあ、さっそく下に行こうか?」
なのでマーガレットは、背後から急に声をかけられ、同時に肩をポンって叩かれて、死ぬほどビックリした。
愛称で呼ばれたのと声で誰かと分かったので、辛うじて大声を上げずに済んだのだが、まだドキドキする心臓を右手で押さえながら、後ろを振り返る。
そこには、マーガレットと同じフード付きの外套を着ているが、スラリとした長身で、額にかかった金茶色の前髪を気だるげに払った若い男性が立っていた。
エドワード様といい、ケネスといい、王太子近衛軍団って、無駄にキラキラし過ぎだよね
前髪を払っただけなのに、周囲のテーブル席に座っていた他の女性客の顔を赤らめさせたのを確認しながら、本日の待ち人であり、絶対逃してはならない交渉相手である、ケネスの整った顔を見て、マーガレットはそう心の中で呟いた。
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