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第4章 迫り来る包囲網
44、続・助っ人召喚(しょうかん)<中>
「マギー、ここに降る階段がある。
気をつけて」
マスターから渡された灯りで足元を照らしてくれながら、さりげなくマーガレットの片手を取り、先導してくれるケネスのソツのない動作に、さすがモテ男は違う!とマーガレットは心の中で唸る。
マーガレットたちが移動している地下への入口は、イケオジマスターがいるカウンター内の奥に設置されていて、マスターの許可がないと入れない仕組みになっていた。
利用客はやはりというか、何かしら人目を憚るらしく……怪我で引退するまでは、マスターはそれなりの腕を持ち、人望のある騎士だった関係で、お客の中にはある程度高貴な身分の方も、お忍び先として利用するらしい。
そして地下を利用する客は予約を必ず取り、来店時には予約の合図代わりのフード付き外套を着用、入退店時には、どういう人物が利用しているかの店側の安全対策のため、カウンター内にいるマスターに、顔面を晒すことも必須条件である。
地下にある席に着くまでの間、マーガレットはケネスから、そう説明を受けていた。
なるほど……今回ケネスに会うにあたり、とにかく人目を避けたいと私が手紙に書いたから、配慮してくれたんだ
マーガレットは、ケネスの心遣いに深く感謝した。
「さぁ、着いたよ、マギー。
中は暗いから、手は繋いだままにしておくけど、いいかな?」
「ええ、いいわ」
マーガレットは初めて訪れる場所だし、地上の明るい店内とは違い、地下の店内は薄暗いが、ケネスは迷わず中へ進んでいく。
ケネスに引っ張られながら、マーガレットはあまり大袈裟にならないよう、控えめに店内を見渡した。
人目を避けたい客が利用すると聞かされたこともあって、広々とした店内には、テーブル席同士は、かなり離れて設置されている。
今は遠くのテーブルに、同じくフードを被ったままの4人組がいるだけであった。
良かった、人が少なくて……あとは何としてもケネスにこの荷物を渡さなくては!
マーガレットが脇に抱えている荷物を持つ腕にそっと力を込めた瞬間、ケネスから声がかけられる。
「マギー、この席を使おうか?」
「いいわよ」
ケネスはわざわざ回り込んで、マーガレットのために椅子を引いてくれ……普段そんな扱いをされたことがないマーガレットは、思わぬ嬉しさで顔がニヤニヤしてしまった。
そしてタイミングを図ったかのように、どこからともなく給仕の男性が現れ注文を聞いてきたので、マーガレットは再度ジュースを注文しながら、ついその男性の顔を凝視する。
ケネスはお酒を注文し、給仕の男性が注文の品を置いて立ち去ったところで、マーガレットはさっそくケネスから尋ねられた。
「マギー、すっごい見ていたけど、あの給仕の人、知り合い?」
「ううん、初めて会ったけど、あの人、めちゃくちゃ顔がキレイじゃなかった?」
興奮のあまり、マーガレットは少しだけ声が大きくなってしまう。
「へぇ、マギーはああいうのが好みなの?」
少しばかり目を輝かせてケネスが答えると、離れた場所で大きな咳払いが聞こえた。
「ヴ、ウホォン、ゴッホン」
マーガレットは、ハッとして思わず手で口を押さえる。
「ごっ、ゴメン、ちょっと声が大きかったわよね?」
「いや?そうかな?」
咳払いされたことが気に食わないのか、ケネスは音の発生源である4人組テーブルをジッと見つめていたが、やがて何かに驚いたかのように、目を少し大きく見開いた。
「どうしたの?
もしかして知り合いでもいた?」
マーガレットは、4人組に背を向けて座っているため、どういう人物がそこにいるのか分からない。
もちろん自分もだが、ここは人目を気にする利用客が使用する場所なので、振り向いてわざわざ確認するのも失礼だと思い、マーガレットはまずケネスに聞いてみた。
「アイツ……」
ケネスは小さくそう呟くと、マーガレットに視線を戻し、小さく首を横に振る。
「知り合いによく似ているようだったけど、違ったみたいだ」
あの巨大暗黒組織であるファンクラブの情報網を侮ってはならず、目を付けた人物の、どんな小さな情報も拾い上げ結びつけ、地の果てまで追っかけて見つけ出し、制裁を加えると言われている。
だから、もしケネスがあの4人組と知り合いだと認めていたら、彼らを疑うのは申し訳ないが、彼らから情報が漏れる可能性が排除できないため、マーガレットは今日ケネスに荷物を渡すことを諦めるつもりだったのだ。
マーガレットは撤退しなくて済んだことに心底ホッとし、お願いするなら今だとばかりに、ケネスの片手を自分は両手でガッシリと握りしめ、さらに顔をズイッと前に突き出して、話し始めた。
「実は私があるモノを持っていることで、巨大暗黒組織に追われているの。
だから、それを本来の持ち主に返したくて……そのためには、ケネスの協力が絶対に必要なの!」
そう一気に言い切って、マーガレットは布袋をケネスの前に置いた。
「巨大暗黒組織だと?
中を確認していいか?」
大きく頷いたマーガレットを確認すると、ケネスは慎重に袋の中身を覗き込む。
瞬時にケネスの顔色が変わった。
「お前だったのか、マギー!」
ケネスは声を抑えながらも、小さく叫んだ。
気をつけて」
マスターから渡された灯りで足元を照らしてくれながら、さりげなくマーガレットの片手を取り、先導してくれるケネスのソツのない動作に、さすがモテ男は違う!とマーガレットは心の中で唸る。
マーガレットたちが移動している地下への入口は、イケオジマスターがいるカウンター内の奥に設置されていて、マスターの許可がないと入れない仕組みになっていた。
利用客はやはりというか、何かしら人目を憚るらしく……怪我で引退するまでは、マスターはそれなりの腕を持ち、人望のある騎士だった関係で、お客の中にはある程度高貴な身分の方も、お忍び先として利用するらしい。
そして地下を利用する客は予約を必ず取り、来店時には予約の合図代わりのフード付き外套を着用、入退店時には、どういう人物が利用しているかの店側の安全対策のため、カウンター内にいるマスターに、顔面を晒すことも必須条件である。
地下にある席に着くまでの間、マーガレットはケネスから、そう説明を受けていた。
なるほど……今回ケネスに会うにあたり、とにかく人目を避けたいと私が手紙に書いたから、配慮してくれたんだ
マーガレットは、ケネスの心遣いに深く感謝した。
「さぁ、着いたよ、マギー。
中は暗いから、手は繋いだままにしておくけど、いいかな?」
「ええ、いいわ」
マーガレットは初めて訪れる場所だし、地上の明るい店内とは違い、地下の店内は薄暗いが、ケネスは迷わず中へ進んでいく。
ケネスに引っ張られながら、マーガレットはあまり大袈裟にならないよう、控えめに店内を見渡した。
人目を避けたい客が利用すると聞かされたこともあって、広々とした店内には、テーブル席同士は、かなり離れて設置されている。
今は遠くのテーブルに、同じくフードを被ったままの4人組がいるだけであった。
良かった、人が少なくて……あとは何としてもケネスにこの荷物を渡さなくては!
マーガレットが脇に抱えている荷物を持つ腕にそっと力を込めた瞬間、ケネスから声がかけられる。
「マギー、この席を使おうか?」
「いいわよ」
ケネスはわざわざ回り込んで、マーガレットのために椅子を引いてくれ……普段そんな扱いをされたことがないマーガレットは、思わぬ嬉しさで顔がニヤニヤしてしまった。
そしてタイミングを図ったかのように、どこからともなく給仕の男性が現れ注文を聞いてきたので、マーガレットは再度ジュースを注文しながら、ついその男性の顔を凝視する。
ケネスはお酒を注文し、給仕の男性が注文の品を置いて立ち去ったところで、マーガレットはさっそくケネスから尋ねられた。
「マギー、すっごい見ていたけど、あの給仕の人、知り合い?」
「ううん、初めて会ったけど、あの人、めちゃくちゃ顔がキレイじゃなかった?」
興奮のあまり、マーガレットは少しだけ声が大きくなってしまう。
「へぇ、マギーはああいうのが好みなの?」
少しばかり目を輝かせてケネスが答えると、離れた場所で大きな咳払いが聞こえた。
「ヴ、ウホォン、ゴッホン」
マーガレットは、ハッとして思わず手で口を押さえる。
「ごっ、ゴメン、ちょっと声が大きかったわよね?」
「いや?そうかな?」
咳払いされたことが気に食わないのか、ケネスは音の発生源である4人組テーブルをジッと見つめていたが、やがて何かに驚いたかのように、目を少し大きく見開いた。
「どうしたの?
もしかして知り合いでもいた?」
マーガレットは、4人組に背を向けて座っているため、どういう人物がそこにいるのか分からない。
もちろん自分もだが、ここは人目を気にする利用客が使用する場所なので、振り向いてわざわざ確認するのも失礼だと思い、マーガレットはまずケネスに聞いてみた。
「アイツ……」
ケネスは小さくそう呟くと、マーガレットに視線を戻し、小さく首を横に振る。
「知り合いによく似ているようだったけど、違ったみたいだ」
あの巨大暗黒組織であるファンクラブの情報網を侮ってはならず、目を付けた人物の、どんな小さな情報も拾い上げ結びつけ、地の果てまで追っかけて見つけ出し、制裁を加えると言われている。
だから、もしケネスがあの4人組と知り合いだと認めていたら、彼らを疑うのは申し訳ないが、彼らから情報が漏れる可能性が排除できないため、マーガレットは今日ケネスに荷物を渡すことを諦めるつもりだったのだ。
マーガレットは撤退しなくて済んだことに心底ホッとし、お願いするなら今だとばかりに、ケネスの片手を自分は両手でガッシリと握りしめ、さらに顔をズイッと前に突き出して、話し始めた。
「実は私があるモノを持っていることで、巨大暗黒組織に追われているの。
だから、それを本来の持ち主に返したくて……そのためには、ケネスの協力が絶対に必要なの!」
そう一気に言い切って、マーガレットは布袋をケネスの前に置いた。
「巨大暗黒組織だと?
中を確認していいか?」
大きく頷いたマーガレットを確認すると、ケネスは慎重に袋の中身を覗き込む。
瞬時にケネスの顔色が変わった。
「お前だったのか、マギー!」
ケネスは声を抑えながらも、小さく叫んだ。
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