27 / 252
いざゆけ魔法学校
6
しおりを挟む
「と、いうわけで。こんなふうに高いところから落ちた時、ある程度の高さなら緩和することができる。飛行試験だと基本中の基本だ、分かったら授業を聞くように」
腰に両手を当てぐるりと見回せば、大抵の新入生はポカンと口を開けていた。中の数人は白けた顔で見てきている。おおかた、魔法があれば危険性もないのに何の茶番を……みたいな顔だろう。
残念ながら俺は魔法が使えないぜ。
だが今俺は呼び出す以外の魔法を使ったと思われている。
「……あの」
「ん?」
「沈んでいってるんですけど……」
「奇遇だな、俺もそう思っていた」
ずぶずぶずぶ。
地面だと思っていたところは地面じゃなかった。
な、何を言ってるのか分からねーと思うが俺も分からねーぜ……!
頼りになる四年監督生の顔を崩したくないのでニコリと笑いかけておくが本当に訳がわからない。
地面が盛り上がっている。明らかに。一メートルくらい。
しかもよく耕された畑みたいにフッカフカだ。堆肥撒かれてなくてよかったー!
先ほどまでこんなふっかふかに盛り上がっていなかったはずなのに今はこれ。ゴーレムでも作るのか?
「……セリオン! 俺は勝手な魔法の行使を許可していないはずだが?」
「……っ」
「え、あれセリオン様……!?」「すごい、あんな大規模な土魔法」「兄思いな方なんですねぇ」
わぁなんかセリオンの株が上がってる! うれし~そうなんですうちの弟は魔法も使えない兄貴をきちんと大事にしてくれている世界でいちばん良い子な超絶ハイパーキュートエンジェルなんです。
「褒めるんじゃない。許可されていない魔法の行使は拘束で禁じられている……俺はお前達の先輩であり、現在は教師でもある。今すぐ解除しろ」
「……でも」
「二度言わせる気か?」
「……」
セリオンが可愛い下唇を噛む。ごめんねお兄ちゃんもあまり厳しくしたくないんだ、でも魔法使用時の魔力に釣られて魔物って寄ってくるから……。
ふわふわの土山がポンと消失する。一メートルほど落ちる前にトランクを持てばまた軽く上に引かれ、着地した。
「セリオン様、かわいそう……」「せっかく助けようとしたのに、あんな言い方ある?」「なんか怖い……」
ヒソヒソされる内容がいちいち刺さる。でも特別扱いしたらしたで今度は教師と同級生から睨まれるんだよなぁ。いや、それに新入生は関係ないか……
(まあ良いか。嫌われ役になってでも規律は覚えてもらおう)
何しろここにいる生徒はその誰もが保護者に愛され大切にされてきた宝物達。そうでなければ何もかもが高額な魔法道具を一式揃え、遠いこの島に入学させるはずがない。
箒を使った飛行は特に危険なものだ。無意識下でも発動する程度には叩き込まないと。
「良いか、新入生──この学校にある規律は全て意味があるものだ。破ればタダで済まないものだと思え」
じっとこちらを見てくるセリオンからわざと視線を逸らしながら、俺は講義に移った。
……えっ、お前は危険飛行してたじゃないかって!? いや俺はほら、死んでもさして惜しむ人はいないし……ねっ!
腰に両手を当てぐるりと見回せば、大抵の新入生はポカンと口を開けていた。中の数人は白けた顔で見てきている。おおかた、魔法があれば危険性もないのに何の茶番を……みたいな顔だろう。
残念ながら俺は魔法が使えないぜ。
だが今俺は呼び出す以外の魔法を使ったと思われている。
「……あの」
「ん?」
「沈んでいってるんですけど……」
「奇遇だな、俺もそう思っていた」
ずぶずぶずぶ。
地面だと思っていたところは地面じゃなかった。
な、何を言ってるのか分からねーと思うが俺も分からねーぜ……!
頼りになる四年監督生の顔を崩したくないのでニコリと笑いかけておくが本当に訳がわからない。
地面が盛り上がっている。明らかに。一メートルくらい。
しかもよく耕された畑みたいにフッカフカだ。堆肥撒かれてなくてよかったー!
先ほどまでこんなふっかふかに盛り上がっていなかったはずなのに今はこれ。ゴーレムでも作るのか?
「……セリオン! 俺は勝手な魔法の行使を許可していないはずだが?」
「……っ」
「え、あれセリオン様……!?」「すごい、あんな大規模な土魔法」「兄思いな方なんですねぇ」
わぁなんかセリオンの株が上がってる! うれし~そうなんですうちの弟は魔法も使えない兄貴をきちんと大事にしてくれている世界でいちばん良い子な超絶ハイパーキュートエンジェルなんです。
「褒めるんじゃない。許可されていない魔法の行使は拘束で禁じられている……俺はお前達の先輩であり、現在は教師でもある。今すぐ解除しろ」
「……でも」
「二度言わせる気か?」
「……」
セリオンが可愛い下唇を噛む。ごめんねお兄ちゃんもあまり厳しくしたくないんだ、でも魔法使用時の魔力に釣られて魔物って寄ってくるから……。
ふわふわの土山がポンと消失する。一メートルほど落ちる前にトランクを持てばまた軽く上に引かれ、着地した。
「セリオン様、かわいそう……」「せっかく助けようとしたのに、あんな言い方ある?」「なんか怖い……」
ヒソヒソされる内容がいちいち刺さる。でも特別扱いしたらしたで今度は教師と同級生から睨まれるんだよなぁ。いや、それに新入生は関係ないか……
(まあ良いか。嫌われ役になってでも規律は覚えてもらおう)
何しろここにいる生徒はその誰もが保護者に愛され大切にされてきた宝物達。そうでなければ何もかもが高額な魔法道具を一式揃え、遠いこの島に入学させるはずがない。
箒を使った飛行は特に危険なものだ。無意識下でも発動する程度には叩き込まないと。
「良いか、新入生──この学校にある規律は全て意味があるものだ。破ればタダで済まないものだと思え」
じっとこちらを見てくるセリオンからわざと視線を逸らしながら、俺は講義に移った。
……えっ、お前は危険飛行してたじゃないかって!? いや俺はほら、死んでもさして惜しむ人はいないし……ねっ!
494
あなたにおすすめの小説
モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた
マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。
主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。
しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。
平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。
タイトルを変えました。
前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。
急に変えてしまい、すみません。
平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます
クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。
『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。
何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。
BLでヤンデレものです。
第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします!
週一 更新予定
ときどきプラスで更新します!
BLゲームの脇役に転生したはずなのに
れい
BL
腐男子である牧野ひろは、ある日コンビニ帰りの事故で命を落としてしまう。
しかし次に目を覚ますと――そこは、生前夢中になっていた学園BLゲームの世界。
転生した先は、主人公の“最初の友達”として登場する脇役キャラ・アリエス。
恋愛の当事者ではなく安全圏のはず……だったのに、なぜか攻略対象たちの視線は主人公ではなく自分に向かっていて――。
脇役であるはずの彼が、気づけば物語の中心に巻き込まれていく。
これは、予定外の転生から始まる波乱万丈な学園生活の物語。
⸻
脇役くん総受け作品。
地雷の方はご注意ください。
随時更新中。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼2025年9月17日(水)より投稿再開
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる