悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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いざゆけ魔法学校

7

「おっ、学級長じゃーん」
「……」

一年生達の指導を終えて昼休み。
にわかに騒がしくなった渡り廊下でヴィンセントに遭遇した。その両脇には、取り巻きであるタイプ違いの少年が二人。
ヴィンセントはメインヒーローにしては珍しく盲目的な取り巻きがいるし、ゲームにおいてのアーノルドはその一人である。

「何か用か? ヴィンセント殿下」
「は? いや、用とかは特にねぇけど」
「そうか、俺からは用がない。では失礼」

しかし今は違う──
自由奔放な性格の奴らが多い我が獅子寮において統率を取れる俺みたいなのは希少らしく、教師には重宝され生徒達には蛇蝎の如く嫌われている。
なかなか凄いぞ、俺は一年生の頃先生に『生徒がこんなに話を聞いてくれるのは初めてだ』とか言われたからな。

傾聴能力のある魔法使いは相当希少らしく、俺はその点においてなろう小説みたいなことが言える。何故なら話を聞き指示を守るだけでざわつかれるので……。

「ちょちょちょちょーーい。何行こうとしてんの」
「用事がないからだが?」
「いやそうだけど……」
「今日は不純同性交友を行っていないみたいで何よりだ。それでは」
「はぁ!?!?」

この世界はどうにかすれば男でも妊娠できるからな。ここは全寮制男子魔法学校であるので、教師陣以外の女性がいない。とはいえその中の女性にも手を出すのがヴィンセントという男だが……。

気持ちのいいことに目がないヤツは取り巻きの男にも手を出しており、ゲームの俺はそのうちの一人だった。

「王子? どうしたんです今日は学級長に絡んで」
「ごめんねぇ学級長~。もうヴィンセント、真面目ちゃん揶揄うのもほどほどにしなよ?」

取り巻き二人が俺に絡もうとするヴィンセントを止めるのを横目で見ながら、俺はさっさとその横をすり抜けていった。いちいちかかずらってたら時間がなくなってしまう!

「だっ誰が真面目ちゃ……あーーっこら何逃げてんだ!」

逃げてねーーし。
ヴィンセントは友達いないし、なんか懐かれたのだろう。お前が友達を全部セックスのつく方に変えていくのが悪いんだぞ。
四年生にもなればそれ目的の奴らしか寄ってこなくなるんだからな!

(大体あいつ俺より年下だろ? 末恐ろしすぎる……)

俺なんて前の記憶の影響で未だ道半ば──童貞であるというのに。別に積極的に卒業したいわけじゃないけどさ、今更!
というか卒業したとなれば毎日のようにハニトラとかされそうで嫌だ。一時期精通した時にそれがあり、最終的にローズが送られてきて大変気まずい思いをしたものだ。

我が校には代表的な施設がいくつかあるが、そのうちの一つに食堂がある。
王族やそれに連なる貴族のために毒味役も完備、各地方の特産品を兼ね揃えた我がアルカディア王国の台所。
特に王都アルターの郷土料理であるアルター焼きは、王国民全員に馴染みのある味だ。

並べられた料理が新鮮なようで、先ほど見て覚えた一年生らしき生徒たちがピカピカのローブを羽織り、周囲を見回していた。
受付にもちゃもちゃと並ぶその中からいっそう低い頭を見つけ出し、同時にコバルトブルーの子猫を思わせるアーモンド・アイがこちらを捉えた。

「!」
「ようやく見つかった。セリオッ、!?」

ふわふわの銀髪が一瞬消え人ごみに紛れたかと思ったら、次の瞬間には鳩尾に突撃されていた。
小さな頭が思い切りダメージを叩き出す。うーん頭が柔らかい攻撃をする割にガッチガチだな!

「っな、なん、……何……」
「なんでもない!」
「そ、そうか」

頭突きの衝撃からたちかえれば、可愛い弟が俺のお腹をぎゅうっと抱きしめていた。ちっちゃいおててが白くなるほど握りしめられている。
──エッ。もしかして、寂しかった……?

理性はそうではないだろと叫ぶが、俺はいつでも本能の味方!! やりたい方向に解釈します!! セリオンは俺に特別扱いをされなくて寂しかった、何故なら俺が好きなのではいQED!
俺はセリオンの小さな背中を少し屈んで叩き、お尻を支えて抱き上げる。

「っわ、なに……っ」
「すまない、アルター焼きを二つ。持ち帰りで」

わらわらいる一年生を高速で捌いていたシェフが俺の注文を聞き快く頷いた。そして秒で帰ってくるほっかほかのアルター焼き。これは前の順番を飛ばしているわけではなく、シンプルにシェフの提供速度が高速なだけである。

シンプルにシェフの提供速度が高速って何??

「手が冷たいぞ、持っていろ」
「…………うん」

あら素直、珍しい。
セリオンに声がかけたかったのかチラチラ見ていたほか生徒には申し訳ないが、まあ今日はほどほどにしておいてくれ。昼休み終わりから交友のためのレクリエーションあるから仲良くしてあげてね!

アルター焼きを二つとも持たせ、俺は食堂からさっさと出ていく。
いざ、可愛い弟のメンタルケア!

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