悪役令息に転生したので、死亡フラグから逃れます!

伊月乃鏡

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二年目の魔法学校

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目が覚める。
昔の夢を見たな、と起き上がる。あまりいい思い出ではないが、呪いをかけた時には確かに、もう誰も傷つくことはないんだと嬉しくなったんだ。そのために勉強してきたのだと……。

(……ん? なんで俺夢見て……?)

ここで嫌な予感が走る。最後の記憶といえばドライフラワーの如く縛ったアバロンを部室に連れて帰ってきて──帰ってきて、それで──?

「おい。早く退かんか魔力無し」
「……あ?」

なんか地面が生ぬるい気がして顔を上げれば、目の前にアバロンの顔があった。攻略対象だけあって不健康だが整った美形である、これをもう少しシャンとすれば社交界の一躍スターとなれるというのに。今度の休みに連れてってみよかな。

──なんてことを思いながら言葉を口にした瞬間、一気に喧騒が耳に入る。

「ぶっ、部長ーーー!!!!!!!!! ようやく目が覚めたんでござるなもうだめかと思ったでござる!!!!」
「せっ、せんぱ、せんぱいぃ~……」

うっうるせ~!! ワッッと一気に喋るんじゃない!!

泣いているユミル。フィッシュに抱き抱えられフィレオが後ろの方で困っているのが見えた。ん? なんだ?? どういうことだ??
いやわからん。わからんが概ねわかった

「どうせお前の仕業だろアバロン……!!」
「む。何を根拠に言っている、こうして大人しく下敷きになってやっているこの吾輩に──」
「アバロン殿が部長の後ろから何か嗅がせて、それ以降部長が昏倒してェ~! もうダメかと思ったでござる!」
「成分分析したら致死量の毒でっ、先輩最後の力でその人を拘束してたんです! でも代わりに私たちからも手が出せなくてっ……」

なるほど理解した。こいつは次から磔にしておいた方がいいみたいだな。
どうやら何かの拍子で拘束が解けてしまい、アバロンが自由の身にでもなったのだろう。
常識は理解だけしており良識も道徳心もないアバロンはその隙に俺を昏倒させついでに人体実験なんかするつもりだったと予想する。
何しろ、そうでなければここまですんなりついてくるわけがない。

「ふむ。家畜用の強い毒では足りんかったか。つくづく吾輩を困らせる外れ値め……」
「うん。お前が一年の頃から仕込んでこなかったらこんな耐性もついてないんだわ」
「吾輩にまだ愚かな配慮が残っていた頃の話か?」
「そう、俺がまだお前とお友達になれるかもなんて幻想を抱けるくらい可愛かった頃の話だ」

魔物錬成とかいう心底ヤバいことをしている身でアバロンの良識に対してとやかく言う資格もないが。ともかくこいつは人間の尺度で測れない価値観の持ち主だからな。

一年の頃は護衛兼お目付役の俺を煩わしく思ったのか何度も毒を盛って逃走を図り、実験材料にされ、盾にされ毒見役にされ、どうにか生き延びてきた結果がこれだ。
家畜用の毒で死なない公爵。これだけ聞くと適性が高いな異常に……。

「ほ、本当に生きててよかった…………危うく部室が消えるところでしたよ」
「部室が消える??」

深くため息をつくユミルには俺が生き返った(死んでないけど)からだけではない何かを感じた。と言うか率直に嫌な予感がする。

何しろ周囲を見回してみれば幾つかの機械が破損しているし、アバロンが思っていたより不機嫌そうではないから。

……またなんか余計なことをしたのだろうか。だからできる限り関わりたくなかったのだが……。

「なに、大してことはしていないよ。むしろ感謝されてもいいくらいだ。あの愚かな白い間抜けに、これからも生きる希望を──ッガァ!?」

おいお前今なんつった。
起きあがろうとしたアバロンの首をを掴み床に貼り付ける。手足をばたつかせて抵抗しようとしたが、足を二本へし折ればギャッと悲鳴を上げて大人しくなった。アバロンは果てない自分への人体実験で回復力が異常だ、どうせ数分もすればまた動かせるようになる。

そんなことはどうでもいい。

「もしそれがセリオンの事を指しているなら、お前の命はない。何をした」
「ヒ、ヒヒ……そう言われて素直に教えるとでも、」
「少し分かりづらかったな、お前に拒否権はない。また黙秘権も存在しない。今お前にできる唯一の延命は素直に全てを話す事だ」

首にかけた手に力を入れれば、俺が本気だと察したのかアバロンは不愉快そうに眉を顰めた。
だが次の瞬間笑みに変わる。人を食ったような馬鹿にする笑顔ではなく、心から得れしそうな無邪気な顔に。

「……貴様、弟のためにそこまで狂えるか」
「いいから答えろ」
「異常者め! なんて可愛いやつだ、あとで吾輩に愛でられる権利をやろう……おっとあまり怒るな、すぐ教えてやるから」

鮮血のような瞳が愉しげに細められた。ユミルやフィレオフィッシュが遠巻きに怯えたように見ている中で、ボサボサの長髪の奥から美しい顔が俺を見据えた。殺されかけてるってのによくこんな顔が出来るな。

(事と次第によってはほんとに殺そう……)

元々セリオンに手を出されたなら生かすような理由もない。
耳元で、アバロンになにをセリオンにやったかこっそり囁かれる。囁かれ──んん?

「そ、そんなことで?? お前、腑抜けたんじゃないのか?」
「フン、まぁ本気でそう思える部長殿もやはり異常だが……おい怒るなつまらん。貴様のような化け物が守る子供に本気で手を出すと思っているのか?」

ひとまず今日はセリオンと俺の顔合わせは後回しにして──ここにいなくともよく活動しているのは知られているので容赦されるだろう──アバロンを置いていくか。
なぜか今日は機嫌がいい。年に2日くらいしかないこういう日は、無償で俺に都合のいい事をしてくれるのだ。

「そろそろヴラド先輩も到着するしな」
「は?」「えっ」
「ワシじゃよ♡ やっぱアバロンちゃんだけじゃと心配じゃからな」

どこからきたんだこの人。
後ろから抱きついてくるヴラド先輩を引き剥がし、部室にいないらしいセリオンを探す。
全くあいつは本当に余計なことしかしない……!
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