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『君と待つ光』
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君と待つ光。別名キミヒカ。
大人気覇権BLゲームこと俺の作ったゲームにおいて、主人公のルースは色々な面を秘めている。例えば、話題になったもので言えばヤンデレルート。これは攻略対象の一人、セリオン=フィレンツェを攻略した際のルート分岐の一つだ。
攻略対象との好感度ゲージと主人公から攻略対象への好感度ゲージはそれぞれ違っていて、主に後者でルート分岐する。基本的に相手からの好感度が足りなかった場合悲恋ルートに行くのだが、セリオンルートでは違う。
(自分の思いが叶わないと知ったルースは、強硬手段に出るんだよな……)
それがヤンデレルート。もとい、破れ鍋に綴じ蓋エンドである。セリオンが身を引こうとしてルースに捕まる流れは入り方の難しさもあって当時話題を呼び、俺も鼻高々だったものだ。
まぁ、ルース推しの方々から毒マシュマロなどをいただいたこともあるが。うるせぇ! ルースはそのちょっと危ういところも魅力なんだよ!! 俺が公式だ!!!!!!!
(で、ルースが一番安定するのはさすが、正ヒーローであるヴィンセントのルートだな)
ヴィンセントの心の闇と寂しさをルースの慈愛が埋めていくルートだ。若干怪しいところもあるが、アダルティでアングラな雰囲気を目指したセリオンルートと違い、まさに正式ルートと呼べるほどに王道を重ねている。
俺はセリオンルートも好きだけどね。めちゃくちゃ筆乗ったし。
「……お前、今年入学っていうルース? なんでここに……」
「す、すみませっ、申し訳ございません! 僕、迷ってしまって……」
そしてそんな正式ルートの序盤。入学式で大迷いしたルースがヴィンセントと出会う瞬間を、俺はこっそり眺めていた。
「……ねぇ。呼び出したと思ったら、何見せられてんの」
「シッッ!!!!!!!!!」
──セリオンを伴って。
美しい校舎内の中庭。珍しく一人でそこの花を眺めていた王子に、迷子のルースが声をかけるのだ。記憶喪失であり平民のルースは王子の顔を知らず、ヴィンセントは肩書を見ない彼との穏やかな交流に知らず心惹かれていく。その大事なシーンであり、中庭はこれからもヴィンセントとルースのメイン逢瀬スポットとしてよく出てくる。
俺も何回ここを選択してランダム出現のヴィンセントにキレたか知らない。原作者なのに全然出てこなくて。何? あいつ。
(原作のヴィンセントは、見るからに平民のルースに警戒心をあらわにする。自分に取り入ろうとする相手だと思ったからだ……冷たい態度のヴィンセントに、優しいルースが真心で接して……お互いの誤解が解けるんだが)
その為に今回、セリオンに学校へ着いたら二人きりですぐ会いたいと手紙を送っておいたのだ。滅多に呼び出さないから、緊急事態だと思ったらしいセリオンは案内もそこそこに俺の元へ来た。
ルースはいい子なんだがそそっかしく、一度の案内ではここを踏破できなかったらしい。予想通り迷い、出会ってくれたが──
「あっ! ええと、ヴィンセント殿下でしょうか? アーノルド様のご友人の……お噂はかねがね……」
「あー……フィレンツェのどこの下働き? そういや、一人オトートくんと同じようなチビが居たな! うわっ、おっきくなったねー」
「そうですそうです! 本日入学することとなったのですが、迷ってしまって……」
「へぇ、めでて~じゃん。入学式あっちだよ」
あっ、あれ!?!?!?!?!?
なんかそこまで仲良くないが悪くもない親戚と久々に会ったみたいな反応なんだけど!!
クラスで絡みなかったけど何回かカラオケ行ったよね笑みたいな絡み方やめて????
ヴィンセントがスマートにルースをエスコートする。……のはスチルで見た通りだが、それの以降が早すぎる。本来はもう少し口論とか流れがあって、仕方なくヴィンセントが王子の所作を見せつけるのだ。その流麗な仕草にルースは目を見張り、綺麗な人だなとモノローグが流れる……みたいな感じなのに。
「ルース、普通に笑ってるし……! いやいいけどねまだ序盤だから! でも冒頭の大事なイベント……ウワースチル美しすぎ、この二人マジで似合うな……」
「ねぇ」
「でもびっくりするくらい緊張感がない……」
すれ違いがあるからこそ大団円が際立つんじゃろがい!
ヤキモキして見守ってみるものの、ヴィンセントがルースの成長に時の流れを感じている姿は変わらない。二歳しか変わらんのに何を歳上ヅラしとるんじゃアイツは。いや、わかるけどね。この歳の二歳下って割と赤ちゃんだよな。昔から知ってるなら特に。
「てか前見た時もっとちっさくなかった? 成長期終わった?」
「は、はい! 一年間かかったのですが……」
おい、カウンセリングをするな。問診の方のカウンセリングを、するな。知ってるんだぞお前セリオンの成長期について相談してからちょっとずつデータとか集めてるの。
二人が遠く見えなくなっていくまでそわそわしていれば、後ろから体重がズッシリと掛かった。
「ねぇ。大事な話って何。二人きりで……って」
「今終わった」
「は?」
「今終わった」
──その後二時間、セリオンが口を聞いてくれなくなり、大変困ったが。まぁポジティブに考えたとしたら、出会いは出会いとしてきちんと果たしたということで。うん、いいことなのではないのだろうか?
大人気覇権BLゲームこと俺の作ったゲームにおいて、主人公のルースは色々な面を秘めている。例えば、話題になったもので言えばヤンデレルート。これは攻略対象の一人、セリオン=フィレンツェを攻略した際のルート分岐の一つだ。
攻略対象との好感度ゲージと主人公から攻略対象への好感度ゲージはそれぞれ違っていて、主に後者でルート分岐する。基本的に相手からの好感度が足りなかった場合悲恋ルートに行くのだが、セリオンルートでは違う。
(自分の思いが叶わないと知ったルースは、強硬手段に出るんだよな……)
それがヤンデレルート。もとい、破れ鍋に綴じ蓋エンドである。セリオンが身を引こうとしてルースに捕まる流れは入り方の難しさもあって当時話題を呼び、俺も鼻高々だったものだ。
まぁ、ルース推しの方々から毒マシュマロなどをいただいたこともあるが。うるせぇ! ルースはそのちょっと危ういところも魅力なんだよ!! 俺が公式だ!!!!!!!
(で、ルースが一番安定するのはさすが、正ヒーローであるヴィンセントのルートだな)
ヴィンセントの心の闇と寂しさをルースの慈愛が埋めていくルートだ。若干怪しいところもあるが、アダルティでアングラな雰囲気を目指したセリオンルートと違い、まさに正式ルートと呼べるほどに王道を重ねている。
俺はセリオンルートも好きだけどね。めちゃくちゃ筆乗ったし。
「……お前、今年入学っていうルース? なんでここに……」
「す、すみませっ、申し訳ございません! 僕、迷ってしまって……」
そしてそんな正式ルートの序盤。入学式で大迷いしたルースがヴィンセントと出会う瞬間を、俺はこっそり眺めていた。
「……ねぇ。呼び出したと思ったら、何見せられてんの」
「シッッ!!!!!!!!!」
──セリオンを伴って。
美しい校舎内の中庭。珍しく一人でそこの花を眺めていた王子に、迷子のルースが声をかけるのだ。記憶喪失であり平民のルースは王子の顔を知らず、ヴィンセントは肩書を見ない彼との穏やかな交流に知らず心惹かれていく。その大事なシーンであり、中庭はこれからもヴィンセントとルースのメイン逢瀬スポットとしてよく出てくる。
俺も何回ここを選択してランダム出現のヴィンセントにキレたか知らない。原作者なのに全然出てこなくて。何? あいつ。
(原作のヴィンセントは、見るからに平民のルースに警戒心をあらわにする。自分に取り入ろうとする相手だと思ったからだ……冷たい態度のヴィンセントに、優しいルースが真心で接して……お互いの誤解が解けるんだが)
その為に今回、セリオンに学校へ着いたら二人きりですぐ会いたいと手紙を送っておいたのだ。滅多に呼び出さないから、緊急事態だと思ったらしいセリオンは案内もそこそこに俺の元へ来た。
ルースはいい子なんだがそそっかしく、一度の案内ではここを踏破できなかったらしい。予想通り迷い、出会ってくれたが──
「あっ! ええと、ヴィンセント殿下でしょうか? アーノルド様のご友人の……お噂はかねがね……」
「あー……フィレンツェのどこの下働き? そういや、一人オトートくんと同じようなチビが居たな! うわっ、おっきくなったねー」
「そうですそうです! 本日入学することとなったのですが、迷ってしまって……」
「へぇ、めでて~じゃん。入学式あっちだよ」
あっ、あれ!?!?!?!?!?
なんかそこまで仲良くないが悪くもない親戚と久々に会ったみたいな反応なんだけど!!
クラスで絡みなかったけど何回かカラオケ行ったよね笑みたいな絡み方やめて????
ヴィンセントがスマートにルースをエスコートする。……のはスチルで見た通りだが、それの以降が早すぎる。本来はもう少し口論とか流れがあって、仕方なくヴィンセントが王子の所作を見せつけるのだ。その流麗な仕草にルースは目を見張り、綺麗な人だなとモノローグが流れる……みたいな感じなのに。
「ルース、普通に笑ってるし……! いやいいけどねまだ序盤だから! でも冒頭の大事なイベント……ウワースチル美しすぎ、この二人マジで似合うな……」
「ねぇ」
「でもびっくりするくらい緊張感がない……」
すれ違いがあるからこそ大団円が際立つんじゃろがい!
ヤキモキして見守ってみるものの、ヴィンセントがルースの成長に時の流れを感じている姿は変わらない。二歳しか変わらんのに何を歳上ヅラしとるんじゃアイツは。いや、わかるけどね。この歳の二歳下って割と赤ちゃんだよな。昔から知ってるなら特に。
「てか前見た時もっとちっさくなかった? 成長期終わった?」
「は、はい! 一年間かかったのですが……」
おい、カウンセリングをするな。問診の方のカウンセリングを、するな。知ってるんだぞお前セリオンの成長期について相談してからちょっとずつデータとか集めてるの。
二人が遠く見えなくなっていくまでそわそわしていれば、後ろから体重がズッシリと掛かった。
「ねぇ。大事な話って何。二人きりで……って」
「今終わった」
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