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『君と待つ光』
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「そういう訳で、ルースがお前のところに来るかもしれない」
「ヘェ~あのおチビちゃんが。にしても学級長、随分構ってんな。なんで?」
「じきに分かる」
何それ、と微かに笑う声と共に、振動が頭に伝わる。ポフポフと髪の一本一本を丁寧に拭われ乾かされ、もうすでにだいぶ夢見心地だ。
ヴィンセントが何かのボトルを開け、何かを人肌程度に温め、俺の顔に塗る。温かくて剣を握る人の指先が頬を撫で、にゅるにゅると鼻筋、唇、額に触れる。
よくわからんが何か顔がツヤツヤになるやつを塗っているらしい。
「化粧品も医療の一環だかんね~。肌荒れを治すのも医者の範疇ってやつよ。その点学級長ってよく見たら肌荒れてるし、髪傷んでるし、良い実験台よ」
「む……ケアは、してるが……」
「フィールドワークが圧倒的に多いからね、追いつかないんでしょ。美容気になるなら絶対しない挙動するんだもん」
「スライムの顔面パック……」
「あーあー聞きたくない! つか、それを肌ケアだと思ってんの烏滸がましすぎ。論拠作ってから言ってくださぁーい」
くそ、いつかアバロンに証明させるからな。俺は無理です。
にゅるにゅるした何かを塗り終われば、何だか肌にじんわり馴染んだような気がする。あまり気にならなくなった。ペタペタと頬を触ってみればもちさら触感である。
延々と車輪の再発明をしているヴィンセントはとうとう化粧品だけではなく美容液の開発にも専念し始め、現在俺はそのテスターになっている。
この世界には美容液という概念はほとんどなく肌の荒れは厚化粧でカバーするやり方がほとんどだったので、肌のダメージを回復する製品は許諾さえ取れれば飛ぶように売れるだろう。
相変わらず、王子という立場がなくても億万長者になってそうな勢いの男である。
「で? そのおチビちゃん……ルースって、お前のお気に入りなわけ? あんな感じの子供好きだっけ、お前」
「俺が稚児趣味みたいに言うじゃないか。口悪いぞ」
「事実そうだろ」
「何が事実なんだ何が」
セリオンはセリオンがセリオンだから愛しているだけである。
ムッと頬を膨らませながらベッドに横になると、ヴィンセントも隣に入ってくる。眠る気はないらしく、ランプの光量を絞って本を持ち込んでいるが。
同じシャンプーの濡れたいい香りがして、風呂上がりを実感する。ベッドに寝転がっていたテディベアを引き寄せて抱きしめた。
「お気に入りというか……まぁ、気にかけている奴の一人だ。元々、類い稀なる才能は感じていた……」
これは事実だ。
ルースは嘘がつけなくて素直で不器用だが、目がとてもいい。
遠くまで見えるとかそういうことではなく、みえないはずのものが見えるのだ。
それはかすかな、自我を持つ前の妖精であったり、力の集まる地脈の流れであったり。
不思議なものを視線で追ってはドジをするという人間であったし、俺の魂を鑑定するものより余程性能が高い目を持つこどもだった。
「おそらくルースは、特別だ。だから、才能を潰して欲しくない……誰にも。才能とは富だからな」
「……そう言われると荷が重いんだけど?」
「だいじょーぶだ。ヴィンセントならやれる。なにしろお前も天才で、特別で、富を持つものなんだからな」
ヴィンセントとルースの相性がいいのはそういう面で、要領のいいヴィンセントを見てルースもその姿、手の抜き方や力の入れる場所を学んでいくのだ。元々ヴィンセントは勤勉な方なので、下手に堕落させるようなこともなく才能を保ったまま育て上げることができるだろう。
これは原作者の確信じゃなくて、ヴィンセントと友人をやってきたアーノルドとしての所感だけど。
「……はぁー! 信頼されてると捉えるべきか、利用されて転がされると捉えるべきか……」
「? よく分からんが、最近の俺はお前を信用してるぞ。信頼してると捉えていいんじゃないか?」
本を読みながら眉間を揉むヴィンセントにぴとりと背中をつけ、そのまま体重をかける。カエルの潰れたような声を上げたあと引き剥がされたが、ランプの光のせいか、心なしか顔が赤いような気がした。
「そうそう、お前が転がしてんじゃなくて、俺が勝手に転がされてんのよ。ほんっと最悪お前。真面目で健気な学級長に戻って?」
「ふむ。最近は真面目に励んでいるようで感心だな。お前のことは信頼しているぞ、ヴィンセント王子殿下」
「うわ、学級長がデレた……!?」
学級長は最初からデレてるだろ。だいたい人をツンデレキャラみたいにいうな。正当な評価は与えるしそもそも不本意にツンツンするなんてことしない。俺はセリオンにはデレデレだしティアにもわりとデレデレだぞ。
広いベッドの中で二人固まって横になる。ヴィンセントはまだ本を読む気なのだろうか。俺はもう眠いのだが。
「なぁ、眠い。寝よ?」
そもそも暗い部屋で小さな灯りで本を読むと目を悪くするし夜更かしは体に良くないのでは? 医者の不養生。
ヴィンセントの手をこしょこしょ弄るのをやめ、大声を出しても叩き起こすだろうと耳元で囁く。
「ッ、……ほんっと、お前!!」
「明日は歓迎会だから、ルースをよろしくな」
「~~あーもうっ!」
寝る! と宣言してヴィンセントが布団に篭る。とりあえず寝るらしくてよかった。
俺もヴィンセントにピタリとくっつき目を閉じる。睡眠魔法をかけられている間くっついていたのが癖になったらしく、人肌が一番いい睡眠導入剤になっちゃったんだよな。
「ヘェ~あのおチビちゃんが。にしても学級長、随分構ってんな。なんで?」
「じきに分かる」
何それ、と微かに笑う声と共に、振動が頭に伝わる。ポフポフと髪の一本一本を丁寧に拭われ乾かされ、もうすでにだいぶ夢見心地だ。
ヴィンセントが何かのボトルを開け、何かを人肌程度に温め、俺の顔に塗る。温かくて剣を握る人の指先が頬を撫で、にゅるにゅると鼻筋、唇、額に触れる。
よくわからんが何か顔がツヤツヤになるやつを塗っているらしい。
「化粧品も医療の一環だかんね~。肌荒れを治すのも医者の範疇ってやつよ。その点学級長ってよく見たら肌荒れてるし、髪傷んでるし、良い実験台よ」
「む……ケアは、してるが……」
「フィールドワークが圧倒的に多いからね、追いつかないんでしょ。美容気になるなら絶対しない挙動するんだもん」
「スライムの顔面パック……」
「あーあー聞きたくない! つか、それを肌ケアだと思ってんの烏滸がましすぎ。論拠作ってから言ってくださぁーい」
くそ、いつかアバロンに証明させるからな。俺は無理です。
にゅるにゅるした何かを塗り終われば、何だか肌にじんわり馴染んだような気がする。あまり気にならなくなった。ペタペタと頬を触ってみればもちさら触感である。
延々と車輪の再発明をしているヴィンセントはとうとう化粧品だけではなく美容液の開発にも専念し始め、現在俺はそのテスターになっている。
この世界には美容液という概念はほとんどなく肌の荒れは厚化粧でカバーするやり方がほとんどだったので、肌のダメージを回復する製品は許諾さえ取れれば飛ぶように売れるだろう。
相変わらず、王子という立場がなくても億万長者になってそうな勢いの男である。
「で? そのおチビちゃん……ルースって、お前のお気に入りなわけ? あんな感じの子供好きだっけ、お前」
「俺が稚児趣味みたいに言うじゃないか。口悪いぞ」
「事実そうだろ」
「何が事実なんだ何が」
セリオンはセリオンがセリオンだから愛しているだけである。
ムッと頬を膨らませながらベッドに横になると、ヴィンセントも隣に入ってくる。眠る気はないらしく、ランプの光量を絞って本を持ち込んでいるが。
同じシャンプーの濡れたいい香りがして、風呂上がりを実感する。ベッドに寝転がっていたテディベアを引き寄せて抱きしめた。
「お気に入りというか……まぁ、気にかけている奴の一人だ。元々、類い稀なる才能は感じていた……」
これは事実だ。
ルースは嘘がつけなくて素直で不器用だが、目がとてもいい。
遠くまで見えるとかそういうことではなく、みえないはずのものが見えるのだ。
それはかすかな、自我を持つ前の妖精であったり、力の集まる地脈の流れであったり。
不思議なものを視線で追ってはドジをするという人間であったし、俺の魂を鑑定するものより余程性能が高い目を持つこどもだった。
「おそらくルースは、特別だ。だから、才能を潰して欲しくない……誰にも。才能とは富だからな」
「……そう言われると荷が重いんだけど?」
「だいじょーぶだ。ヴィンセントならやれる。なにしろお前も天才で、特別で、富を持つものなんだからな」
ヴィンセントとルースの相性がいいのはそういう面で、要領のいいヴィンセントを見てルースもその姿、手の抜き方や力の入れる場所を学んでいくのだ。元々ヴィンセントは勤勉な方なので、下手に堕落させるようなこともなく才能を保ったまま育て上げることができるだろう。
これは原作者の確信じゃなくて、ヴィンセントと友人をやってきたアーノルドとしての所感だけど。
「……はぁー! 信頼されてると捉えるべきか、利用されて転がされると捉えるべきか……」
「? よく分からんが、最近の俺はお前を信用してるぞ。信頼してると捉えていいんじゃないか?」
本を読みながら眉間を揉むヴィンセントにぴとりと背中をつけ、そのまま体重をかける。カエルの潰れたような声を上げたあと引き剥がされたが、ランプの光のせいか、心なしか顔が赤いような気がした。
「そうそう、お前が転がしてんじゃなくて、俺が勝手に転がされてんのよ。ほんっと最悪お前。真面目で健気な学級長に戻って?」
「ふむ。最近は真面目に励んでいるようで感心だな。お前のことは信頼しているぞ、ヴィンセント王子殿下」
「うわ、学級長がデレた……!?」
学級長は最初からデレてるだろ。だいたい人をツンデレキャラみたいにいうな。正当な評価は与えるしそもそも不本意にツンツンするなんてことしない。俺はセリオンにはデレデレだしティアにもわりとデレデレだぞ。
広いベッドの中で二人固まって横になる。ヴィンセントはまだ本を読む気なのだろうか。俺はもう眠いのだが。
「なぁ、眠い。寝よ?」
そもそも暗い部屋で小さな灯りで本を読むと目を悪くするし夜更かしは体に良くないのでは? 医者の不養生。
ヴィンセントの手をこしょこしょ弄るのをやめ、大声を出しても叩き起こすだろうと耳元で囁く。
「ッ、……ほんっと、お前!!」
「明日は歓迎会だから、ルースをよろしくな」
「~~あーもうっ!」
寝る! と宣言してヴィンセントが布団に篭る。とりあえず寝るらしくてよかった。
俺もヴィンセントにピタリとくっつき目を閉じる。睡眠魔法をかけられている間くっついていたのが癖になったらしく、人肌が一番いい睡眠導入剤になっちゃったんだよな。
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