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『君と待つ光』
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「ゴーレム種は基本的に、形自体は多種多様なんだ。知的生命体の使役する機械という認識だからな、材質だって木から肉から石から鉄から諸々ある」
大陸の中でも常に雪に覆われているという北の国では、氷人形なんていうのもあるらしい。一時期は貴族の財を示すものとして、自分の墓を高級な素材のゴーレムに守らせるという時代もあった。
今もその時代の遺跡は各地に眠っており、そこの墓を荒らす者を墓人と呼び子供達の憧れになっている。貧民街でもハンターが主役の物語はよく出たものだ。
悪しき貴族が貧民から奪った財で作ったゴーレムを、同じ貧民の強い誰かが倒す。そうして富を得て永遠に幸せに暮らす……まさに夢物語である。
「そんなゴーレム種を識別する唯一の方法が、ある文字。あらゆる国の言語、魔術で必ずどこかに描かれているEMETHの文字だな」
「どこか? ざっくりしてるね」
ピッタリと横に張り付いたセリオンが、周囲を警戒しながらそう告げる。カンテラの明かりでぼんやりと照らされている遺跡内部は魔物もおらず、息絶えた人間の落とし物らしきものときみの悪いオブジェの並んだ場所だった。
「まぁ、そうだな。でも頭中心に探す事が多い。よな、アバロン」
「フン、膝小僧や腕に真理を刻んだ所で何になる? 永劫動くには頭に真理が存在する必要があるのだ。その点、額に刻む今の状態は健全と言えるがな」
「……らしい。理屈はわからんが、実際頭に近い方が動きも早いし性能が高い。さっきのやつもうなじだっただろ?」
ちなみに頭を中心に探せと言い出したのはアバロンである。しばらく当てどもなく歩いていれば、一つ曲がった先に行き止まりがあった。
というか、行き止まりの前に奈落。落とし穴見たいな。
その辺に落ちていた石を投げ込んで見れば、数秒後に反響した音。だが、一つではない。ふむ。
「人が多いからな、大人しくギミック作動させるか……アバロン、多分そっちの石碑だ」
「考えることすら放棄したか愚物め。吾輩は護衛対象だが?」
「え、何、解きたくないの?」
「そうは言っていない、本当に気が利かないな部長殿は」
理不尽に貶してくるなこいつほんとに。
イラ……としながら、好き勝手に動くアバロンにカデンを同行させる。全方位に防御壁を張れるというので、今は常に張ってもらっている状態だ。とはいえこの辺りにあまり罠なんてないんだが。
「ま、あとは予想通りだと思うが、EMETHの文字からEを消すと……どうなると思う?」
「METH? ……あっ」
「正解だ! あの文字は複雑に組まれている回路のようなもので、アレの指示があるからゴーレムは創造主がいなくなっても使命を果たす事ができる。つまり、その指示を“死”に書き換えれば死ぬ……平たく言うと動かなくなるんだ」
まぁ言語体系が複雑になればなるほど書き換えなきゃいけなくなったり消す場所が変わったり逆に線を増やすべきだったりと複雑化していくので、他国のゴーレムなんかは基本相対したくないのだが。
「今回のゴーレムも、アバロンと来た時、あいつが言語を特定してくれたから無力化出来たんだよ。ゴーレムは弱点が明確な分強いからな、あまりまともに相手するのは推奨しない」
「え、じゃあ……今回は?」
「新人二人いるからな、いつも通り脳筋特攻でどうにかはしない。あのゴーレム早いから、攻撃の予測しながら逃げないと普通に当たるし」
セリオンが少し驚いたような顔をして、黙り込む。優しい弟のことなので、気を使わせてしまったと責任を感じているのだろう。
実際カデンとセリオンがついてきていなければ避けられた危険や罠も存在するので、無理やりにフォローはしないが。
「おい、凡人! 解けたぞ」
「おおー。さすが早いな、どんなギミックだった?」
「フン、単純なものよ。暗号を解き文字盤を正しい形に戻せばいい」
「そりゃまた結構単純だな。まだギミックあるってことか」
「どちらかと言えば、宝の重要性が危ぶまれるものだがな」
言うが早いかガゴ、と遺跡全体が揺れる。小刻みに重低音を鳴らしながらガゴゴゴと奈落に地面が浮かび上がってきた。エレベーター式のギミックである。
「単純って、何。どう言う概念なの」
「そもそもその文字が読めないんですが……!?」
困惑している後輩たちを引き連れて四人地面に乗れば、アバロンがしゃがみ込んで何やら操作をする。
そのまままたゴゴゴゴと石の擦れる重低音を鳴らしながら地面がゆっくりと降下していき、また似たような廊下に出た。
違う点と言えば……死臭がひどいことだろうか。セリオンが思わず口を押さえ、カデンは眉を顰める。こちらは慣れているらしい。頼もしいことである。
「む。鮮度維持の魔法か?」
「みたいだな。ここだけ時間が止まってる……ひどいにおいだ。ここまで辿り着いて死んだ奴は、永遠に身体から解放されることもないってか」
「ふん、神をも愚弄する遺跡だな」
一般的に、体が完全に朽ちることにより人間の魂が輪廻に戻るとされている。
そのため、死体に鮮度を維持する魔法をかけるのは禁忌とされているのだが。
「ふむ……きな臭くなってきたな」
うわ、笑ってるよこいつ。しんじらんねー。
大陸の中でも常に雪に覆われているという北の国では、氷人形なんていうのもあるらしい。一時期は貴族の財を示すものとして、自分の墓を高級な素材のゴーレムに守らせるという時代もあった。
今もその時代の遺跡は各地に眠っており、そこの墓を荒らす者を墓人と呼び子供達の憧れになっている。貧民街でもハンターが主役の物語はよく出たものだ。
悪しき貴族が貧民から奪った財で作ったゴーレムを、同じ貧民の強い誰かが倒す。そうして富を得て永遠に幸せに暮らす……まさに夢物語である。
「そんなゴーレム種を識別する唯一の方法が、ある文字。あらゆる国の言語、魔術で必ずどこかに描かれているEMETHの文字だな」
「どこか? ざっくりしてるね」
ピッタリと横に張り付いたセリオンが、周囲を警戒しながらそう告げる。カンテラの明かりでぼんやりと照らされている遺跡内部は魔物もおらず、息絶えた人間の落とし物らしきものときみの悪いオブジェの並んだ場所だった。
「まぁ、そうだな。でも頭中心に探す事が多い。よな、アバロン」
「フン、膝小僧や腕に真理を刻んだ所で何になる? 永劫動くには頭に真理が存在する必要があるのだ。その点、額に刻む今の状態は健全と言えるがな」
「……らしい。理屈はわからんが、実際頭に近い方が動きも早いし性能が高い。さっきのやつもうなじだっただろ?」
ちなみに頭を中心に探せと言い出したのはアバロンである。しばらく当てどもなく歩いていれば、一つ曲がった先に行き止まりがあった。
というか、行き止まりの前に奈落。落とし穴見たいな。
その辺に落ちていた石を投げ込んで見れば、数秒後に反響した音。だが、一つではない。ふむ。
「人が多いからな、大人しくギミック作動させるか……アバロン、多分そっちの石碑だ」
「考えることすら放棄したか愚物め。吾輩は護衛対象だが?」
「え、何、解きたくないの?」
「そうは言っていない、本当に気が利かないな部長殿は」
理不尽に貶してくるなこいつほんとに。
イラ……としながら、好き勝手に動くアバロンにカデンを同行させる。全方位に防御壁を張れるというので、今は常に張ってもらっている状態だ。とはいえこの辺りにあまり罠なんてないんだが。
「ま、あとは予想通りだと思うが、EMETHの文字からEを消すと……どうなると思う?」
「METH? ……あっ」
「正解だ! あの文字は複雑に組まれている回路のようなもので、アレの指示があるからゴーレムは創造主がいなくなっても使命を果たす事ができる。つまり、その指示を“死”に書き換えれば死ぬ……平たく言うと動かなくなるんだ」
まぁ言語体系が複雑になればなるほど書き換えなきゃいけなくなったり消す場所が変わったり逆に線を増やすべきだったりと複雑化していくので、他国のゴーレムなんかは基本相対したくないのだが。
「今回のゴーレムも、アバロンと来た時、あいつが言語を特定してくれたから無力化出来たんだよ。ゴーレムは弱点が明確な分強いからな、あまりまともに相手するのは推奨しない」
「え、じゃあ……今回は?」
「新人二人いるからな、いつも通り脳筋特攻でどうにかはしない。あのゴーレム早いから、攻撃の予測しながら逃げないと普通に当たるし」
セリオンが少し驚いたような顔をして、黙り込む。優しい弟のことなので、気を使わせてしまったと責任を感じているのだろう。
実際カデンとセリオンがついてきていなければ避けられた危険や罠も存在するので、無理やりにフォローはしないが。
「おい、凡人! 解けたぞ」
「おおー。さすが早いな、どんなギミックだった?」
「フン、単純なものよ。暗号を解き文字盤を正しい形に戻せばいい」
「そりゃまた結構単純だな。まだギミックあるってことか」
「どちらかと言えば、宝の重要性が危ぶまれるものだがな」
言うが早いかガゴ、と遺跡全体が揺れる。小刻みに重低音を鳴らしながらガゴゴゴと奈落に地面が浮かび上がってきた。エレベーター式のギミックである。
「単純って、何。どう言う概念なの」
「そもそもその文字が読めないんですが……!?」
困惑している後輩たちを引き連れて四人地面に乗れば、アバロンがしゃがみ込んで何やら操作をする。
そのまままたゴゴゴゴと石の擦れる重低音を鳴らしながら地面がゆっくりと降下していき、また似たような廊下に出た。
違う点と言えば……死臭がひどいことだろうか。セリオンが思わず口を押さえ、カデンは眉を顰める。こちらは慣れているらしい。頼もしいことである。
「む。鮮度維持の魔法か?」
「みたいだな。ここだけ時間が止まってる……ひどいにおいだ。ここまで辿り着いて死んだ奴は、永遠に身体から解放されることもないってか」
「ふん、神をも愚弄する遺跡だな」
一般的に、体が完全に朽ちることにより人間の魂が輪廻に戻るとされている。
そのため、死体に鮮度を維持する魔法をかけるのは禁忌とされているのだが。
「ふむ……きな臭くなってきたな」
うわ、笑ってるよこいつ。しんじらんねー。
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