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『君と待つ光』
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ダメじゃない。もしかしたら単体のアレルギーだったかもしれないだろ。
実際油断して食べた俺の胃は一旦保ってるわけだし……
「それで言うなら、部長殿の胃を鵜呑みにする方が危険だろうが。誰もが貴様ほど毒耐性があるわけではないのだぞ」
「しっ、失礼な……誰のせいだと思ってるんだ」
色々と持ち帰ってきた俺たちを見て、アバロンが呆れ果てた。なんなんだこいつは。どこかに行ったと思えばふらっと帰ってきて。
ただ、確かに毒耐性が高いのは本当だ。正直、微弱なもの──腹を壊す程度──の毒はそもそも感知することすらできない。強いもので慣らされすぎたぜ。
「でも、そうなったら誰が犠牲なるん? 早いとこ食えるもん見つけんとあかんやろ」
「魔物……動物も捕まえてみたんですが、どうも少女趣味というか、食べれるような生き物かどうかも定かではないというか」
どうやら動物たちを追いかけていたユミルが、しめたらしい生き物をぶらんと持ち上げる。可愛らしいわたあめのような生き物ならまだしも、概念的たぬきのような丸い何か、その他可愛らしくデフォルメされている、魔物のようなみたことのない生き物たち……。
色合い自体はショッキングピンクの果実を超えるものはなかったが、目が痛くなるようだ。たぶん毒。
「俺が生き残るだけなら簡単なんだがな……エイモン、お前毒耐性は?」
「なっ、ないですよぉ!? えっまって犠牲にされかけてます!?」
「俺もできるだけ後輩は犠牲にしたくないんだがな……」
レイは今日のうちに拠点を充実させておいてくれたらしい。夜になって戻ってきた俺たちを迎えた焚き火の光は安心感がある。拠点内を見れば、ひとまず寝る場所の確保と、適当な植物で編んだ収納、ついでにテントの補強もされていた。
雨が降ったら良くないからと屋根のようなものもついているくらいだ。
うーん、充実。東洋の知識なのか、屋根にはどうやって作ったのか蚊帳のようなものが吊り下げられている。
「ま、とりあえず食べてみるか。ほらアバロン、一旦食え」
「なに!? おい貴様、何のつもりだ!」
「申し訳ありませんが、礎になっていただけると。尊い犠牲というものですね」
アバロンには超回復があるが、毒耐性があるわけではない。数えきれない人体実験の果てに得たのは人間のまま死ねない体。
そのため力も強くない。成長したユミルに後ろから押さえつけられれば抵抗しても無意味だ。ユミルは飛行大会に注力していることもあり、意外と力が強い。
「えっ!? ちょっ、良いんですかアバロン様が!?」
「良いんだよ、こいつこんなこと言ってるけどすぐ回復して効率いいし」
「効率主義の末路やな」
ここにいる面子はエイモンと、遠くの方で吐いているポチ以外多かれ少なかれアバロンには相当な迷惑をかけられている。ジタジタと暴れているアバロンを押さえつけながら口を開かせ果実を押し付ける──
「くっ、この!! わかったわかった! 判別装置を貸してやろう!! この、旧時代的な愚鈍どもめ……!!」
ぱちぱちと弾ける焚き火を掻き消すように声を張り上げる。相当嫌だったのだろう。てことはこの、ベタベタのショッキングピンクは相当ヤバいやつだったんだろうな……。
俺は今のところ平気だが。
「……やっぱりな。お前のことだから、ひとりだけ安全な判別装置でも作ってると思ったんだ」
「フン、貴様らのような愚物にこの吾輩が協力してやる謂れグァアアわかった貸すからその毒物を近づけるな!!」
呆れたやつである。普段ならそれでもいいのだろうが、これは協力式の演習だ。しかも自分一人で生き抜けるわけじゃないんだから。
まぁ、アバロンの様子で識別しても良かったが。アバロンの超回復は基本的に身体に耐性をつけさせない。一時的に時間を止めたり戻したりしているようなものをイメージしてほしい。なかったことへの耐性はつけられないだろう?
「くっ……部長殿、そろそろ貴様はその横暴を見直すべきだな。実に人間的で好ましくない」
「お前に好まれたいとは思ったことねーよ」
のそのそとテントの中に入ったアバロンが、何かを持ってくる。小型のよくわからん機械だ。箱みたいなものにモニターがついていて、ごちゃごちゃとした機構にハンダゴテみたいな形の何かがくっついていた。
「ど、どこからこの機材持ってきたんや……」
「それこそ錬金、錬成だ。漂着物の金属から必要なものを等価交換していったんだ。いくら不思議空間とはいえ、そのどれもが価値の測れない不思議植物ってわけじゃない。川を漁れば鉄があるし植生も作られてる」
「部長殿の慧眼には恐れ入る。その慧眼を人生において利用できるような能がないのだから愚かでたまらんがな」
「お前は人を貶さないと喋れないのか?」
アバロンの作るものの傾向的に、このハンダゴテを押しつければそのまま判定されるのだろう。電源とか煩わしいものは基本的にいらない。全自動でついてくれる。面倒くさがり屋なので。
ショッキングピンクの塊に、そっと押し付けた。
「“劇毒”だそうですね」
「あのテストとやら何だったんですかぁ!?」
「…………そういうこともある」
俺って劇毒効かないんだ……
実際油断して食べた俺の胃は一旦保ってるわけだし……
「それで言うなら、部長殿の胃を鵜呑みにする方が危険だろうが。誰もが貴様ほど毒耐性があるわけではないのだぞ」
「しっ、失礼な……誰のせいだと思ってるんだ」
色々と持ち帰ってきた俺たちを見て、アバロンが呆れ果てた。なんなんだこいつは。どこかに行ったと思えばふらっと帰ってきて。
ただ、確かに毒耐性が高いのは本当だ。正直、微弱なもの──腹を壊す程度──の毒はそもそも感知することすらできない。強いもので慣らされすぎたぜ。
「でも、そうなったら誰が犠牲なるん? 早いとこ食えるもん見つけんとあかんやろ」
「魔物……動物も捕まえてみたんですが、どうも少女趣味というか、食べれるような生き物かどうかも定かではないというか」
どうやら動物たちを追いかけていたユミルが、しめたらしい生き物をぶらんと持ち上げる。可愛らしいわたあめのような生き物ならまだしも、概念的たぬきのような丸い何か、その他可愛らしくデフォルメされている、魔物のようなみたことのない生き物たち……。
色合い自体はショッキングピンクの果実を超えるものはなかったが、目が痛くなるようだ。たぶん毒。
「俺が生き残るだけなら簡単なんだがな……エイモン、お前毒耐性は?」
「なっ、ないですよぉ!? えっまって犠牲にされかけてます!?」
「俺もできるだけ後輩は犠牲にしたくないんだがな……」
レイは今日のうちに拠点を充実させておいてくれたらしい。夜になって戻ってきた俺たちを迎えた焚き火の光は安心感がある。拠点内を見れば、ひとまず寝る場所の確保と、適当な植物で編んだ収納、ついでにテントの補強もされていた。
雨が降ったら良くないからと屋根のようなものもついているくらいだ。
うーん、充実。東洋の知識なのか、屋根にはどうやって作ったのか蚊帳のようなものが吊り下げられている。
「ま、とりあえず食べてみるか。ほらアバロン、一旦食え」
「なに!? おい貴様、何のつもりだ!」
「申し訳ありませんが、礎になっていただけると。尊い犠牲というものですね」
アバロンには超回復があるが、毒耐性があるわけではない。数えきれない人体実験の果てに得たのは人間のまま死ねない体。
そのため力も強くない。成長したユミルに後ろから押さえつけられれば抵抗しても無意味だ。ユミルは飛行大会に注力していることもあり、意外と力が強い。
「えっ!? ちょっ、良いんですかアバロン様が!?」
「良いんだよ、こいつこんなこと言ってるけどすぐ回復して効率いいし」
「効率主義の末路やな」
ここにいる面子はエイモンと、遠くの方で吐いているポチ以外多かれ少なかれアバロンには相当な迷惑をかけられている。ジタジタと暴れているアバロンを押さえつけながら口を開かせ果実を押し付ける──
「くっ、この!! わかったわかった! 判別装置を貸してやろう!! この、旧時代的な愚鈍どもめ……!!」
ぱちぱちと弾ける焚き火を掻き消すように声を張り上げる。相当嫌だったのだろう。てことはこの、ベタベタのショッキングピンクは相当ヤバいやつだったんだろうな……。
俺は今のところ平気だが。
「……やっぱりな。お前のことだから、ひとりだけ安全な判別装置でも作ってると思ったんだ」
「フン、貴様らのような愚物にこの吾輩が協力してやる謂れグァアアわかった貸すからその毒物を近づけるな!!」
呆れたやつである。普段ならそれでもいいのだろうが、これは協力式の演習だ。しかも自分一人で生き抜けるわけじゃないんだから。
まぁ、アバロンの様子で識別しても良かったが。アバロンの超回復は基本的に身体に耐性をつけさせない。一時的に時間を止めたり戻したりしているようなものをイメージしてほしい。なかったことへの耐性はつけられないだろう?
「くっ……部長殿、そろそろ貴様はその横暴を見直すべきだな。実に人間的で好ましくない」
「お前に好まれたいとは思ったことねーよ」
のそのそとテントの中に入ったアバロンが、何かを持ってくる。小型のよくわからん機械だ。箱みたいなものにモニターがついていて、ごちゃごちゃとした機構にハンダゴテみたいな形の何かがくっついていた。
「ど、どこからこの機材持ってきたんや……」
「それこそ錬金、錬成だ。漂着物の金属から必要なものを等価交換していったんだ。いくら不思議空間とはいえ、そのどれもが価値の測れない不思議植物ってわけじゃない。川を漁れば鉄があるし植生も作られてる」
「部長殿の慧眼には恐れ入る。その慧眼を人生において利用できるような能がないのだから愚かでたまらんがな」
「お前は人を貶さないと喋れないのか?」
アバロンの作るものの傾向的に、このハンダゴテを押しつければそのまま判定されるのだろう。電源とか煩わしいものは基本的にいらない。全自動でついてくれる。面倒くさがり屋なので。
ショッキングピンクの塊に、そっと押し付けた。
「“劇毒”だそうですね」
「あのテストとやら何だったんですかぁ!?」
「…………そういうこともある」
俺って劇毒効かないんだ……
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